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『「日本スゴイ」のディストピア 戦時下自画自賛の系譜』 [☆☆]

・日本が「地球上に全く孤立無援」というフレーズは、そもそもこうした事態を招いた引き金は満州事変であるにもかかわらず、被害者意識全開なところが誠に興味深い。

・「一発ぶちかましてやったぜ」的な威勢のよさに民衆が拍手喝采を送るようになったときが一番危ないのだ。

・「手榴弾投げ」は、1939年に制定された厚生省制定体力章検定にある検定項目だった。現行の新体力テスト(文部科学省)の項目では「ソフトボール投げ」が対応しているだろうか。

・自分で誰かを選んでいるかのような気持ちにさせる「翼賛選挙」、この方式を編み出した日本スゴイ!

・国民礼法は、単に礼儀正しい人間を作ることが目的ではなかった。礼法の体得を通じて、目上の者に対してふさわしい服従の態度をとることができるようにすることを通じて、「上下の秩序を保持し、以て国体の精華を発揮し、無窮の皇運を扶翼」する国民を製造することこそが目指されていたのである。

・明治維新で文明国の仲間入りを目指して立ち小便が禁止されてから140年あまり、ようやくわが神国日本でも用便のマナーが定着したとみるべきか、それとも日本民族が古来から大切にしてきた美しい用便習慣が近代によって破壊されたとみるべきか、見解はさまざまだろう。

・そもそも人類の歴史が始まって以来、一日に消費するよりも多くの食料や生活材を生産することで人間社会は維持・発展してきた。つまり世界史的にみれば勤勉でなかった民族はないともいえるのである。

・「日本人は勤勉だ」と自らを呪縛する必要はまったくないと思うのだが、「勤勉だ」と言われるとうれしくなってしまう人々が、そのイメージの普及徹底を目指して文字どおり勤勉きわまりなく邁進しているのが現状だろう。

・賃金奴隷としての無産階級による階級闘争(理論)をその根底から否定するためのイデオロギーが必要だった。

・労働は天皇への仕奉であり、労働を通じて皇国民は天皇へ臣従する――この恐るべき「日本的勤労観」はまさに最悪としかいいようがない。

・労働を「仕奉」「奉仕」と規定する「日本的勤労観」は、戦争に負けてもまた労働基準法ができても、不幸なことに姿を変えて現在も生き延びている。

・最近の「日本スゴイ」系テレビ番組では、外国人を起用して「日本スゴイ」を語らせるパターンが多い。日本を褒める外国人が日本のメディアは大好きで、たいへんに珍重してきた歴史がある。

・戦前の一時期、この「日本を褒める外国人」枠を熱狂的人気とともに独占していたのは、遠くドイツからやってきたヒトラーユーゲントの一行だった。

・「外から見た日本」という客観性を与えるためには、非日本ネイティブに語らせるのが一番の早道だ。



「日本スゴイ」のディストピア: 戦時下自画自賛の系譜

「日本スゴイ」のディストピア: 戦時下自画自賛の系譜

  • 作者: 早川 タダノリ
  • 出版社/メーカー: 青弓社
  • 発売日: 2016/06/30
  • メディア: 単行本



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