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『文学少女と神に臨む作家』 [☆☆]

・怒るってコトは、自信ないってコトっすよね。

・責任感がなかった。子供だった。本当になにも見えていない、逃げるしかない、愚かで無力な子供だったのだ。

・あとは才能が天辺に押し上げてくれる。誰の批難も、くだらない感傷も届かない、輝かしい高みにね。そこから凡人を見おろすような――そんな生き方を望んでみても、いいじゃないすか?

・傷つくことも傷つけることもない、ほのぼのとした日常を、愛しく思う。

・そこに男女の肉欲は存在しない。そんな愚かで不確かで、わずらわしいもの、二人には必要ない。

・コンソメスープは、シンプルな料理に思えるけど、透きとおった液体の中に、様々な食材が混ざりあい、溶けあっている。それがなにかを全部言い当てるのは、とても難しい。それは、人の心に似ていると思う。見えるようで見えない……。本人すら説明のつかない想いを、抱くこともある。

・状況は、新聞や雑誌の記事で知ることができる。けど、人の心までは推し量れない。

・よく、「白い結婚」だと言っていた。男女の交わりをもたない結婚を、そういう風に言うんだ。実際には夫婦間の交渉がない夫婦を指す言葉なんだが。

・勝手に憧れて、勝手に失望して、勝手に憎悪する。ある日突然、手のひらを返したように冷淡になる。

・わたしが迷惑がっているのもかまわず、べたべたまとわりついて、周りに親友だってアピールして。その実、あなたは、いつも独りでいたわたしと、自分だけが親しく話せるのだという優越感に浸りたかっただけ。

・呼びもしないのに火葬場まで来て、わたしを抱きしめて泣きながら、口元が嬉しそうにゆるんでいたことに、わたしが気づかなかったとでも思っていたの? あのときも、あなたは、不幸な親友を勇気づける自分に酔っていたわね。

・愛する人を永遠に自分のものにするためには、自分か相手を殺すしかないじゃないすか。

“文学少女”と神に臨む作家 上 (ファミ通文庫)

“文学少女”と神に臨む作家 上 (ファミ通文庫)

  • 作者: 野村 美月
  • 出版社/メーカー: エンターブレイン
  • 発売日: 2008/04/28
  • メディア: 文庫




・弱みを見せても、この人は同情なんかしない。逆に、見下げはてるだけだ。

・けれど飢えは、創作には大切だ。もし、太宰が満たされ幸福だったら『人間失格』を書いたろうか? エリーゼとの悲恋なしに『舞姫』は生まれたろうか? 父親との相克なしに、志賀直哉は『暗夜行路』を書きえたろうか?

・二人とも、目的のためには手段を選ばず、常識も良心も平然と無視してのけるところがそっくりだ。だから、あんなにお互いを嫌っているのかもしれない。反面、似た者同士なだけに、わかりあえる部分も多いはずだ。

・罪悪感のないところが、始末におえない。

・彼女が居なくなってからというもの、私は生きているようなふりをしているだけだ。

・ただ、時間が過ぎるのを待てばいい。痛みや哀しみを忘れる、それが一番有効な方法だ。それ以外に、もうどうしようもない……。

・氷のようにひややかな声だった。絶対的上位に存在する相手に対する本能的な恐怖に、背筋がさーっと冷たくなり、体がすくんだ。

・みんなが、自分よりも相手のことを思いやっていたのに。なのに、どうして誰も幸せになれなかったのかしら……。

・時間はお金と同じくらい大切です。

・でも……深夜バスも、ロマンチックで素敵なのよ……。明かりは床の非常灯だけで……窓の外を光が流れてゆくの……。まるで星の中を走っているみたいなの……。

・残されたジョバンニと、去ってゆくカムパネルラ。決めるのは、いつも去るほうなのだ。残されたものが、いくら泣いても願っても、無駄なのだ。

・聞き分けのいい女なんて、後回しにされたあげく、他の女に乗り換えられるのがオチよ。

・まさか、これくらいで許したりしないわよね。そんな甘い態度をとったら、絶対、同じことをやるわよ。もともとナメられてるのよ、あなた。

・先輩の痛みも苦しみも、知ろうとしなかった。自分だけ被害者になったつもりで逃げていた。

・別れ道で迷ったとき、麻貴先輩のような人に強く命じてもらえたら、迷わずそちらへ進むことができるかもしれない。死にかけているとき、「生きろ」と、命じられたら、立ち上がることができるかもしれない。

・真実は、人を傷つける。救いなんて、どこにもない。

・生きているかぎり変化は訪れる。歯を食いしばり、覚悟を決めて、一歩踏み出せば――。

・物語の読み方は、ひとつではない。登場人物の数だけ、別の物語がある。――だから、いろんな登場人物の気持ちになって、物語を読み返してみるのよ。そうすると、新しい物語が生まれるから。

・心を硬く閉ざし、言葉を封じ込めている。そうやって、相手が疲れ果て、絶望し、去ってゆくのを待っている。

・子供の頃、周りの人たちから聞いた内容が頭に残っていて、それを前世からの記憶のように感じてしまっただけかもしれない。

・醜い現実におののいて……心の闇を見つめることができず、壊れてしまう。幸せな夢の中へ逃げ込んでしまう。

・醜い現実があるのなら、美しい現実も存在しているんです。物語は醜いだけじゃない。

・ねぇ、未来は明るく素晴らしいと、お目出度い想像をしてみて!

・きっと、あの人は、口に出して語ることのできない人だから。好きな人と一緒にいても、微笑むことさえ難しくて、書くことでしか、伝えられない人だから。

“文学少女” と神に臨む作家 下 (ファミ通文庫)

“文学少女” と神に臨む作家 下 (ファミ通文庫)

  • 作者: 野村 美月
  • 出版社/メーカー: エンターブレイン
  • 発売日: 2008/08/30
  • メディア: 文庫



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