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『ルポ 人は科学が苦手』 [☆☆]

・私たちが科学的な知識に基づいて判断することなんてほとんどありません。人は、自分で思っているほど理性的に物事を考えているわけではないんです。何かを決める時に科学的な知識に頼ることは少なく、仲間の意見や自分の価値観が重要な決め手になっているんです。

・地球温暖化を認める人がみんな、二酸化炭素による温室効果の仕組みを理解しているわけではないでしょう。ざっくりといえば、「信頼できる国際組織の結論だから」あるいは「頼れる、あの人が言っているから」といった理由で人は判断しているように思えます。科学的な知識よりも、周りの人の意見や自分の価値観に左右されます。

・私たちの脳は、現代社会の問題を解決するようにデザインされているのではなく、狩猟採集生活をしていた頃の問題を解決するようにデザインされているのだ。現代を生きる私たちに、石器時代の心が宿っている。

・少人数の集団で進化してきた人類の脳は、数百万人を超える集団をまとめる民主主義の政治にまだ適応しきれていないのです。

・米国で進化論を支持する人は国民全体の約2割に過ぎない。

・民主主義は、国に政策決定を選挙という仕組みを通して、国民にアウトソーシングしているともいえる。発注を受けた国民が十分な知識や判断力を持つことが、民主主義に欠かせない。

・「赤(社会主義)の恐怖」から「緑(環境保護)の恐怖」へ。

・1991年の旧ソ連の崩壊により、保守系メディアやシンクタンクがそれまでの「赤の恐怖」の代わりに、「緑の恐怖」を主張するようになった。それによって、一時的な「恐怖」の空白を埋めた。

・「赤い根を持つ緑の木(green tree with red root)」。環境保護のための規制は、背景に社会主義的な考え方があると攻撃したのだ。こうして環境保護が政治的な問題になっていく。

・「デモ行進をすれば物事がうまく進むのか」というと、そう単純でもない。自分たちの思いを主張すればするほど、相手の態度がかたくなになることもある。

・保守的な人たちは郊外の広い家を好み、リベラルな人たちは狭くても都会好きという傾向がある。そんな住み分けの結果、ご近所は同じ考えの人ばかりということになり始めている。

・相談が寄せられるのは、保守的な地域に住むリベラルな人が、創造論を教えられることに反発するからだ。考えの違う人たちがまだら模様に住む地域が減れば、相談も減る。

・私たちの脳に、狩猟採集をしていた石器時代の心が宿り、今も「部族」を大事にしているのだろうか。

・自分の考えと対立する話を聞いた時に、考えを変えるのではなくムキになって反論してさらに自分の思いを強くする。

・米国で科学者がコミュニケーションに消極的になった背景を、歴史をさかのぼって見ると、第二次世界大戦後、政府が科学研究への支援を大幅に増やしたことに行き着く。科学研究はかつて私財をつぎ込んだり、資産家の支援を受けたりしながら営まれてきた。人々に科学の魅力をアピールし、資金を得る研究者も多かった。

・悲観的な考えで何かをしようというのは、リベラルな人たちの発想だ。そんなメッセージは保守的な人々の心には響かない。

・リベラルな人たちは現状に飽き足らずに高い理想を求め、「このままではいけない」という、ともすればマイナスな感情をバネにする傾向がある。一方で、保守派の人たちは将来を楽観することで前向きに物事に取り組むとされる。

・人の話を聞く時には、自分の考え方をすすんで変えるような姿勢で聞かなければならない。そうでなければ、本当の意味で「聞く」ということにならない。



ルポ 人は科学が苦手 アメリカ「科学不信」の現場から (光文社新書)

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  • 出版社/メーカー: 光文社
  • 発売日: 2019/05/21
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