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『適者生存』 [☆☆]

・「氷はミネラル・ウォーターやないからね」と、ウェイターが出した氷の入っている飲み物には手を付けなかったのである。確かにアメリカで水道水を飲むのは厳禁である。

・アメリカに渡った当初、日本のプロ野球解説者の間では、「長谷川には無理だろう」という意見が大半だった。そしてセットアップのピッチャーとして成功を収めると、「メジャーのレベルが下がった」と自分たちが納得できるように考えを修正したが、長谷川が4年目に10勝9セーブを上げるに及んで、手のひらを返したように長谷川への賞賛が始まった。

・結局、野茂君のメジャー行きの経緯を省みると、ゴネた方が得をする、という印象もあった。キッチリ手順を踏もうとした自分がそんをしているのではないか、という疑念も拭い去れなかった。

・困ったことに右打者の料理法が見つけられないでいた。これは日本に本当の意味での右の強打者が少なかったからだと思う。当時も今も、助っ人といえば左打者が日本ではまだまだ多い。だから、効果的な右打者攻略法を知らないまま、メジャーに渡ったのである。

・とにかく日本は一生懸命教えるのが、長所であり、短所でもある。欠点というのは、自分で考える選手がそれによって少なくなってしまうからだ。

・交渉というのは対等に話し合うべきものであって、お互いに言いくるめるための場所ではないはずである。

・特に日本のスポーツ新聞の場合は、毎日必ず紙面が用意されていて、それを埋めていかなければならない。しかし、アメリカの一般紙のスポーツセクションは、何もネタがない日は、2枚でおしまい、という日もある。つまり、埋める必要がないから、余分な質問はしない。

・アメリカは「埋める」必要がない分、もし記者の人が取材に来たら、かなりの確率で記事になる。

・「もう少し、ゆっくり話してくれ」と頼むよりは、「別の言いまわしをしてくれ」と頼んだ方が、分かりやすい話し方をしてくれる。

・メンタルトレーニングの知識では、人間の気持ちの状態は、高いレベルから順に、次の4つの段階に分類することができる。(1)無。(2)恐れ。(3)怒り。(4)無気力。この4つの状態を、人間は往ったり来たりするのである。

・メジャーに入って1年目に成績がいい場合は、この「恐怖」が強力な動機付けになるからだ。逆に「2年目のジンクス」があるのは、1年を通して活躍すると、環境に順応し恐れを持つことが難しくなるからである。そうなると選手のモチベーションは「恐れ」から一段低い「怒り」に変わってしまう。

・2年目になると、恐れがなくなり、同じように打たれても「何でできないんだろう」と思うようになり、それは自分への怒りとなって返ってくる。

・「無気力」、つまりやる気のない状態も選手にとっては存在する。例えば、ベテラン選手がレギュラーシーズンに大した活躍を見せないのに、プレイオフに入ってから急に活躍することがある。これはメジャーで何年も生活した選手はレギュラーシーズン中には、緊張感を持てず、モチベーションの源が怒りと無気力の間の状態になってしまうからである。しかし大舞台になると、彼らは突如、恐れを持つことができる。しかも、もともと技術をともなった選手たちだから、レギュラーシーズンに大した活躍を見せなかった選手でも、往年の活躍を見せるのである。

・120%を出そうとする人間より、常に80%の力を出せる人間が勝つ。



適者生存―長谷川滋利メジャーリーグへの挑戦 1997‐2000

適者生存―長谷川滋利メジャーリーグへの挑戦 1997‐2000

  • 作者: 長谷川 滋利
  • 出版社/メーカー: ぴあ
  • 発売日: 2000/11
  • メディア: 単行本



タグ:長谷川滋利
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