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『無理ゲー社会』 [☆☆]

・誰もが「自分らしく」生きる社会では、社会のつながりが弱くなり、わたしたちは「ばらばら」になっていくのだ。

・この法則がよくわかるのが軍隊の編成で、最大1500人の大隊(トライブ/民族集団)を60~250人の中隊(メガバンド/共同体)、30~60人の小隊(バンド/野営集団)、8~12人の分隊(ファミリー/家族)に分け、生死を共にする分隊のメンバーは「義兄弟」にも似た強いつながりをつくる。

・メリットを(I+E=M)と明快に定義している。Iは知能(Intelligence)、Eは努力(Effort)で、メリット(M)は「知能に努力を加えたもの」なのだ。

・知能の生得的なちがいを教育が拡大させるのだから、社会は「知能」によって分断されるほかない。

・メリトクラシーは貴族政(アリストクラシー)より公平だが、だからこそより不平等で残酷だとヤングは考えた。階級社会では、自分が成功できない理由を社会制度の責任にできる。だがメリトクラシーでは、すべてのひとに公平に機会が開かれているのだから、「自分が本当に劣等であるという理由で、自分の地位が低いのだと認めなくてはならない」のだ。

・先進国は教育に莫大な予算を投じ、さらに知能指数も上がっている。不吉なのは、それにもかかわらず、「初歩的な事務作業さえできない大人がたくさんいる」という調査結果が相次いでいることだ。

・知能だけでなく努力にも遺伝の影響がある。遺伝率は「やる気」が57%、「集中力」が44%で、努力できるかどうかのおよそ半分は遺伝で決まる。

・「大学無償化」はリベラルに人気のある政策だが、それは非大卒の納税者から取り立てた税金を、大卒の子どもたちの学費に充てることだ。

・不満だらけのエリート・ワナビーズ elite-wannabes(エリートなりたがり)

・富裕層への課税を経済学的に正当化できるのは、「お金の限界効用は逓減する」からだ。貧困層にとって100万円は大金だが、資産20兆円のジェフ・ベゾスにとっては増えようが減ろうが気づきもしないだろう。

・代表的なリバタリアン(新自由主義)の経済学者であるミルトン・フリードマンは、政府の介入をことごとく否定したが、ほぼ唯一の例外が「負の所得税」だ。この提案では、税金はかからないが給付も受け取れない「基準所得」を年収300万円とし、負の所得税を50%とすると、年収200万円だった人はマイナス100万円の半分、50万円の給付を受ける。所得がゼロだった人は、負の課税所得が300万円になるので、その半分の150万円が支給される。

・現代美術でもっとも人気のあるバンクシーは、商業主義を批判しながら、その作品はとてつもない値段で取引されている。

・日本では一部でマルクスや『資本論』の再評価が熱心に行なわれているが、100年も前の思想家が考えたことが現在の高度化・グローバル化した知識社会/資本主義経済にそのままあてはまるわけがない。

・リベラリズム(自由主義)が必然的にデモクラシー(民主政)と結びつくわけではない。リベラル化の本質は「自分らしく生きたい」なのだから、より効率的にその夢を実現する制度がメカニカル・デザインできれば(AIによる統治など)、ひとびとがデモクラシーを捨て去る日がきても不思議はない。

・経頭蓋直流電気刺激法(tDCS)で脳を人工的にフロー状態にすると、通常であれば正答率は5%に満たないテストで被験者の40%が問題を解くことに成功した。脳刺激療法で学習や記憶保持にかかわる神経回路を刺激することで、記憶能力を30%増強できるとの研究もある。



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