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『言語学バーリ・トゥード Round1 AIは「絶対に押すなよ」を理解できるか』

・「人を不用意に驚かせない」というのは大切なことである。私たちにとって驚くというのは多少なりとも恐怖や怒り伴うことだ。

・「驚き」を覚えるのはたいてい「急激な変化」に対してであるが、自然界における急激な変化は異常事態であることが多い。

・他人とのコミュニケーションにおいても、情報量の少ない言葉を交わすところから始まって、徐々に情報量の多い言葉を浴びせるような「ゆるやかな変化」を「通常」とし、出合い頭に情報力の多い言葉を浴びせるような「急激な変化」を「異常」と感じるのではないだろうか。

・「は」が付いたものは文脈の中ですでに現れている情報であり、他方「が」が付いたものはその時点で新規に導入される情報だというものである。

・すべての人が「冗談が通じる文脈」の上にいるとは限らない。冗談が通じる文脈の見極めは、人々の価値観が急激に変化しつつある昨今、とくに難しくなっているように感じる。

・言語学者の中にも人間的にアブナイ人はいるかもしれないが、そういう人も「言語学を使って人類補完計画を実行する」などと考えたりはしないだろう。

・「とりあえず相手に話を合わせよう」と思う人はいいカモになってしまうだろう。つまり、社会的な軋轢を面倒くさがったり怖がったりするあまり、相手に面と向かって言うよりも自分の時間とか労力とかを犠牲にした方がまだマシだと思ってしまうタイプの人は気をつけた方がいいと思う。

・いつ頃からか、本屋に行くとビジネス本とかで「なぜ○○は××なのか」というタイトルを多く見かけるようになった。このようなタイトルの本が多いのは売れるからなのだろうが、それには「○○とは××」という部分が前提であることが少なからず関係していると思う。この手のタイトルの「○○は××」の中には、事実でもなければ社会の共通認識でもなく、ただの著者の主張であるものも見受けられるが、それでも「なぜ~か」という構文に埋め込んで「前提」として提示されると、あたかも多くの人に受け入れられている一般常識であるかのように見えてしまう。

・「前提」には、私たちの無意識というか、心のスキマにするりと入り込むような怖さがある。

・赤塚漫画を読んでいてたまに「ちょっと怖いな」と思うときがあるのだが、極限まで振り切ったギャグが何かの深淵に触れているからなのかもしれない。

・歌にしても、メロディがなければ絶対に暗記できないような分量の言葉がするする出てくるようになるのだから、すごいものだ。日本で言えば平家物語とか、中世ヨーロッパで言えばニーベルンゲンの歌といった作品がメロに合わせて歌われてきたのも、そもそも「その方が覚えやすい」という事情があるのだろう。



言語学バーリ・トゥード

言語学バーリ・トゥード

  • 作者: 川添愛
  • 出版社/メーカー: 東京大学出版会
  • 発売日: 2021/08/25
  • メディア: Kindle版



言語学バーリ・トゥード: Round 1 AIは「絶対に押すなよ」を理解できるか

言語学バーリ・トゥード: Round 1 AIは「絶対に押すなよ」を理解できるか

  • 作者: 川添 愛
  • 出版社/メーカー: 東京大学出版会
  • 発売日: 2021/07/26
  • メディア: 単行本



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