『啓蒙思想 2.0』
・ふと気づいたときには、その政治システムはどんどん右か左かではなく、クレイジーか非クレイジーかに分かれていた。しかも、クレイジー派の方が優勢に見えた。
・理性は思ったよりずっと脆弱で、ずっと無能で、社会的・文化的環境に大きく依存している。しかしこの環境は、私たちが生み出したものだ。
・左に行ってほしければ、象にそっちへ行けと蹴りつけたり怒鳴ったりするよりも、象から飛び降りて象が怖がるものを右側に置けばいい。ふたたびその背に乗ったときには、あなたは象をコントロールしている。
・結婚問題。ビルはナンシーを見ていて、ナンシーはグレッグを見ている。ビルは結婚している。グレッグは結婚していない。結婚している人は結婚していない人を見ているでしょうか? (A) はい。(B)いいえ。(C)どちらとも決められない。正解は(A)「はい」となる。
・直感的な判断は、なぜあなたがそれをしたかという理由を説明できないものだ。これに対して、合理的な判断は常に説明できる。
・彼らはただわかっただけで、どのようにわかったかは言えなかった。
・人がしゃっくりするときに何が起こっているかというと、脳の(進化的に)古い部分が肺呼吸から鰓呼吸に切り替えようとしているのだ。
・もしも私たちの政治制度が。それを過去にどう組織したかについての正確な記憶とともに一夜にして消え去ったら、どうすれば根底から再建できるかわからないだろう。
・理性がうまくいかないのはどんなときだろうか。これが確実に弱いという分野は、因果関係を見つけにくいか、介入から結果を出すまでに長時間の遅延が生じている場合である。
・大多数の人が、こと子育てに関しては保守的になる。そしておそらく子育てが多くの人を保守派にする。
・人間とは、戦う敵がいるときに最もよく協力しあえるものだ。共通の敵か「他者」でも現れないかぎり、みんなが味方になることはできない。
・まったく非科学的な信仰を持っている人たちは武器の製造がすこぶる不得手になりがちだという、まさにそのために効率よく殺し合いができない。キリスト教徒とイスラム教徒は何世紀にもわたって、互いに相手を絶滅させようと手を尽くしてきており、それが成功にこぎ着けなかったのは、一度に一人ずつ人力で排除しなければならなかったからだ。
・私たちの脳の下位システムはみな同じバグがあるから、知能指数の高い人も低い人とまったく同様にトリックにかかりやすい。
・たいていの変人や陰謀論者は、精緻な理論を組み立てることができ、自分の見方がなぜもっと広く受け入れられないかの込み入った説明をつけられることから明らかなとおり、ブッシュと同様にバカではない。問題は、極度の確証バイアスにかかっている点だ。
・アインシュタインは他人に見えない関係性を認識したかもしれないが、自説の検証可能な重要性について、もっと大切なことには、この理論はどうしたら誤りだと証明しうるかを完全に明確に述べることもできた。
・科学教育の中核をなす美点は──単なる技術教育に反して──厳格なまでの反証重視である。
・民間の迷信には通常の期待から一点だけ逸脱する傾向がみられる。
・覚えられることが信じられる道への第一歩だ。
・「金融イノベーション」は、人間の不合理さを利用する新しい手口を見つけることだった。
・バカな人たちがたくさん子供をこしらえるから、人類全体がますますバカになっていくということだ。
・社会批判には常に陰謀論に堕す危険がある。脳の奥で「なぜこんなことを信じなきゃいけない?」と疑う声なしには、一線を超えるのはほとんど防ぎようがない。
・体に男女差があるのと同じ確かさで、脳には男女差がある。しかし理性が共通であるのは、まさしくその大部分が脳の外側で存続しているからだ。
・先に数学を勉強しなくても科学ができ、何も暗記しなくても字が読めるようになったら、どんなにすばらしいか。残念ながら、事実はこうではない。
・成功するのは、知識人に反対にもかかわらず、問題を最も単純な言葉に変え、その単純な形でずっとくり返すことができる勇気のある人物だ。
