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『米中冷戦の始まりを知らない日本人』 [☆☆]

・台湾を攻撃するいわば小手調べとして尖閣列島と南沙諸島を占拠することは、軍事常識からみて十分に考えられることである。

・どこの国の軍人も同じだが、勝った軍隊の指導者たちは、その勝利に足を取られて、新しく変わることができない。いまアメリカの将軍たちがラムズフェルド国防長官とブッシュ大統領に反旗を翻しはじめたのも、そうした古い戦略思考から抜けられないからである。

・もともとアメリカの大統領の最も重要な仕事は戦争である。大統領はコマンダー・イン・チーフ、すなわちアメリカ全軍の最高司令官なのである。大統領選になると候補者の軍歴が問題になるのはそのためである。

・アメリカでは大企業の社長は担当者にすべて任せ、完全な回答を求める。つまり仕事をそっくり与えて答えを担当者から受け取るのである。このMBA、つまり企業専門家のやり方をブッシュ大統領はアメリカ政府の運用に取り込んだ。国防問題に当てはめれば、ブッシュ大統領は問題をすべてラムズフェルド国防長官に与えて、完全な回答を期待していることになる。

・ペンタゴンというと、戦争好きのウォーモンガーの集団に見えるかもしれないが、実際に戦争を知る軍人たちは殆どいつも戦争には反対なのである。

・シンガポールは政治的に統制された遅れたシステムの国であり、しかも華僑たちの強い影響力のせいで中国の支配下にある。シンガポールは東南アジアでは最も中国に近い国なのである。

・中国海軍の潜水艦は遠くへ航行する能力がない。そのうえやたらと騒々しい音を立てるため秘密行動には適していない。アメリカ海軍を攻撃するほどの力を持っていないが、潜水艦に大量の爆薬を積み込み、海中でアメリカの空母が近づいてくるところを潜んで待つという戦略をとっている。

・中国海軍は、まるでイラクの自爆テロリストが車に乗ってアメリカ軍を持ち伏せするように、潜水艦に爆薬を載せて海中に潜んでいる。緊急事態になればアメリカの空母機動艦隊を待ち伏せて自爆テロ活動を行なおうとしている。

・中国が軍事力でアジア全体を独占してしまった後では、取り返すことは難しい。世界的な軍事常識から言えば、相手が軍事力でその場所を占領する前に、自分たちで軍事力を展開する必要がある。

・空母の甲板で仕事をする水兵たちは、仕事によって色の違うシャツを着用する。八色ある。黄色のシャツは、飛行機を誘導する係である。白いシャツは安全に関係する仕事にあたっている。機体を最終的にチェックする係である。機体の足もとにかがみ込んで、最後のシグナルを出す係は、あざやかな緑色のシャツを着ている。カタパルトの上に機体をのせるのも彼らの役目である。紫のシャツは燃料を補給する係である。地味な茶色のシャツを着ているのは、一つ一つの航空機を見張っている係で、プレーン・キャプテンと呼ばれている。ブルーのシャツは、航空機を決められた位置に置く係で、航空機を移動するトラクターの運転手でもある。真っ赤なシャツは、爆弾と兵器を扱う係である。大小さまざまな爆弾と兵器を航空機に積み込む。シルバー・シャツは、航空機の墜落や火災を扱う係の色である。

・空軍の戦闘機は爆弾を満載した場合、ほぼ二、三百キロを飛んで攻撃することができるが、敵地の上空に十分ないし二十分滞在しただけですぐ引きかえしてこなければならない。台湾や朝鮮半島で戦争が起きた場合、日本や沖縄の基地から攻撃に出かけたとしても目的地上空で滞在できる時間はわずかで、すぐ引き上げなければならない。経済的な効果がきわめて悪いといわなければならない。

・一発の核兵器が抑止力として働き、アメリカからの核攻撃をくい止めることができるという時代は終わった。つまり抑止力戦略そのものが過去の遺物になった。

・中国が数年にわたって経済を拡大しつづけているのは、アメリカが安い人民元を認めているからだ。中国経済の拡大によってアメリカと世界の経済を拡大し、中国が手にする貿易黒字で国を民主化することを期待して安い人民元を認めているのである。

・中国はいまや経済的に大国になったと考え、その次の段階として政治的大国になろうという野心を抱いている。

・英語に「ネバー・セイ・ネバー」という表現がある。「絶対に起きない」とは「絶対に」言ってはならない、という意味である。

・中国は世界第二の経済大国で、すでにGDPは五兆ドルを超えているのに、国民一人当たりの所得は世界でも非常に貧しい国々と同じレベルに留まっている。

・2005年中国で起きた騒乱や暴動の数は五万七千回にのぼる。しかも暴動を鎮圧する警察や軍隊は騒ぎに加わった人々を殺傷することをためらわない。毛沢東時代からの「人名の損害をかえりみない」伝統がつづいているのである。

・「和諧世界」とは、同一でない文明、同一でない文化、同一でない発展方式、同一でない国家制度を持つ国や民族どうしが、互いに尊重し合いながら発展をめざす中国の世界観である。

・アメリカがこれから行なおうとしているアジアにおけるトランスフォーメーション、アメリカ軍の配備転換は、基本的にはアメリカ軍をアメリカ本土とハワイに引き上げるという戦略である。

・アメリカ軍のグアムや沖縄の基地は、日本で見かける無人の交番のようなものだ。犯罪に対する政治的な警戒だ。グアムや沖縄はアメリカにとって戦略的に必要な場所ではなく、中国の軍事力拡大に対する政治的な牽制にすぎないのである。

・日本には、内政干渉そのものの「靖国神社の参拝をやめろ」という理不尽な圧力にさえ屈してしまう政治家が大勢いる。

・米ソの厳しいイデオロギーの対立が終わり、いまや単純に国家の利益が対立する時代が始まっている。



米中冷戦の始まりを知らない日本人

米中冷戦の始まりを知らない日本人

  • 作者: 日高 義樹
  • 出版社/メーカー: 徳間書店
  • 発売日: 2006/06
  • メディア: 単行本



タグ:日高義樹
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