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『上級国民/下級国民』 [☆☆]

・「30年以上にわたって自営業者が衰退の一途をたどっているのは先進国の中で日本以外に類例がない」と述べていますが、日本の自営業比率は1981年時点で27.5%と主要国の中で突出していました。それが2015年には11.1%にまで減り、ドイツの10.8%やオーストラリアの10.3%に比肩する水準になったのです。

・日本経済の問題はITへの投資が少ないことではなく、投資の成果が出ないことです。

・マスコミも含め日本の企業や官庁、労働組合などを支配しているのは「日本人、男性、中高年、有名大学卒、正社員」という属性を持つ「おっさん」で、彼らが日本社会の正規メンバーです。そんな「おっさん」の生活(正社員共同体としての会社)を守るためには「外国人、女性、非大卒、非正規」のようなマイノリティ(下級国民)の権利などどうなってもいいのです。

・近年のベストセラーの多くは70~80代を読者対象にしたものです。もはや活字を読むのは、この世代しかいなくなりました。新聞にせよ、出版にせよ、活字メディアにとって団塊の世代を批判することが最大のタブーになっているのです。

・「働き方改革」は、団塊の世代が現役を引退したことで初めて可能になったのです。どのような政党が権力を握ろうとも、彼らの利益を侵すような「改革」ができるわけはありませんでした。

・団塊の世代は政治家にとって最大の票田です。彼らの死活的な利害が「会社(日本的雇用)」から「年金」に移ったことで「働き方改革」は進められるようになったものの、年金と医療・介護保険の「社会保障改革」はますます困難になりました。

・教育の本質は「上級/下級」に社会を分断する「格差拡大装置」であることを、福沢諭吉は正しく理解していたのです。

・若い女性は「エロス資本(エロティック・キャピタル)」を持っており、それを資本市場でマネタイズ(換金)している。

・恋愛と縁のない若い男性は日本だと「非モテ」ですが、アメリカだと「インセル(Incel)」と呼ばれます。これは「Involuntary celibate(非自発的禁欲)」のこと。

・農業革命が人口爆発を起こしたとすれば、産業革命は「ゆたかさの爆発」を引き起こしました。

・社会がリベラルになればなるほど、何歳になっても働いて納税したり、リタイアしてからも健康の許すかぎり地域のボランティアに参加するなど、「自分はこうやって社会に貢献している」とアピールしなければなりません。「生涯現役社会」とは、「生涯にわたって社会に参加し続けなければならない社会」でもあります。

・誰もが自己実現できるリベラルの理想世界は、究極の自己責任の世界なのです。

・中世はもちろん江戸時代や戦前でも、ほとんどの人にとって「他人(見知らぬ人)」と出会うことなど年に数回あるかないかだったでしょう。旧石器時代から人類はずっと「知り合いしかいない」世界で暮らしており、現代のように、毎日たくさんの「他人」と触れ合わなければならない環境など体験したことはありませんでした。

・アメリカでは相手が「差別的」と感じる言葉遣いは「無意識の差別意識」の表れとして糾弾の対象とされ、著名人が涙ながらに謝罪する場面がしばしば報じられます。

・「政治的正しさ」というのは「さまざまな人種や宗教の人たちが共生する社会での振舞い方」のことで、それが正しいかどうかにかかわらず、決められたコードに従ってさえいれば「差別主義者」との批判を避けることができるのです。

・資産運用理論では、リスクは損失(危険)のことではなくリターン(利益)の源泉で、統計学的には「利益と損失のばらつきの大きさ」を表します。

・最近ではスマホのフリック入力しかできない若者が増えて、キーボードが打てないために事務作業を任せられないという話も聞きます。

・アメリカでは経済格差が極端に拡大していますが、その主要な理由は「強欲な資本主義」ではなく、たんに市場規模が大きいからです。

・複雑系は「世界の根本原理」なので例外はなく、資産にも当てはまります。市場全体の富が大きくなれば、なにひとつ「不正」なことが行なわれていなくても、自然と資産格差は拡大していきます。

・アメリカ社会は、「上級国民(白人リベラル)」と「下級国民(プアホワイト)」の分断によって収拾のつかない政治的混乱に放り込まれることになりました。

・アファーマティブアクションでは、マイノリティは大学などの進学で優遇措置を受けることができます。これは、白人や(優遇措置の対象外とされている)アジア系よりも低い点数で医学大学に入学し、医者になれるということです。アメリカではこうして、黒人の患者ですら黒人の医師を避けるようになりました。

・ヤフー!のニュース記事に対するコメントは「ヤフコメ」、コメント投稿者は「ヤフコメ民」と呼ばれています。

・「非マイノリティ」とは要するに「マジョリティ」のことですが、「マジョリティ」として十分な利益を享受していないと感じている人々のことを指します。

・知識社会では、人々は「知能」によって分断されるのです。

・自分が「日本人」であるという以外に誇るものがない人たちが「日本人アイデンティティ主義者」で、「反韓・反中」の「ネトウヨ」です。

・イギリスでは、「リバタニア」の住人たちはEU離脱派の「ドメスティックス」を同胞とは思わなくなるでしょう。

・リベラルは都市郊外の高級住宅地にひきこもり、インターネットのヴァーチャルな空間でグローバルな「リバタニア」とつながり、国境を自由に越えてビジネスしたりバカンスを楽しんだりするようになるでしょう。「ボボズ(リベラル)」たちが現実世界から撤退しはじめるのです。

・アイデンティティ(共同体への帰属意識)は、「俺たち」と「奴ら」を代弁する指標でもあります。それに最適なのは、「自分は最初から持っていて、相手がそれを手に入れることが絶対に不可能なもの」でしょう。黒人やアジア人は、どんなに努力しても「白い肌」を持つことはできません。

・彼らは「人種差別主義者」というより、「自分が白人であるということ以外に誇るもののない人たち」です。

・ベーシックインカムをもてはやす人たちは、世界に膨大な数の貧困層がいることに絶対に触れません。それはこの現実を認めると、せっかく気分よく盛り上がっていた夢が壊されるからでしょう。

・知識社会における経済格差とは、「知能の格差」の別の名前でした。だとすれば、知能の違いが人生に影響しなくなれば「知識社会」は終わり、知能格差によって引き起こされる「上級/下級」の分断もなくなることになります。

・狩猟採集社会では足の速い人が圧倒的に有利だったかもしれませんが、現在はウサイン・ボルトくらいしか富と名声を手にできません。なぜなら車、電車、飛行機のようなテクノロジーによって足が速いか遅いかを誰も気にしなくなったからです。



上級国民/下級国民(小学館新書)

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  • 作者: 橘玲
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