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『狼花 新宿鮫9』 [☆☆]

・存在するのは知っている。あたり前にそれをうけいれている自分がいて、だが実際にそのものについて何かを考えようとすると、ほとんど予備知識がないと気づく。

・犯罪の予防に有効な手段はひとつしかない。監視である。そのためにパトロールをこまめにおこない、街頭防犯カメラを設置している。

・ドラッグがからんだ取引のもつれでは、警察の把握していない死者が相当数でていると考えられる。もめる原因が原因なので、痛めつけて半端に生かしておくと、その傷害事件をきっかけに警察が介入し、関係者を根こそぎもっていかれかねないからだ。

・抗争が金を食い、警察に取締りの口実を与えることを、大組織の幹部は知っている。縄張り争いのケンカは、無駄な犠牲を増やすばかりだ。兵糧攻めをして、我慢比べにもちこめば、小組織はいずれ崩壊する。

・暴力団の勢力は経済力なのだ。資金が回転しなくなれば、社員が会社を辞めるように、組員も組織を離れていく。

・腕時計のコピーを見分けるのが一番やさしい。0.1グラム単位で重量をはかれば、本物と偽物のちがいはすぐ明らかになる。セラーも、本物より10グラム近くも軽いロレックスのゴールドを、本物とはいいはれない。

・自分のことをよく喋る人間は信用しない。特にお金や力を自慢する奴は。たとえいっていることが本当でも、どこか信じられない。

・失くしたのではないのだ。ある、と思っていたものが幻想にすぎなかったのだと気づいたにすぎない。

・アメリカ政府、特にCIAは両方の勢力に対し支援活動をおこなう。これは振子がどちらに振れてもその国に対する影響力を失わないための保険である。

・大事にされる、いうんは愛や。たとえほんのちょっとでもいっぱいでも、愛は愛や。

・してもらって惚れるんは打算や。したくなるのが愛なんや。そして、すればするほど愛は大きくなる。けどな、妙なもんで、大きなればなるほど、独占欲は薄れていく。

・基本的にクスリをやる奴に利口はいない。夢がない、未来がない、生きていても楽しいことのない奴が、最後の楽しみで手をだすのがクスリだ。

・すきま的な犯罪ビジネスはむしろ成立しにくい。表社会の大企業と同じく、大組織は下請けの子会社にいたるまですべてを系列化して利潤を他者に分け与えないシステムを作り上げるからだ。

・こういうときは、まず行動しろ。質問はあとだ、といわれています。

・理解することと、その通り行動することは別だと思います。

・世界のどこにも信用できる組織は存在しなかった。信用できる人間はいても、それは今日に限ったことで、明日はその人間は殺されるか、裏切っているかもしれず、その人間にとっての私もまた同様の存在だった。

・あまり思いだしたくもなく、また忘れようと決めて忘れてしまった経験もある。ただ教訓は残った。

・国家も含め、あらゆる組識は信用ならない。

・人を殺すのに他人を使えば、弱みをひとつ作ることになる。その弱みを弱みでなくするために、さらに人殺しをくり返す者は多い。

・安い媚びは売らないでしょうから、つかまえるとすれば大物だろう。

・野心がなければ努力はつづけられない。

・いかなる職業、立場の人間であろうと、「今あるこの場所」に立つために重ねてきた努力や忍耐を自覚する者には、共通の連帯感のような感情が存在する。

・過去の努力を、今活かすためにここにいる。

・こういう男たちには、目的以外何もない。家族も法も無関係だ。目的を遂行する。それだけにしか存在理由を見つけられない人生を送っている。

・親がかりの大学生どもが頭に血が昇ると、そこいらのチンピラよりタチの悪い狂犬になって、よってたかってひとりをリンチする。

・人は、一生にいく度か、大きく運命がかわる瞬間を経験する。それは、あとであのときがそうだったと気づくこともあれば、この瞬間がそうだとはっきり自覚する場合もある。

・やはりこの男は一級のプロなのだ。私情や欲望に流されない。蛇頭でも、女に体を求めたり、チップをよこせという奴は二級の連中だった。そういうのに限って偽のパスポートに不備があったり、警察や入管に目をつけられている。

・仲間を傷つけられれば、当然憤りも覚える。それが年齢も近く、片方は学生という身分での「遊び」で、片方は職務として対峙するとなればなおさらだ。

・やくざになる人間は、地道な努力を蔑み、「太く短い」生きかたで大金を得られる職業としてそれを選択する。勉強するのが嫌いであったり、たとえ頭がよくても、世の中から差別される環境の中で育ったりした者が多い。

・本当にケンカが必要なときにはためらわず、とことん、いく。だがそれ以外はなるべくおとなしくしている。それが一番や。

・どれほど見えすいた言葉であっても、自供しているなら裁判ではそれが証拠として採用される。

・警察官という職業は、人間の最も人間的な面を直視する。それは情や憎しみの汚泥に首までつかる仕事だ。その頂点に立つキャリアが、非人間的なまでのエリートであることはある意味、必要な要素なのだと、現場の人間は感じるときがある。人間の最も人間的な面と向きあう仕事の統率者であるからこそ、情に流されない非人間的なエリートがあたるのがふさわしいのかもしれない、と。

・政治やマスコミに対して、彼らは答えを用意しなければならない。これまで通りのやり方を粛々とつづけるといったのでは、批判はかわせない。

・殺されるのは負けだ。生きのびた人間だけが、次のチャンスを待つことができる。



狼花  新宿鮫IX (新宿鮫 (9))

狼花 新宿鮫IX (新宿鮫 (9))

  • 作者: 大沢 在昌
  • 出版社/メーカー: 光文社
  • 発売日: 2006/09/21
  • メディア: 単行本



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