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『反逆の神話 「反体制」はカネになる』

・地位を求める人とその観衆の媒体として機能していた消費財は、排除されてしまった。社会的地位を獲得する方法は、ますますインスタグラムのフォロワーやツイッターのリツイートやフェイスブックの「いいね!」の形をとるようになった。変顔をしている画像で1時間に800シェアとれるとき、新品のジーンズなど必要だろうか?

・だんだんに消えていくより燃え尽きるほうがいい。

・死後の楽園を約束する宗教と違って、広告はすぐそこに楽園があると請け負った。

・結局のところ、労働者は想像力を解き放つことにあまり関心があるようではなかった。機会があれば美術館や詩の朗読会に押し寄せるというより、スポーツやテレビや麦芽酒に病的な興味を示しつづけた。

・体制はまず反抗のシンボルをわがものとし、その「革命的」意義を抜き取ってから、それを商品化し大衆に売り戻すことで、反抗をただ同化させようとする。

・以前は囚人を斬首するために、死刑執行人は往々にして四回も五回も斬りつけねばすまなかったのだ。それと比べれば、ギロチンはきわめて人道的だった。

・マリファナが精神を解放するとの考えは、マリファナで頭がぼーっとなった人くらいしか信じないようなことだ。まともな人なら、マリファナ使用者が世界でいちばん退屈な話し相手だと知っている。

・つまり、ほとんどは反逆者のお楽しみのための反逆でしかない。

・男女平等になるようなルールに取り替えようとするのではなく、カウンターカルチャーの神話を受け入れてしまった。ルールが存在すること自体を女性への抑圧のしるしとみなしたのだ。したがって、男女平等のためにはルールの改善ではなく廃止が必要だと結論したのだった。

・「自由恋愛」がこの社会における大規模な女性の性的搾取を可能にしてしまったのだ。

・昔ながらの「できちゃった婚」ルールは、子供の父親としての責任を男性たちに取らせた。この規範が崩れてきたことも、西洋世界に「貧困の女性化」が広がっていることの主要因の一つである。

・『水源』『肩をすくめるアトラス』の男性主人公はともに、普通の人間ならば「レイプ」と称する行為に及ぶ。しかしランドには、そのような基準は当てはならない。彼女にとって「レイプ」という概念そのものが、自由な個人の強烈な性動因を束縛するために弱者がでっち上げたルールに過ぎないのだ。

・この種の状況は「集団行為の問題」と呼ばれる。誰もが特定の結果を得たいと思っているが、それをもたらすのに必要なことをする動機は誰も持っていない、という場合を指す。

・女性への気遣いと尊重を表す代わりの方法を見つけるよりも、単に女性の要求に注意を払うことをすぱっとやめる男性が多かったのだ。彼らにとって、男女平等とは「おれはおれの面倒を見る。彼女は彼女の面倒を見る」ということだ。

・これは逸脱か異議申し立てか? この二つを区別するために適用できる、とても簡単なテストがある。「みんながそれをしたらどうなるか──世界はもっと住みよい場所になるのか?」

・核軍拡は、確かに望ましくない結果だが、それは不信と不安定を特徴とした状況に対する合理的な反応の産物なのである。

・もし強制された解決策で必要なレベルの信頼が得られるなら、当事国すべてが諸手を挙げて受け入れない理由などあるはずがない。

・サブカルチャーの反逆は、行き当たりばったりのことではない。あらかじめきちんと整えられたパターンに合わせてある。だから、ヒッピーやパンクはその見かけで「声明を発表する」ことができて、ただの精神異常者として片づけられはしない。

・もし消費主義がそんなに悪いことなら、なぜやり続けているのか?

・人々が本当は必要としていない(と批評家が言っている)消費財のリストは、いつ見ても中年の知識人が必要としていない消費財のリストにしか見えない。

・「高価」で、美しいとされる製品を使用したり、じっと見つめることから得られるとびきりの満足の大部分は、ほとんど場合、美という名のもとに隠された贅沢さに対する感覚の充足である。

・趣味のよさの多くは否定形で、「……ではない」という言葉で規定されている。趣味とは、おそらく何よりもまず嫌悪なのだ。つまり他人の趣味に対する厭わしさや本能的な堪えがたさなのである。

・どんな規則でも破っている人がいれば、そこにはマーケティングの可能性がある。たとえばドラッグの売人の服装の好みは、何十年にもわたって「都会的な」スタイルを牽引してきた。

・エクストリームスポーツとは単に、ただの体育会系だと誤解されたくない人のためのスポーツでしかない。

・「枠から外れた考え方」がエスカレートして心の病に至るのはいつなのか?オルタナティブであることはどの時点で完全なる狂気に堕すのだろうか?

