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『小川洋子のつくり方』 [☆☆]

・たいていの人間同士、まあ家族でもなんでも、うまくいかなくなる原因は、言わなくてもいいことを言ってしまったっていう場合が多いと思うんです。

・登場する人形師が、「作り手は人形に魂子を込めると言われるけど、そうではない」と言うんですね。「魂を込めるのは享受する側であり、自分たちは空っぽの人形しか渡せなし。込めようとしても人形が拒む」と。

・子供の頃、よく払い下げの電車やバスが空き地にあったんですよ。そういうのを見ると、なにか動物の死体よりも、もっと無残な感じがしました。

・『アンネの日記』が単なる少女の日記ではなく、文学となっている点というのは、まずキティという架空の存在に語っているところです。

・いい小説を読むと、自分の遺伝子の中に残っている、言葉を話す以前の、進化の分かれ道に立つ以前の人間の記憶が呼び覚まされるんじゃないか。言葉を持っていなかった自分に戻れる。それを人間は「感動」と呼ぶんじゃないか。

・ダンテ自身だって自分の書いたものが後々こんな場所、人間をガス室で殺すような場所で暗唱されて、そして彼らに力を与えているというようなことを、絶対に考えなかったはずなんですね。思いつきもしなければ、想像もできなかったはずなんです。ただ書きたいことを書いた。そこから何か意味を読み取るとしたら、それは読者なんです。

・最後まで人間らしく生きていこうという風に決めている。じたばたしない、愚痴をこぼさない、心平穏に他人のために役立って死んでいく。

・生きるとは、自分の物語をつくること。

・無名の人間たちは、独自のルールに沿って生きている、むしろ独自のルールを作ることで自分の存在意義を定義しているかのようだ。

・誰も見たことのないスポーツさえ、ルールを把握すればそこに存在できる。



小川洋子のつくり方

小川洋子のつくり方

  • 出版社/メーカー: 田畑書店
  • 発売日: 2021/08/06
  • メディア: 単行本



タグ:小川洋子
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『傘のさし方がわからない』 [☆☆]

・車椅子に乗っている母と、知的障害のある弟がいるわが家は、他の家族より「選択肢の少ない生活」をしてきたように思う。行けるお店も、通える学校も、着られる服も、選択肢が少ない。

・フレンドリーに話しかけられるの、別の方向性でこわい。フレンドリーの出どころがわからないから、こわい。

・こんな大都会で「身元も知らないのに距離のつめ方が光の速さ」のやつは、だいたいおかしな人なんです。

・「やたら儲かる話」「やたらお金のかかる話」をされたら、友人であっても距離を取りましょう。友人はお金の話を抜きにしてもつながっていられる存在のことをいいます。

・子供が欲しいものと、大人があげたいものには、マリアナ海溝より深い隔たりがある。

・人間なにがどうなれば、リビングの真ん中で焼き芋を焼いたままコンビニに出かけられるんだ。

・殴ってくる恋人とはすぐに縁を切った方がいいし、自己肯定感を軽率に下げてくる人間とも距離を置いた方がいい。

・いま思うと、ほしかったのは好意というより、嫌われない保証だった。

・わたしはふたりから、とにかくほめられたし、めちゃくちゃ愛されていた。自分に自信を持てた、それは幸せなことだった。だけど、家から一歩外に出たら、誰もほめてくれないというギャップにおそわれる。

・たしかに、自分の誕生日を誰にも祝ってもらえないとしたら寂しい。でもそれ以上に、もし自分に「誕生日を祝ってあげる大切な人」「お祝いさせてくれる人」がいなかったとしたら、もっと寂しい。

・無償の愛こそが「贈与」で、見返りを求めるのが「交換」だ。わたしは他人からもらっていた贈与を、勝手に交換にメタモルフォーゼさせていたということか。

・誰にも、わかられたくない。わかられたら、わたしの歩んできた過去が、ありふれた陳腐なものに成り下がってしまう。気がする。

・人間は希望がないから死ぬんじゃない。死にたくないから希望をつくるんだ。大好きな人たちがいない世界を、それでも生きるだけの価値といえる希望を。

・残念ながら、差別は姿かたちをジワジワ変えて、いまもわたしのすぐそばにいる。世の雑踏に紛れるほどの変身を遂げた差別のことを、わたしは「思い込み」と呼んでいる。

・彼らには「障害者だから、できないだろう」という思い込みがある。仕方がない。彼らの近くに、障害者がたまたまいなかっただけだ。自分で見聞きしたもの以外は、誰かに見聞きに頼って判断するしかないから。

・世の中には、食べようともしないのに、パインバーグを許せない人がいる。

・問題なのは。「わたしはパインバーグを食べようとは思わないし、パインバーグをうまそうに食べている連中の気がしれないわ!きっと頭がおかしいのよ!焼き払え!」っておそいかかってくるやつがいること。

