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『対話の技法』 [☆☆]

・「あなたの言ったことは全部理解するし、全部そのままオッケーです」という場合には、相手と私が一心同体になってしまって、二人が存在する必要がなくなってしまいます。

・優れた問い手が的確な問いを発し、問いと答えをつなげながら一つの議論にしていく能力こそ、問答の遂行に必要です。

・一生を対話による哲学に捧げたソクラテスは、人々の誤解と憎しみによって最後には死刑になってしまいました。

・場を共有する人の間で交わされた言葉は、たいていの場合どういう意図があるか、どんな背景があるかなどが暗黙の了解となっていますが、書かれた文章だけを見ても、そういった前提が共有されないことが多いのです。

・思考は、言葉を自分の内に向けて発する二次的な対話なのです。

・はじめから合意など目指さないと開き直ってしまっては、対話は始まりません。つまり、目標地点のない対話は、たんなる会話やおしゃべりになりかねません。

・言葉が貧困になると感情をコントロールできなくなる。語彙やニュアンスが貧しいと、自然と語気が強くなります。つまり、自分の言いたいことを丁寧に発信できないと、言葉以外の部分で相手に圧力をかけざるを得なくなります。

・言葉を豊かに持っていない人は、語る本人が本当は何を考えているかを明瞭に把握できない、それを表現できないという事態に陥ります。

・ハラスメントは受け手との関係で起こるものなので、仮に加害者が無神経で意図せずに相手を傷つけたとしても、少なくとも過失傷害にあたります。意図を伴っている場合はいわば障害や殺人未遂でしょう。

・人間が機械と言葉を交わすこと、ヴァーチャルなアイドルに恋をすること、あるいはペットの亀に話しかけることがシュールだと感じるとしたら、実は人間同士が言葉をやりとりして理解したつもりになっている姿もよほどシュールなのかもしれません。

・普段は意識さえしなかった別の見方や理論に出会うことで、自分が変わることが実感されます。それは、知識や素養が増えたという程度ではなく、自分のあり方や存在そのものが根底から揺るがされて変容する体験です。対話の醍醐味はそこにあります。

・私たちは対話の相手を求めます。それは、一緒に何かに向かっていく相手、いわば共同探究者を求めているからです。



対話の技法

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