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『名著の話 芭蕉も僕も盛っている』

・この句は俗にいわれる「古池に蛙が飛びこんで水の音がした」という単なる現実描写の句ではなく、「蛙が水に飛び込む音を聞いて、心の中に古池が広がった」という心の世界を表した句です。

・カメラでは撮ったそのまま、映ったそのまましか伝わらない。人間の目の能力を超えたカメラは、見た以上を映すかもしれないけど、空気感?雰囲気?は、なくなっている。

・大詩人とそうでない詩人の見分け方が一つあって、凡庸な詩人は正確に描こうとするわけ。たとえば白髪が何センチ伸びたとかね。中国の李白のような大詩人だったら、「白髪三千丈」と言っちゃうんです。

・芭蕉の場合は、現実の鳥や虫の声が心の世界を開くきっかけになることが多いんです。

・歌枕は、王朝時代や中世のころの歌人たちが、和歌に詠むことで代々築きあげてきた名所です。それは要するに想像でつくりあげた名所なので、実際の名所旧跡ではないんです。

・自分が実際に体験することだけが体験なんじゃなくて、想像したこともまた体験の中に含まれるということです。

・嘘か本当かをはっきりさせろ、白黒はっきりさせろというのは、近代の貧しい発想ですね。

・何かを書いて褒められるのではなくて、書かずにいろいろ褒められるって滅多にないことだから。

・ホトトギスにしても、遠いところから夏のあいだ日本に来て、また帰っていく。どこから来ているかわからない。なんか別の世界と行き来をする生き物なんですよね。

・100%の信仰があれば、まったく疑わないから「神様がなんとかしてくれる」で乗り切れる。けれど、なまじ科学の時代になって、信仰が薄らいでくると、科学で乗り切れないことや、自分の科学知識で追いつかないことにパニックになる。

・ある人は、飲食店でサイン色紙を書くときに、断わりはしないけれど、料理の評価によって、似顔絵の口のラインの微笑み方を、全部変えるんだそうです。人気商売だからどこにでも書くけれど、全部がうまいと思ったわけじゃない痕跡を残すんです。

・短文の連続で、前の項と後の項で違うことを言っていてもいい。そうすることで立体的になるはずだと思うんですよね。

・今の政治には、コロナにかかわらず、失敗したことの責任を取らされたくないから、記録を残さないところがありますね。

・ぱっと聖書を開いたら、心に響く言葉に巡りあい、悩みを克服するきっかけになった。

・恨みとか憤りとか、全部を身体の中に呑み込んだ状態で、どうにか貧しく暮らしている。

・戦争終わって30年近く経ってから新入りの傷痍軍人なんているわけねえだろ。

・要するになぜ自分が騙されたのかを考えなかったらまた同じ目に遭うということです。

・『ピノッキオ』には、『クオーレ』からはみ出した人たちの物語が書かれていると言ってもいいかもしれませんね。

・業の肯定が落語だよ。講談は赤穂浪士の四七人の話だけど、落語は寸前で逃げた奴の話をするんだよ。



名著の話 芭蕉も僕も盛っている (角川学芸出版単行本)

名著の話 芭蕉も僕も盛っている (角川学芸出版単行本)

  • 作者: 伊集院 光
  • 出版社/メーカー: KADOKAWA
  • 発売日: 2023/03/23
  • メディア: Kindle版



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