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『他者の靴を履く アナーキック・エンパシーのすすめ』

・シンパシーはかわいそうだと思う相手や共鳴する相手に対する心の動きや理解やそれに基づく行動であり、エンパシーは別にかわいそうだとも思わない相手や必ずしも同じ意見や考えを持っていない相手に対して、その人の立場だったら自分はどうだろうと想像してみる知的作業と言える。

・日本語になると「エンパシー」も「シンパシー」も同じように感情的・情緒的というか、単なる「お気持ち」の問題であるような印象を与えてしまう。つまり、「身につける能力」というより、「内側から湧いてくるもの」のように聞こえるのだ。

・冷静に被害者や家族の気持ちになれば、知らない人たちに騒がれていつまでもニュースになるのは迷惑だと思っているかもしれない。

・加害者にリベンジしているつもりの人たちは、被害者やその家族に自分の怒りを投射し過ぎていると言える。他者の靴を履いているつもりが、自分の靴で他者の領域をずかずか歩いているのだ。

・私たちは自分をモデルに他者を理解しようとするがゆえに、世界には不幸(と、もらってもうれしくない誕生日プレゼント)が絶えないのである。

・自分自身を他者に投影するということは、他者を「自己投影するためのオブジェクト」としてしか見なさないことにもなり、他者の存在を利用して自分を拡大しているのだ。

・自分の靴が脱げなければ他者の靴は履けない。

・エモーショナル・リテラシーは、さまざまな感情を感じ、理解し、表現する能力のことを指す。同時に、その能力を高めることも含まれる。感情に振り回されるのではなく、感情を使いこなせるようになるための方法である。

・誰にも本当のことを言わない人や嘘をつき続ける人は、人生において傍観者的立場に追い込まれてしまうのだ。

・いまや左派はインテリ・エリートの集まりで、右派はビジネス・エリートの集まりになっている。つまり、左派も右派もエリートになってしまっていて、庶民の生活の実態や市井の人々の感覚がわからなくなってしまっている。

・会議だのプレゼン資料作りだのに明け暮れているホワイトカラーは、無くてもいい無駄な仕事を延々と作り出し、自分たちが働くための仕事を製造する目的で働き続けている無意味な集団だと彼は言う。

・「ブルシット・ジョブ」従事者たちが在宅勤務に切り替えたり自主隔離しても社会は直接的には困らなかった。

・どういう仕事が「ブルシット・ジョブ」ではないのかということをコロナ危機はあからさまに炙り出した。

・日本のように国の借金が円建てで、自国で通貨を発行している場合、最終的には自分でお金を刷って返せばいいのだから、財政破綻するわけがないという見方がようやく広がってきた。

・日・米など先進国の自国通貨建て国債のデフォルトは考えられない。

・論破合戦を繰り広げることはそれ自体がゲーム化し、彼らがそもそも変えるべきと言っている状況はほとんど何も変わらない。

・自殺者の三分の一が境界性パーソナリティ障害を持った人々であり、ドラッグ依存症やアルコール依存症、摂食障害で通院する人の約半数もそうだという。

・他者が自分の手助けや助言を望まないと気が動転する。

・自分が満足するには、他者も満足しなければならない。

・ある意味では、ジェンダー・ロールに囚われること自体、たやすく自分を手放しているとも言える。

・保育の師匠だった上司がよく言っていたのは、「感情の名前を教えなさい。子供たちがいま感じているエモーションが何であるかを説明してあげなさい」ということだった。

・感情を定義し、名付けていくことで、他者の感情についても自分の中で言葉に変換し理解できるようになるのだ。

・いま一般的に「ポピュリズム」と呼ばれているものは、「ポピュラリズム」のことであることが多い。民衆中心主義(ポピュリズム)と人気取り主義(ポピュラリズム)を混同すべきではない。

・政治家だけでなく、俳優にしろ、いかなる著名人でも、「身近」で「等身大」な人物ほど(またはそういう一面を見せる人ほど)人気が出るのは、彼・彼女たちはミラーリングしやすい瞬間やイメージを人々に提供しているからだろう。

・人間は他者とも「一緒」だとうれしいのだ。それは、仲間外れにされたくないという危機回避本能ともつながっているのかもしれない。

・人間のクリエイティヴィティの芽生えは「他の人たちとは違うことをやってみよう」と思うことにほかならないと保育士養成コースで教わる。

・民主主義は、違うグループ同士が闘ってどっちが強いかを決める弱肉強食制度でも、どっちが正しいかを決める劣肉優食制度でもない。

・人間が想像力を増し、更に高度な利害打算に長ずるようになれば、否応なしに、寛容の方を選ぶようになるだろう。

・「男性の目線を絶対に意識しながら実際には取引はしない」「スカウトはされたいけどスカウトには乗らない」タイプの女性だったという。

・少しでも若く見えた方がいいというプレッシャーは日本の人々が異常なまでに刷り込まれる背景には、アンチエイジング市場が日本経済の内需縮小阻止の最後の砦という政財界の事情があるのかもしれない。

・現代人は、その社会的・経済的役割の付録になってしまったのではないか。何かの付録として存在するようになると、人は自主性とともに人間性も失ってしまうのだ。

・彼が「真面目」であるときに「こうすべきだ」と思う正義漢は、「人は普通こうするものだ」といった意味での正義感であり、彼自身がそう考えているわけではない。

・「正義」はいつも彼の外側にあり、彼自身には由来しない。その出どころは周囲の人々や世間だ。

・彼の利他主義とは、世間一般の正義に自らを「委ねる」ことだ。

・昔から悲劇が愛されてきたのは、読者や視聴者が精神的な高揚感を得ているからであり、そうでなければそんな暗い話は嫌だとただ敬遠されるはずだ。

・私の世界とは違う世界がある。世界は広い。きっと、こことは違う世界がある。いまとは違うオルタナティブな世界はあるのだと信じられるからこそ、それだけ状況が過酷であろうと、そこから脱することは可能だと思えるのだ。

・エゴイストとは、あらゆる「聖なるもの」(それらは亡霊のように実体のない抽象的観念に過ぎないと彼は切り捨てた)を徹底的に否定し、具現し、経験し、体感する自己を誰にも(いかなる観念にも)所有させずに生きる人のことだ。



他者の靴を履く アナーキック・エンパシーのすすめ (文春e-book)

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