・「書いてないことをポジティブに憶測してほめてくれる人」と「書いてないことをネガティブに憶測して怒ってくる人」がわりといて、自分の書いた140文字に落ち込んだ。



傘のさし方がわからない【電子特典付】 (コルク)

傘のさし方がわからない【電子特典付】 (コルク)

  • 作者: 岸田奈美
  • 出版社/メーカー: コルク
  • 発売日: 2021/10/15
  • メディア: Kindle版



傘のさし方がわからない

傘のさし方がわからない

  • 作者: 岸田 奈美
  • 出版社/メーカー: 小学館
  • 発売日: 2021/10/15
  • メディア: 単行本



タグ:岸田奈美
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『シン・ニホン AI×データ時代における日本の再生と人材育成』 [☆☆]

・「文句は言っていい、しかし言った人が直す」は僕らが保育園や幼稚園で学んだ、この社会の掟だったはずだ。

・リニアな思考では世界を読み違えるのだ。すべての変化は桁で考える必要がある。横軸を普通に時間で置くとしても、差分を読み取る縦軸はログスケール(片対数目盛り)にして考えないといけないということだ。指数関数的な思考が不可欠な時代に僕らは突入している。

・仮に生み出せなくとも、少なくとも識別できる、そんな「知覚」の能力が深く広い人が多くなることで、街も、空間も質が上がる。

・情報科学は数理科学であり、数学の言葉で書かれている。学ぼうと思うのであれば、大学1~2年レベルの統計数理、線形代数、微積分の基礎要素が必要だ。

・自分はSFが好きでハリウッド映画もよく観るが、正直なところ、アイデアそのもので度肝を抜かれることは少ない。ほとんどのアイデアは子供の頃、マンガやアニメ、あるいはその妄想力の上に立つ、数多くの本などを通じてすでに妄想し、頭の中に描いてきたからだ。

・さまざまな概念の受け皿である日本語はそもそも、漢字、仮名、カタカナ、アルファベット、アラビア数字、サンスクリット(梵字)……とどんな外来概念でも飲み込める言語体系と文化の柔軟性が際立っている。

・現在、この日本の教育システムが生み出す最高の人材は、テレビ番組でクイズ王になる、教育評論家や予備校講師になるぐらいしかないという残念なことになってしまう。

・人は大きく5つに分かれる。「起爆人種」、この起爆人種に感動し、インスピレーションを受け、一緒にこの動きに加わる「参画人種」。この動きを好ましく思っており、応援する気持ちはあるがどちらかと言えば見る側の「応援人種」。このような新しい動きには関心がない「無関心人種」。このような動きそのものが好ましくないと思っている「批判人種」だ。

・文章を書くことなしに思索を進めることはできません。書くから自分にもわかる。

・AIの発達で記憶や知的訓練はいらなくなるかと言えば、答えは「NO」だ。たとえばバレーボールのルールを知らないまま、試合の一部分を観戦したところで、どういう局面を迎えているのかを把握することはできない。

・日本では、教師層も含めてほぼすべての人が、体系的かつ徹底的に論理的な思考や表現をする訓練を受けたことがないのだ。結果、明晰で誰にでもわかる文章が書けることが教育者層の証明となっている米国、欧州と異なり、この国では難解で、相当頭脳内で補完を行わないと理解できない文章を書く能力が、あたかも高い教育を受けた人たちの特徴のように思われ、負の再生産が起きている。

・ガリレオの時代から今に至るまで、自然からパターンを見出すことがサイエンスの根源であるこには変わらない。しかし、このことがこの国では教育層の多くにすら理解されていない。彼らの多くが、サイエンスを学ぶとは自然科学で発見されたルールと事実を覚えて、それを物理や化学の問題に適用することだ、と勘違いしている。

・老人を生かさんがために、若者を犠牲にするような国に未来はない。

・一度取りやめ寸前にまでなった利根川支流の八ッ場ダムがなければ、2019年台風19号の被害は相当のものになったことは疑いようがない。全体を読めないまま項目削除をするのではなく、本物の無駄取り、効率化を行う。

・「バリアフリーな道が認知症を生み出す」という話を聞いたことがある。多くの人にはかなり直感に反した話だと思うが、実際、バリアフリーであるということは、脳への負荷が減るということでもある。

・そもそも真似をしようとする段階で間違っている。誰も自分と異なる存在にはなれないからだ。



シン・ニホン AI×データ時代における日本の再生と人材育成 (NewsPicksパブリッシング)

シン・ニホン AI×データ時代における日本の再生と人材育成 (NewsPicksパブリッシング)

  • 作者: 安宅和人
  • 出版社/メーカー: ニューズピックス
  • 発売日: 2020/02/18
  • メディア: Kindle版



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