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『きみはダイジョブ?』 [☆☆]

・人と自分を比べない。世の平均と自分を比べない。

・どうやらみんな、正義が好きなようだ。それもびっくりするくらい絶対的な正義が好きなのである。

・マスコミはその国の国民を映す鏡だ。受け手の側の程度を、マスコミは忠実に映しているだけだ。

・どうして運動部の顧問やコーチはあんなに偉そうなのか。絶対に反抗してこない相手を一方的に痛めつけるのは、いじめや虐待と何も変わらない。指導者どころか、人として卑しい行為だ。

・暴力をふるう人間はその瞬間、例外なく激情に流され、自分の怒りに酔ってしまう。普通の人間は冷静に人を殴ることなどできない。ましてや決して殴り返してこない相手を、数十発も平手打ちし続けるとなると、嗜虐的な快感に耽っているとしか考えられない。

・怒りの感情をコントロールするために、体罰や暴力に依存してしまっているのだ。

・夏季冬季合わせて、これまで最もたくさんオリンピックを開いた国はアメリカの8回、次いでフランスの5回である。今回の決定で日本も4回目で、単独第3位になる。

・みなさん、自分が使うお金は、必ず自分が支持したいという会社の商品やサービスにあてましょう。資本主義国では、自分の消費行動が政治的信条の宣言になるのだ。

・日本の作家の本はアジアのどの地域でも、間違いなく売れる。日本の文化は上流にある。政治はともかく、文化でも経済でも、まだ日本の魅力は輝いている。

・ほとんどのリア充は、日々のリアルな暮らしだけでなく、ネットや電子書籍の世界でも充実したデジタルライフを送っているのだ。

・情報化と言語化が究極まで進行するこの世界では、言葉の力はそのままタフな時代を生き抜く生存能力につながるのだ。

・CDが売れなくなり、音楽だけでは生活できない音楽家ばかりになってしまった。収入はライブ公演や物販に移った。けれど作家にはライブはない。

・話し合いで済むのは、お互い相手の言うことをきちんと聞けるときだけです。いがみ合いに近い状態では永遠に片がつくものじゃない。

・ほんとの軍人はみな実戦にはひどく慎重なものです。盾の後ろにいる売名好きの政治家や評論家が勇ましいことを言っているだけでしょう。

・センカクはあの岩だらけの島と同じくらい小さな問題でもある。何と比べて小さいのか。近い将来世界のGDPの50パーセントを占める東アジアの未来に比較すれば、はるかに重要度の落ちる小問題なのは、誰の目にも確かである。

・国際会議に行くと小さくなるたぐいの人たちが、急に声高で元気になるのは、見ていて微笑ましいものだ。

・愚かな民意や政策は、はっきりとアジアの未来に有害だ。過度な対外強硬策は、自身の欠如と山積みになった国内問題の裏返しに違いない。その程度の憶測は日本の近現代の歴史を学んだ者なら、誰にでも共有できることだろう。

・橋下徹大阪市長の従軍慰安婦発言もこの心情から生まれているのだろう。日本だけが悪いのではない。若い市長はそう言いたかったのだろう。誰もがやっているけれど、自分だけが見つかって罰せられた。それはフェアじゃないし、運が悪かっただけだ。だが、スピード違反を咎められた人がそう言えば、悔悛の情がないと判断されて当然だろう。

・先進国のほぼすべての人がネットで結ばれる日が来るとは、さすがのSF作家でも思い描けなかったようである。

・石油がもつエネルギーのほとんどは、電力で置き換えられるけれど、ひとつだけ不可能なものがある。航空機を飛ばす爆発的なパワーは、電力では困難だ。自動車産業はエンジンをモーターに積み替えて生き残れるが、航空機産業の未来は厳しい。

・近代西洋というのは巨大なモンスターだ。世界を魔法のように変える暴力な力である。嘘だと思うなら、時間のあるときベートーヴェンの交響曲あるいはニーチェやハイデガーの哲学でも試してみるといい。とんでもない高さと重さを持った山岳がいきなり目の前にあらわれるはずだ。

・リヨンはフランスの第2の都市だが、中央集権的でエリート主義のフランスでは、パリで開催される文化事業でなければ、予算がおりづらいのだとか。

・物乞いに限りなく近い大道芸だ。

・この国は優しいので、物乞いになることは許されないのだ。逆にいえば、雨に打たれながら物乞いをする自由がないともいえる。それは同時に自分の身に引き受ける厳しい自由や責任や思想が育ちにくい国ということにもなる。

・日本の社会が右傾化している。それは隣国に対する敵視蔑視だけでなく、男女交際や恋愛や性の規範にまで、強烈な復古圧力として働いているのだ。

・映画やドラマも世界中の動画サイトを探れば、まずアップされている。違法だが、それが世界中で一般化しているのが現実だ。みんなで渡る赤信号である。

・最小の負担で最大のサービスを求める。商品にわずかな傷でもあれば、相手の人間性まで否定して、徹底的にクレームをつける。それが消費者として、当たり前の態度になったのだ。

・税金が厳しいと文句ばかり言っている。収入に倍する支出を毎年だらだらと垂れ流しながら、誰も根本のところでは責任をとろうとはしない。政治家も、主権者のはずの国民も。

・どんな時代になってもきちんと本を読んでいる人は大丈夫だと思うのです。時代の光と影に心を配りながら、変化を先読みしていく。読む人は強く、読む人は共感する力にすぐれる。



きみはダイジョブ? (日経プレミアシリーズ)

きみはダイジョブ? (日経プレミアシリーズ)

  • 作者: 石田 衣良
  • 出版社/メーカー: 日本経済新聞出版社
  • 発売日: 2013/11/09
  • メディア: 新書



タグ:石田衣良
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