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『追懐のコヨーテ』 [☆☆]

・これまでは多数が必要だったから、多数派に合わせていた。今後は、少数で充分なので、少数派が重んじられるはず。

・「貧乏人は我慢しろということですか?」という反論が必ず来る。答えは、「はい、そのとおりです」だ。

・「金にものをいわせる」のは、それほど悪いことではない。「人種」「性別」「決闘」「学歴」「身分」「権力」などにものをいわせる社会から脱却するために、はるかに平等であり、誰でも努力をすれば手に入れられる「金」の社会になった。

・日本人には森は緑だと認識されている。これは、ヨーロッパでは通用しない。森はブラックだ。それから、海もブラック。太陽も地面もイエローだ。

・日本人の多くが(しかも言葉を操るマスコミ関係の人たちも)論理というものの基本を学んでいない。たとえば、「否定しない」といえば、「肯定する」という意味に取る。

・「考えている」というのも、日本人は重い言葉に受け取る。「そうするつもりだ」と同じ意味だと解釈する。「考えただけじゃん」では済まされない。するしないにかかわらず、その言葉を持ち出しただけで、既に責任を伴うのだ。

・「早く元の生活に戻りたい」と口にしている人は、かなり甘い。今の状態が未来だと思った方が健全だ。

・ネットでサイトや動画を見るときも、役に立ちそうだ、ではなく、面白そうだ、が優先する。

・日本人は、確かに言葉を信仰する気質があるように思える。だが、それは人の口から発せられた声ではなく、文字になった言葉である。

・流暢に話せることは、リーダの資質としてさほど重要ではない。大事なことは、どんな判断をするか、なのである。だから、心に響かなくても良い。そんなパフォーマンスは必要ではない。

・酔っ払ってはいけない、という自制が働かないことが、酔っ払いの最大の欠点といえる。

・「ネタばれ」なしで感想が書けないのは、具体的なことしか考えられないから。

・ものごとを抽象的に考えられず、具体的なことばかりが頭に浮かぶというのは、「馬鹿」の始まりというか、周囲に馬鹿だと認識される要因の一つであり、黙っていればわからないのに、たまに詳しく話したり書いたりすると、具体性に偏った内容で見抜かれてしまう。

・「できること」が目の前に与えられた具体的な事象であるのに対して、「できないこと」は、無限に存在するだろう。考えただけで、自分の「無」を意識せずにはいられなくなるはずだ。

・「新しい」発見も、同じものを何度も見ているからこそ、生まれるのである。

・人間を集めようという商売が多くなりすぎた。マスコミのそうだし、多くの団体や組織が、この方針を自然に持っている。人さえ集めれば金も集められる、という道理だったのだが、その考えがバブルだったと早めに理解した者が、未来で成功するだろう。

・「エクスキューズミー」は、「え、何言ってるの?」か「ちょっと、いい加減にしてほしい」といった意味で使われるし、「アイムソーリィ」は、「お気の毒ですね」と相手を思いやるときに使う方が多い。自分が悪いのではなく、相手に不幸があったことを示すので、「お悔やみを申し上げます」とほぼ同じだ。謝るつもりで使うと誤解される。

・謝るときには、相手に赦免を要求するよりも、自分の非を明確にすることが大事なのだろう。

・「百回も電話をしたのに、一向につながらない」と憤る老人が報道されていた。百回も電話をかけ続けたことの異常さもわからない、ということらしい。そういう人が沢山いるから回線も混雑する。

・マスコミというのは、突き詰めれば「人集め」が目的である。情報を伝えるために存在するように見えるが、その情報に人が寄ってくることが彼らの成果だ。

・信じる者は救われるというが、信じる者が詐欺に掬われるのが最近の傾向である。「消防署の方から来ました」と同じ手口である。

・「もう知っている?」で始まる情報も、怪しい。知っていないと損をする、と思わせたいわけである。

・「勝つ」とか「戦う」といった言葉を使う年代は、自分の古さを自覚しよう。

・ビジネスにおいても、上の人は早めに気づいて、対若者作法を考え直した方が良い。「勝つ」ことに価値を見出さない世代なのだ。みんなで仲良く、平和だったらそれで良いじゃん、というわけである。

・相手がどんな意見を持っていても、その人物に対して、味方か敵か、好きか嫌いかといった評価をしない。


追懐のコヨーテ The cream of the notes 10 (講談社文庫)

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