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『物語るあなた絵描くわたし』 [☆☆]

・読者の反応で一番理不尽だなと思うのは、「この話はおもしろかった。もう一回こういう話を書いてください」という要望。「それはもう書きました」と言いたいですね。

・主人公の設定を高校生の女の子にしてしまうと、その子が媚びないでどうやっていられるかっていったら、すごい優等生か超美人か、なんかとんでもないことを付けていかなきゃいけないでしょう。ごく普通の成績で、顔もたいしたことない女の子は、いったいどうやって媚びないで生きていけるの!って考えちゃう。で、解決策がない。

・私は、戦中から戦後にかけて父親・母親がもってきた、競争に勝つ社会、人よりものをもっている社会の価値観というのが本当に嫌いなんです。

・この父が「善意でおこなったことは、すべて感謝してしかるべき」と信じ込んでいるようなところがあって、「いや、迷惑する人もいるんじゃない?」と言うと、「そんなことはない」という独善から一歩も出ないんです。

・自分の欲望にあくまで正直だと、ここまでやる。こわいなー。「正直さ」って、美徳のみではないんですね。

・どうも彼らは、初めからマンガというのは絵だと思っていて、それもコマの動きではなく、一点一点の絵を見ている。

・子供の期間が短いということもあるでしょうね。特にラテン系の国ではわりと早く大人になって、ませちゃって、夢みる期間が短いですね。

・児童文学はフランスやイタリア、スペインよりもイギリス、ドイツ、ロシア、北欧のほうが圧倒的におもしろいので、それは子供である期間が長いことと関係があるでしょう。

・マンガの批評のほうは文学的にあるいは心理学的に読むことを盛んにやりますが、日本のマンガ独特のコマ運びを解明するという肝心のことは、まだそんなにやっていない。

・日本の家屋って、お金持ちの家とか貧しい家とかの差じゃないんです。昔の2Kの国鉄住宅はデザイン的にきれいで、庇がちゃんとあって、濡れ縁があって、戦後の高度成長に建てられたような建売住宅は軒並み汚い。

・ヨーロッパの西洋館の基本は左右対称ですが、日本家屋は屋根の配置が非対称、そこにヨーロッパふうを気取って不似合いなアルミサッシの窓をくっつけて、ということをやっている限り、美的な消化はできない。

・まず、作品の感覚が古くなっていく。説教くさく、説明調になっていく……。こうして、いつか消えていく。人は消える。または、残る。変わらなければ残れない。みんな、そうなんでしょうかね。





物語るあなた 絵描くわたし 萩尾望都 対談集 1990年代編

物語るあなた 絵描くわたし 萩尾望都 対談集 1990年代編

  • 作者: 萩尾 望都
  • 出版社/メーカー: 河出書房新社
  • 発売日: 2012/11/30
  • メディア: 単行本



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