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『オリジン』 [☆☆]

・愚かで、不満ばかりで、何かのために戦ったこともなく、誰かが勝ち取ってくれた権利や自由を節操もなく使い散らす者たちだ。

・美術館の空気は世界共通だ。フィルターであらゆる微粒子と酸化性物質を丁寧に除去したのち、イオン水で潤いを与えて湿度45パーセントに保つ。

・ベートーヴェンに分け前をあげたいところだ。骨伝導技術のもともとの発案者は、この18世紀の作曲家だと言ってかまわない。

・芸術の目的のひとつは対話の促進だ。

・潮の動きが月の満ち欠けによって起こることがわかると、ポセイドンはもはや必要ではなくなり、無知な時代のばかげた創作として葬り去られました。すべての神々が同じ運命をたどりました。人類の進化する知性にとって不要な存在となり、ひとり、またひとりと死んでいったのです。

・いまはただ、どういう形であれ、道筋を示してもらえるのはありがたかった。

・人間の頭は「無限」という概念をうまく処理できないから、現在では大半の科学者が、ビッグバン後の──Tがゼロより大きい時点の──宇宙しか論じていない。それなら数学的な思考が謎めいたものにならずにすむからだ。

・暗殺請け負いは数十億ドル規模の市場であり、ダークウェブが保証する匿名取引やビットコインでの追跡不可能な決済をおもな追い風として、日々拡大している。



・不品行に手ぬるい対応をするのは、不品行を増長させる結果にしかならない。

・赦しが危険を招く場合もあります。世界の悪を赦すのは、悪が栄え、広まるのを認めるのと同じです。

・「無神論者」という言葉ですが、そもそも、そんな言葉が存在すること自体がおかしい。自分を「非占星術師」とか「非錬金術師」と名乗る必要がないのと同じです。

・無知を見過ごすのは無知を促すのと同じです。

・生きているうちに自分本位だった者ほど、死を恐れるものだ。

・20世紀までに、フランス、ドイツ、ロシア、オーストリア、ポーランドなど、50以上の国々が王冠を捨てた。イギリスでさえ、現女王が亡くなったら国民投票で君主制の存続を問おうとする動きがあるほどだ。

・&という記号はロゴグラムで、まさしくある単語を形で表している。もとになっているのはラテン語のetだ。アンパサンドの風変わりな&という形は、EとTの文字を組み合わせて作られた。

・銃に不慣れな人間が厄介なのは、はずみで発砲してしまう危険があることだ。

・「宰輔」とは、指導者が不適格か不在の場合に、組織を指揮する立場に任ぜられた人物を指す。

・セキュリティの面でも、処理速度の遅いプロセッサーが使われていると、力ずくでシステムをハッキングしようにも果てしなく時間がかかります。

・ダーウィンは生物が絶えず進化してきたことを立証しましたが、その過程がそもそもどうやって始まったのかは解明できませんでした。

・エントロピーとは、「物はばらばらになる」ということのしゃれた言い方に過ぎません。科学用語では、「秩序あるシステムは必ず崩壊する」と言います。

・理論的な枠組みを一変させる発想の多くがそうであるように──思いのほか単純だった。

・世界はただひとつの指令に従って動く、というものだった。目標はひとつ。エネルギーの拡散だ。

・竜巻の渦、細かく起伏した川床、雪の結晶。これらはみな、「散逸構造」の例です──すなわち、エネルギーをより効率的に分散させる構造になるために、自ら整然と並んだ分子の集まりです。

・エネルギーをよりよく分散させるために、物質が自ら秩序を作り出すわけです。自然は──無秩序を促すために──秩序の小さなポケットを作ります。そうしたポケットはシステムの混沌を高める構造を具え、それによってエントロピーを増大させるのです。

・宗教は進化にとって有利です。宗教を重んじる社会は無宗教の社会よりうまく協力するので、繁栄しやすい。

・神を崇拝するのは原油の採掘のようなものです。賢明な人たちの多くは、それが先の見えない行為だとわかっていますが、これまでの投資が大きすぎて、いまさらやめられないのです。

・画面に4つの文字が表示される──PTSD。「心的外傷後ストレス障害?」「ちがいます。円周率の6ケタまで(パイ・トゥ・シックス・ディジッツ)です」

・過去を思い出せぬ者は、過去を繰り返す運命にある。

・世界には「シェイクスピアの庭」が33か所存在する。それらの植物公園では、ウィリアム・シェイクスピアの作品に出てくる植物ばかりが育てられている。

・テレビの視聴率を稼ぐには、人が死ぬのを見せるのが一番だ。

・マシンというものは、求められたことを文字通り忠実に実行する。いつ、いかなるときも。決して失敗することなく。大事なのは命令の仕方を知ることだ。


ダン・ブラウン『オリジン』上下巻 セット

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  • 出版社/メーカー: KADOKAWA
  • 発売日: 2018/12/27
  • メディア: 単行本



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『アンチ整理術』 [☆☆]

・ときどきアドバイスしていたことが一つだけある。部屋が散らかっていないか、と尋ねてみると、だいたいは散らかっている、と答えるから、まず部屋を片づけなさい、指示する。これが、結構な確率で効果を出す。

