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『違和感の正体』 [☆☆]

・思想家とは、時代を診る医者である。

・事件事故についてほとんど知識もないままに、善悪の判断を下し思いつきを大層な「意見」だと勘違いする。

・すべての貴族道徳は自己自身に対する勝ち誇れる肯定から生まれでるのに反し、奴隷道徳は初めからして外のもの・他のもの・自己ならぬものに対して否と言う。

・社会が安定しているときには、多様な意見は尊重されるだろう。だが非常事態の場合はどうだろうか。

・ヘイトスピーチの批判対象が在日外国人であれば同情の対象となり、安倍氏に対しては許可される根拠は、いったい何処にあるのか。

・人はときに自らの苛立ちや寂しさを行的なものにぶつけてしまうことがあります。家庭内にぶつければ家庭内暴力であり、公的なものにぶつければ、それは金銭と尊敬を獲得し、知識人にすらなれるでしょう。

・自分の怒りや苛立ちをどうすることもできない人間に対して、叱り飛ばし否定する知識人は、実はPTAのおばちゃんよろしく、説教=啓蒙しているに過ぎません。そして啓蒙主義は、絶対に人の心には届かない。

・ニヒリズムとは、ある価値観が否定され、その虚偽を暴くこと自体が目的になる、つまり「手段が目的になる」ことにあります。

・始末に悪いのは、この否定・批判が真面目な正義感に裏打ちされていることだ。自らの正義に疑問を持たない人を、啓蒙することは極めて難しい。

・「不確実」な未来に対して、人はその時の社会的雰囲気から、未来を多様な選択肢に溢れた明るい時代と考えることも、その逆に、一つの所属を持つことすらできず流動する暗い不安の時代とも考えることができるのです。

・敗戦の日から遡ることわずか35年で、時代は明治になってしまう。

・空虚な心を、出来合いのイデオロギーや道徳観で埋め合わせ、酩酊している人間を啄木は嫌いました。

・僕にとっては、歌を作る日は不幸な日だ、刹那々々の偽らざる自己を見つけて満足する外に満足のない、全く有耶無耶に暮らした日だ……正直に言えば、歌なんか作らなくてもよいような人になりたい。

・鎖国は「縮小」の象徴であり、満州事変は「膨張」を意味します。過度の膨張と縮小に共通するのは、他者への感覚がないということです。

・敗戦という国民全体を襲った未曾有の大事件にかき消され、南海道大地震は完全に忘れられてしまった。

・他者との試合に百対0で勝利しようとしてる。あるいは完敗しても、それを美しい敗北だと陶酔している。だが、それは偽善だ。

・会社であれ、外交であれ、私たちはふつう51対49で勝利すれば良いのであって、「完全な正解」などありえません。逆に言えば、何としても2点差で勝利を目指さねばならない。

・私たちが正しいことを言っているのに、なぜ異論を唱えるのだ。こういう批判こそ最も恐ろしい。なぜなら自分が無謬であるという意識は、戦争時代と何も変わらないからです。

・言葉とは本来、時代の激流に逆らい耐えるための道具であり、積極的に参加しないことに意義がある。私たちは積極的な行動に出るとき、言葉を放り出すか、スローガンとして扇情的に利用するかのいずれかになるからだ。




違和感の正体(新潮新書)

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