・政治討論番組中は何でも言いたいことを言えて、それが8000万人の耳に届く。たとえ事実チェックが翌日の新聞に出ても、どうせ読むのはせいぜい200人か、2000人だ。
・保守は、統計に基づいて方策を立てる専門家に反論することを自慢にしながらも、選挙運動は統計に基づいて専門家に指揮してもらいたがるものだ。
・教育のない人を持ち上げつつ、無教育なふりがうまい高学歴の候補者を選ぶのと、本当にまったく教育のない候補者を推薦するのとでは大違いだ。共和党はサラ・ペイリンでそれを知った。
・人はときに、自身の社交ネットワークが国民の代表サンプルではないことに気づかない。
・民主党は自分たちが何を言うかより、その言葉が呼び起こす感情にもっと注意を向けるようにすべきである。
・一度も危険に身をさらしたことのない者は、自らの勇気を保証することはできない。
・ナショナリズムとは要するに、実は見知らぬ他人に対して感じる社会連帯を強めるために仕組まれたトリックである。
・ブタと闘うな。どちらも汚れるが、ブタはそれを喜ぶ。
・臓器提供に関して「オプトアウト」【推定同意。拒否の意思表示がなければ提供可】方式をとっている国では提供率は軒並み90パーセントを超えているのに対し、「オプトイン」【要同意。提供には生前の本人意思表示が必要】方式の国では20パーセントをめったに超えない。
・人間の集団成員性は非常に操作されやすく、当人たちも重要ではないと承知している特徴に呼び起こされがちである。「X」とか「W」とグループ名をつけるだけでも有効だ。
・集団的アイデンティティと区別を決定づけるのは、絶対的な意味で「重要」な特徴ではなく、どんな特徴であれ判断の時点で最も「際立った」特徴のようだ。
・「質疑応答の時間」はその認知的内容が著しく低下してきている。この大部分はテレビカメラの導入によって起こっていた。これが立法者を論証と討議から短く感情に訴える決め文句へ、テレビ映えするものへとシフトさせたのだ。
・理性は思ったよりずっと脆弱で、ずっと無能で、社会的・文化的環境に大きく依存している。しかしこの環境は、私たちが生み出したものだ。
・左に行ってほしければ、象にそっちへ行けと蹴りつけたり怒鳴ったりするよりも、象から飛び降りて象が怖がるものを右側に置けばいい。ふたたびその背に乗ったときには、あなたは象をコントロールしている。
・結婚問題。ビルはナンシーを見ていて、ナンシーはグレッグを見ている。ビルは結婚している。グレッグは結婚していない。結婚している人は結婚していない人を見ているでしょうか? (A) はい。(B)いいえ。(C)どちらとも決められない。正解は(A)「はい」となる。
・直感的な判断は、なぜあなたがそれをしたかという理由を説明できないものだ。これに対して、合理的な判断は常に説明できる。
・彼らはただわかっただけで、どのようにわかったかは言えなかった。
・人がしゃっくりするときに何が起こっているかというと、脳の(進化的に)古い部分が肺呼吸から鰓呼吸に切り替えようとしているのだ。
・もしも私たちの政治制度が。それを過去にどう組織したかについての正確な記憶とともに一夜にして消え去ったら、どうすれば根底から再建できるかわからないだろう。
・理性がうまくいかないのはどんなときだろうか。これが確実に弱いという分野は、因果関係を見つけにくいか、介入から結果を出すまでに長時間の遅延が生じている場合である。
・大多数の人が、こと子育てに関しては保守的になる。そしておそらく子育てが多くの人を保守派にする。
・人間とは、戦う敵がいるときに最もよく協力しあえるものだ。共通の敵か「他者」でも現れないかぎり、みんなが味方になることはできない。
・まったく非科学的な信仰を持っている人たちは武器の製造がすこぶる不得手になりがちだという、まさにそのために効率よく殺し合いができない。キリスト教徒とイスラム教徒は何世紀にもわたって、互いに相手を絶滅させようと手を尽くしてきており、それが成功にこぎ着けなかったのは、一度に一人ずつ人力で排除しなければならなかったからだ。
