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『日本の気配』 [☆☆]

・オバマ大統領の演説を含む広島訪問について、共同通信社が行なった全国電話世論調査によると、98.0%が「よかった」と回答していた。何がそんなに「よかった」のだろうか。

・98%という異様なまでの肯定には、受け止める側の鈍感さが表出していた。

・強い想いが投影されたレトリックだ、「上手い!」と感嘆し、「日本の政治家もこれくらいスピーチ力がないと」と国際派を気取るツイートがいくつも流れてきたが、強い想いがレトリックではぐらかされてしまったと解釈するのが国際派の気取り方ではないのか。

・物事を断言するのではなく、断言しないために複数のレトリックを積み上げることで、文章としてつなげた時に常に輪郭がぼやけるテキスト作りを心がけていた。

・毎年、「この日だけ震災を思い出すなんて都合が良すぎやしないか」という意見を「この日だけ」見かける。

・あらゆる報道には思惑があり、その思惑に持ち込むために、BGMやナレーションの方向性を定めていく。

・それは、失言ではなく、発言である。失言と言うから、彼らは「真意ではない」などと逃げる。

・彼らの頭には支持基盤を固めるよりも「他の政党よりはマシ」を強める方が、来たる選挙で勝つためには有効だという判断が繰り返されている。

・ワイドショーでは、たとえ政治家がスキャンダルに見舞われても、問うのはスキャンダルそのものではなく、その後の対応である。「対応」によって政治家の価値が決まる。

・「今回、トランプ大統領がカートから降りて、ハグをするのか握手をするのか、そういったところも見どころ」と語る様は、なんだか『テラスハウス』で恋の進展をスタジオから見守る芸能人のようだ。

・学生時代も社会人時代も、質問形式で怒ってくる人が苦手だった。「ねぇ、どうして怒っているかわかる?」というアレだ。このQはどんなAを出そうにもその先に怒りが用意されている。Aが間違っていれば「どうしてそんなこともわからないんだ!」だし、正答であったとしても「どうしてわかっていてそんなことをするの!」である。

・偉人が死した途端に、その功績が絶対化される。小説ならば小説が、楽曲ならば楽曲が、取り急ぎ不朽の名作と化す。

・大物が死すと、翌日の朝刊一面コラムは、誰それの死と取り急ぎ対峙した書き手による、「うまいこと言う」合戦になる。

・普通の人間っていうのはね、普通じゃない人間を裁判するのが趣味なんですよ。

・あなたはどう思う、と聞いているのだから、自分はこう思う、と答えてほしいのだけれど、自分の言説はプロフェッショナルで普遍性を持っているとする、感情をセーブした「オレ」のプレゼンが止まらない。

・物書きが分析屋と予想屋だけになると、「あなたはどう思う?」という問いかけが宙に浮く。



日本の気配

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  • 作者: 武田砂鉄
  • 出版社/メーカー: 晶文社
  • 発売日: 2018/04/24
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)



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