・どの事件でも平凡な犯罪行為をとりあげては政治的な解釈を与えて、「体制」への抗議活動として擁護したり弁解したりした。

・狂気は「世界にある安楽なもの、愉快なもの、軽快なもの、こうしたすべてを支配する」。人間たちを「はしゃぎまわらせ、楽しませる」のは狂気であり、愚かさなのである。

・監獄は他のみんなのように「振る舞う」ことを拒否する者を罰するところ。精神病院は他のみんなのように「考える」ことを拒否する者を管理するところ。

・誰もが「くだらない売り上げトップ40」には背を向け、オルタナティブ音楽を聴きだすなら、今度はそのオルタナティブなバンドが新たなトップ40になる。

・有機食品は、金持ちはもう貧民と同じものは食べないという、アメリカのほとんど貴族的な階級構造への回帰への大きな牽引力である。

・兵士はお互いのため、自分が所属する組織単位のために戦う。最終的な目標は、仲間の期待を裏切るくらいなら死ぬ方がましだと兵士に思わせることだ。

・制服が望ましくない社会的階級を強制するために用いられるからといって、制服を廃止すべきだということにはならない――望ましくない社会的階級の方を廃止すべきなのだ。

・古来の「ハイブロウ(知識人)」と「ローブロウ(無教養人)」の対立は市場に絶滅され、いまや僕らの住む世界は、画一的な「ノーブロウ(愚か者)」商業主義の世界だと主張する。

・ブランディング・プログラムは、牧場であなたの牛を他の牛と区別できるように設計すべきである。たとえ牧場の他のすべての牛がまったく同じように見える場合でも。

・誰もが同じ素材や材料や製造方法を使う世界では、それが何でできているかよりも、美、若さ、健康、洗練、またはクールといった価値を商品に結びつけることが肝心だ。

・まったくでたらめで予測不能な行動をしだしたらどうかということだ。それは個性の主張になるだろうか。友達はあなたの独特のアイデンティティをほめてくれるか、それとも「いったいあんた誰なの?」といぶかしむだろうか。奇妙な話だが、予測可能であることはアイデンティティを持つことの真髄なのである。

・ボルトとナットが標準サイズでできているから、ひとそろいのレンチで事足りる。

・ある映画がクリティカル・マスに達するのは、多くの人が話題にしていて、他の人も話に加わりたいばかりに(または、ただみんなが何の話をしているのかを知りたくて)見なければという気にさせられるからだ。

・リアリティTVの成功には、単なるショーの内容よりもっと大きな要因がある。視聴者がこうした番組を好むのは、それについて話すのが好きだからだ。

・個人主義それ自体は何も悪くない一方で、重要なのは、他の人たちの時間とエネルギーを犠牲にしてまで守るべき個性などないということだ。

・ただ秩序を抑圧と、無秩序を自由と同一視しているだけだ。

・現代医療の成功はいろいろな意味で、命取りの病気をほぼ排除または治療した。これでこうした病気はもはや日常の一部ではなくなったから、その深刻さを疑いやすくなる。

・「なんでうちの子にポリオの予防接種を受けさせなきゃいけない?」と人々は声を上げる。「誰かがポリオになったと最後に聞いたのはいつだっけ? きっと製薬会社が儲けようしてるだけでしょ」。

・素晴らしい環境の住居、趣味のよい家具、高速の自動車、おしゃれなレストランや格好いい服装はどれも本来希少なのである。これらをもっと生産できないのは、その価値が消費者に与える差異に基づいているからだ。だから、生産増で欠乏を克服しようと考えるのは筋が通らない。

・世界中の貧しい人たちを救うのは、大量生産ではなく大衆による生産である。

・通りで一戸だけがキッチンに薪ストーブを備えるのならいいが、全戸がそうしたならば、都市の大気環境は19世紀レベルに逆戻りするだろう。

・少数の人しか使えない技術にふさわしい名前は「適正」ではなく「特権」である。

・「誰もが、どこでも自分の信ずることを表現することができる、沈黙や体制への順応を強制される恐れはない」と宣言したとき、他の人に強制し、嫌がらせをし、沈黙を強いるためにこの表現の自由を利用する者がいるかもしれないとは、思いもしなかったようだ。そうしてインターネットにたちまち「現実世界」に存在するのと同種の不快な連中が、たとえば人種差別主義者や、頑迷な人間や、性差別主義者がはびこった。

・何ら犠牲が払われないならば、財が無駄にされることはほぼ確実である。個人が本当に必要としていないあらゆる種類のものを所望するようになるからだ。



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