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『映画を早送りで観る人たち』

・彼らは「観たい」のではなく「知りたい」のだ。

・映画館はそのためにお金をいちいち払うから、早送りするのはもったいない。でもNetflixにはもう月額料金を払っちゃってるから、別にいい。

・「嫌い」と言ってるけど本当は好き、が通じない。

・全部話してもらって、はっきりさせたい。自分の頭が悪いことを認めたくない。だから、理解できないと作品のせいにする。

・絶対に否定されないような、あらゆる人が傑作と認めている「勝ち馬」にしか、「おもしろい」って言えない空気がある。誰も評価しない「負け馬」に乗っていることに謎のプライドを持つ昔のオタクとは、真逆なんですよね。

・「シャレード」というシナリオ用語がある。オードリー・ヘプバーン主演の映画『シャレード』に登場するジェスチャーゲームを由来とする言葉で、「関節表現」のことだ。目で見てわかることは、いちいちセリフにしなくていい、すべきではないという理論である。

・抽象絵画を一度も見たことのない人間が、モンドリアンの絵をいきなり見せられても、どう解釈していいかわからない。無論、抽象絵画など鑑賞しなくても人間は生きていける。同じように、セリフのないシーンに意味を見出すことができなくても、人間は生きていける。

・リテラシーが低い人を差別しない、という名のバリアフリー、「みんなに優しい作品」こそが「良い作品」なのだ。

・当時の若者が友達と触れ合うのは、教室だけだった。教室を出たら逃げられた。我が道を行くことができた。しかし今は、LINEがどこまでも追いかけてくる。逃げられない。常にレスを求められる。

・皆が観るドラマを見る、人気ランキングは上から順に手に取る。皆が「いい」と言っているものだから、外れは少ないはず。仮に外れても、皆が一斉に恥をかくのだから、恥ずかしくはない。皆で愚痴を言えばいいだけのこと。

・Z世代にはネタバレ消費と呼ぶべき習慣が根付いている。理由は「失敗したくないから」。

・仮にそう思っていたとしても、声に出していいかどうかという節度がなくなってる。まさに幼稚化だよ。我慢強さが不足している。

・昨今は「共感性羞恥」がポピュラーな感覚として共感者を増やしつつある。他人が失敗したり、恥をかいたりしているのを見ると、それがフィクションの中の出来事であっても自分まで恥ずかしい気持ちになってしまうというものだ。

・出版社にとって無視できない売り上げになることを、電子書籍とオーディオブックそれぞれの登場時に予測できた者が一体どれほどいたか。むしろ「本を読む体験としては、本来の方法に著しく劣る」と、いずれに対してもケチをつけた「良識的な旧来派」たる本好きは多かったはずだ。



映画を早送りで観る人たち~ファスト映画・ネタバレ――コンテンツ消費の現在形~ (光文社新書)

映画を早送りで観る人たち~ファスト映画・ネタバレ――コンテンツ消費の現在形~ (光文社新書)

  • 作者: 稲田 豊史
  • 出版社/メーカー: 光文社
  • 発売日: 2022/04/12
  • メディア: Kindle版



映画を早送りで観る人たち ファスト映画・ネタバレ――コンテンツ消費の現在形 (光文社新書)

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  • 作者: 稲田 豊史
  • 出版社/メーカー: 光文社
  • 発売日: 2022/04/12
  • メディア: 新書



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