・とにかく、何かしてみること。実行することである。そうすることで、周囲が変わる。環境が変わり、視点が動く。何かをすれば、何かが変わるのだ。

・嫌な気持ちを「やりたい」気持ちに切り換えるのは、かなり難しい。それよりも、「嫌だ」と思いながら作業を始める方が、ずっと簡単なのだ。

・仕事のモチベーションは、給料やバイト料がもらえること、勉強のモチベーションは、将来有利な立場に立てる可能性が高いことである。つまり、未来の得のために、現在の損を差し出せるか、その交換ができるか、という話に集約されるだろう。

・子供が夢中になっているものに水を差さない。ただ、危険があってはいけない、というアドバイスだけにする、ということである。

・ジョギングやウォーキングが健康に良いとされているように、適度に頭を動かすことは、非常に大事だと思う。したがって、子供に計算をさせる教育は、今後も続けられるはずである。

・インプットは、頭に栄養補給するような行為である。いうならば、食べることと同じだ。学習が好きな人は、食べるのが好きな人と似ている。

・学習は、栄養補給であるから、学習するほど頭が太る。だから、適度に計算や発想でアウトプットしないと、頭の肥満になりやすい。頭が肥満すると、頭の働きが鈍くなる。

・いつも頭を動かしていれば、回転数が歳とともに低下する傾向があるにしても、止まるようなことはない。

・学習することも、一時的に頭を使うが、すぐに慣れてしまう。授業を聴いているうちに眠くなった経験があるだろう。これは、頭が止まりたがっている証拠だ。インプットするものに新しさが欠けていると、そうなる。

・せっかく古いしがらみを切り、都会に出てきた人たちが、あっという間にネット社会の「村」に取り込まれた。どこにいても、いつでも連絡できる、という利点が、しがらみや絆という人間関係を復活させたのかもしれない。

・人権が重んじられ、自分勝手であっても、他者に迷惑をかけないかぎり許容しよう、という社会が構築された。これが実現したのは、大勢が力を合わせるような事態がなくなった、すなわち封建的な権力機構が衰えたからである。その背景には、エネルギィを用いる機械化があった。

・人間の精神は、自身を庇うようにできている。基本的に自分贔屓だ。したがって、主観的な観測をすれば、自分は正しい、相手が間違っている、という判断に自然になる。

・感情的な人は、予測ができないため、信頼を得ることができない。何をするかわからない人間、というレッテルを貼られる。

・社会の人間関係は、人格の本質でぶつかり合うほど深いものではない。見かけだけのレベルなのだから、ちょっと装うだけで、ずいぶん社会で生きやすくなるだろう。

・日本人は、議論は自分の願望を通すためのものだと認識している。

・何を焦って断捨離などしているのだろう? 持っているものが、価値のないものばかりだから、自分で始末しないといけない、と後ろめたいのだろうか。

・周囲の誰かを巻き込んで、みんなで運動を展開しよう、と考えると、この「みんな」という部分が自分の思い通りにならない分、目標が少し遠くなる。



アンチ整理術

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  • 作者: 森 博嗣
  • 出版社/メーカー: 日本実業出版社
  • 発売日: 2019/11/08
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)



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  • 出版社/メーカー: 日本実業出版社
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  • メディア: Kindle版



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『犯罪「事前」捜査 知られざる米国警察当局の技術』 [☆☆]

・長期勾留や自白の強要は捜査ではなく拷問。

・SNS上において、人間はもはや人工知能の投稿と人間の投稿の区別をつけられないし、人工知能に騙されて情報を奪われてしまう存在なのだ。

・2016年、人々がシリアから逃亡し、難民として西側に移動し始めるとISISのメディアは一斉に彼らを非難し始めた。人々がいなくなることは彼らにとって脅威だった。

・1898年に起きた米西戦争には二つの新聞が大きく関係していた。当時、ニューヨーク・ジャーナル紙とニューヨーク・ワールド氏は部数競争をしており、この二紙がこぞって扇情的かつ根拠の薄い記事を掲載して戦争ムードを盛り上げた。

・アカウントに煽られてテロを実行するのは現地の人間なのだ。実行犯を捕まえても、肝心の裏で糸を引いていた人物は野放しだから、何度でも同じことが起きる。

・現在の株式取引のほとんどは人工知能に置き換わりつつある。知らない間に経済の根幹は人工知能に置き換えられているのだ。

・「それらのコンテンツを閲覧した、または閲覧を試みたユーザー」の逮捕も積極的に行なわれる。なぜなら子供の性的な写真がブラウザに表示されるたびに、あるいは動画が再生されるたびに、そこに映っている子供は一回一回「虐待を受けた」と見なされるからだ。

・インターネット空間のほとんどはディープウェブで占められており、サーフェスウェブの割合は全体の1%未満だと言われている。

・Torネットワークでは、ユーザーの端末から訪問先のウェブサイトまでの経路に複数の中継点が挟まる。この中継点は世界中に存在しており、どこを経由するのかは毎回ランダムに選ばれる。

・昔は不審な相手を絞り込んで尾行や盗聴を行なっていたが、今は幅広い対象を監視、データベース化し怪しい相手を絞り込む。先に監視ありきなのだ。

・変化しているのは法執行機関なのではなく社会全体であって、それに対応するために法執行機関も変化していると考えるべきなのだろう。

・うまくバランスをとるためには市民側からのチェックが必須だが、そこに他国からのアンバランシング攻撃が関わっている可能性もある。



犯罪「事前」捜査 知られざる米国警察当局の技術 (角川新書)

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  • 出版社/メーカー: KADOKAWA
  • 発売日: 2017/08/10
  • メディア: 新書



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