SSブログ

『難民探偵』 [☆]

・状況を変えたかった。環境を変えたかった。たとえ悪化させてでも。

・自分が妥協しないということは、相手に妥協を求めているのだという当然の理屈。

・やりたいことはなくとも、やりたくないことはたくさんあった。

・コミュニケーションが不得手な人間は、他人の目を見て話すのが苦手というよりは、他人の目を見て話すという当たり前の習慣が、そもそもないのだという。相手の目を見ずに話すことに、全く抵抗がないのだ。

・持つ者の発言は持たざる者を容赦なく傷つける。

・親指シフトキーボードを使用していた。初めて見た。噂には聞いたことがあったけど、まさか現在も作り続けられているとは思わなかった。前世紀の遺物だと思った。前世紀でだって異物だろう。

・荷物は住処の面積にあわせてウィルスのように増殖すると言うからな。

・今でも、努力した分、報われないと嘘だなんて、子供みたいなことを思っちゃってるんです。

・作家になる才能なんてものはなく、単に、作家以外の何かになれる才能のなさが、人を作家にするのだ。

・他に何もできないから──もの作りにいそしむ。

・四十年前の漫画は、それはそれで面白いけれど、もう「名作」という視点でしか読めないだろう? 世間で言われているような往年の名作漫画を、今の小学生が楽しめると思うかい? アニメやドラマや映画もしかり。

・九十九人救えなかったから、残る一人にも不幸になってもらうんですか? そんなのはただの悪平等だ。みんな一緒に不幸になれば、それで格差はなくなるんですか。

・問題点は、結局「使いやすさ」というのは本人の感想だということだろうね。親指シフトを使いやすいという人は、親指シフトを使う人だ。誰だって自分が歩んでいる道がベストだと思いたいですよね。

・人間は思いのほか、面倒や億劫を嫌いますからね──ただでさえハードルの高い人殺し。殺すために手間をかけたり、遠くにいる人間に対して殺意を持ち続けたりすることは、とても難しいことなのです。

・無神経な無知を装うというのは、意外と有効な作戦なんですよ──少なくとも、下手に知ったかぶりをするよりはよっぽどありです。人は教えたがる生き物ですからね。

・自分は理性的だと思っている人間ほど、感情の乱れには弱いものなんです。感情が激しいから、理性的であろうとする。

・どの業界も、一番手っ取り早い業績改善案は、人件費の削減ですからね。

・「働くってなんなんでしょう」 「生きる手段だよ。自己表現の手段でもあるし、世界をよくするための手段かもしれない。まあ色々あるけれど、詰まるところは──手段だ。それ自体を目的とするようなものじゃない」

・結局、事件なんて、最後に犯人に聞いてみなくちゃわからないことばかりなんだよ──捜査なんで推測の積み重ねだ。

・友達のためには遠出せずとも──敵のためには、人は遠出するかもしれない。

・企業のお偉いさんとなると、電車のような公共機関を利用するのさえ、嫌う者が多いとも聞く──当然、そこにはエリート意識云々もあるのだろうけれど、それと同量の、セキュリティ意識もある。要は不特定多数の人間が集まる場所を嫌うのだ。

・優秀さを装ってばかりじゃ、逆に採用されなくなってしまう。未熟さを示すことも必要なんだ。未熟さはそのもの未来への可能性を示し──即ち伸びしろを示す。

・泥のように甘やかされるその場所で、危機感を持ち、立ち上がらなければ──堕ちていくばかりなのだ。

・政府が、労働を国民の義務に位置づける理由も、わからないじゃあなかった──人間の欲望の中には、そもそも労働欲なんてないのである。

・そうしないと──示しがつかなかった。いや、つかないの──収まりでしょうか。

・今日までそれをしてこなかったから──今日のあなたがあるんじゃありませんか?

・犯行を自慢げに滔々と語り、その後、後腐れのないように自殺してくれるような犯人など、現実にはいないのだ。

・殺人犯が死体を損壊する一番大きな動機は、「確実に死んだかどうかがわからないから」だとも聞く。

・新聞は小説みたいなものだし、テレビニュースはドラマみたいなものですよ。物語ありき、ストーリーありきです。現実のいい加減さ、適当さ、行き当たりばったりさを思い切って無視している、ロマンチシズムです。

・流れのままに流される──意志もなく。弱いからじゃなく、軽いから。

・経験を通じて、人間的に成長したということもない。学習はしたが成長はしなかった。



難民探偵 (100周年書き下ろし)

難民探偵 (100周年書き下ろし)

  • 作者: 西尾 維新
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2009/12/11
  • メディア: 単行本



タグ:西尾維新
nice!(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:

nice! 0

トラックバック 0