・私たちの脳の下位システムはみな同じバグがあるから、知能指数の高い人も低い人とまったく同様にトリックにかかりやすい。
・たいていの変人や陰謀論者は、精緻な理論を組み立てることができ、自分の見方がなぜもっと広く受け入れられないかの込み入った説明をつけられることから明らかなとおり、ブッシュと同様にバカではない。問題は、極度の確証バイアスにかかっている点だ。
・アインシュタインは他人に見えない関係性を認識したかもしれないが、自説の検証可能な重要性について、もっと大切なことには、この理論はどうしたら誤りだと証明しうるかを完全に明確に述べることもできた。
・科学教育の中核をなす美点は──単なる技術教育に反して──厳格なまでの反証重視である。
・民間の迷信には通常の期待から一点だけ逸脱する傾向がみられる。
・覚えられることが信じられる道への第一歩だ。
・「金融イノベーション」は、人間の不合理さを利用する新しい手口を見つけることだった。
・バカな人たちがたくさん子供をこしらえるから、人類全体がますますバカになっていくということだ。
・社会批判には常に陰謀論に堕す危険がある。脳の奥で「なぜこんなことを信じなきゃいけない?」と疑う声なしには、一線を超えるのはほとんど防ぎようがない。
・体に男女差があるのと同じ確かさで、脳には男女差がある。しかし理性が共通であるのは、まさしくその大部分が脳の外側で存続しているからだ。
・先に数学を勉強しなくても科学ができ、何も暗記しなくても字が読めるようになったら、どんなにすばらしいか。残念ながら、事実はこうではない。
・成功するのは、知識人に反対にもかかわらず、問題を最も単純な言葉に変え、その単純な形でずっとくり返すことができる勇気のある人物だ。
・政治討論番組中は何でも言いたいことを言えて、それが8000万人の耳に届く。たとえ事実チェックが翌日の新聞に出ても、どうせ読むのはせいぜい200人か、2000人だ。
・保守は、統計に基づいて方策を立てる専門家に反論することを自慢にしながらも、選挙運動は統計に基づいて専門家に指揮してもらいたがるものだ。
・教育のない人を持ち上げつつ、無教育なふりがうまい高学歴の候補者を選ぶのと、本当にまったく教育のない候補者を推薦するのとでは大違いだ。共和党はサラ・ペイリンでそれを知った。
・人はときに、自身の社交ネットワークが国民の代表サンプルではないことに気づかない。
・民主党は自分たちが何を言うかより、その言葉が呼び起こす感情にもっと注意を向けるようにすべきである。
・一度も危険に身をさらしたことのない者は、自らの勇気を保証することはできない。
・ナショナリズムとは要するに、実は見知らぬ他人に対して感じる社会連帯を強めるために仕組まれたトリックである。
・ブタと闘うな。どちらも汚れるが、ブタはそれを喜ぶ。
・臓器提供に関して「オプトアウト」【推定同意。拒否の意思表示がなければ提供可】方式をとっている国では提供率は軒並み90パーセントを超えているのに対し、「オプトイン」【要同意。提供には生前の本人意思表示が必要】方式の国では20パーセントをめったに超えない。
・人間の集団成員性は非常に操作されやすく、当人たちも重要ではないと承知している特徴に呼び起こされがちである。「X」とか「W」とグループ名をつけるだけでも有効だ。
・集団的アイデンティティと区別を決定づけるのは、絶対的な意味で「重要」な特徴ではなく、どんな特徴であれ判断の時点で最も「際立った」特徴のようだ。
・「質疑応答の時間」はその認知的内容が著しく低下してきている。この大部分はテレビカメラの導入によって起こっていた。これが立法者を論証と討議から短く感情に訴える決め文句へ、テレビ映えするものへとシフトさせたのだ。
啓蒙思想2.0〔新版〕 政治・経済・生活を正気に戻すために (ハヤカワ文庫NF)
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2022/04/01
- メディア: Kindle版
タグ:ジョセフ・ヒース