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『傘のさし方がわからない』 [☆☆]

・車椅子に乗っている母と、知的障害のある弟がいるわが家は、他の家族より「選択肢の少ない生活」をしてきたように思う。行けるお店も、通える学校も、着られる服も、選択肢が少ない。

・フレンドリーに話しかけられるの、別の方向性でこわい。フレンドリーの出どころがわからないから、こわい。

・こんな大都会で「身元も知らないのに距離のつめ方が光の速さ」のやつは、だいたいおかしな人なんです。

・「やたら儲かる話」「やたらお金のかかる話」をされたら、友人であっても距離を取りましょう。友人はお金の話を抜きにしてもつながっていられる存在のことをいいます。

・子供が欲しいものと、大人があげたいものには、マリアナ海溝より深い隔たりがある。

・人間なにがどうなれば、リビングの真ん中で焼き芋を焼いたままコンビニに出かけられるんだ。

・殴ってくる恋人とはすぐに縁を切った方がいいし、自己肯定感を軽率に下げてくる人間とも距離を置いた方がいい。

・いま思うと、ほしかったのは好意というより、嫌われない保証だった。

・わたしはふたりから、とにかくほめられたし、めちゃくちゃ愛されていた。自分に自信を持てた、それは幸せなことだった。だけど、家から一歩外に出たら、誰もほめてくれないというギャップにおそわれる。

・たしかに、自分の誕生日を誰にも祝ってもらえないとしたら寂しい。でもそれ以上に、もし自分に「誕生日を祝ってあげる大切な人」「お祝いさせてくれる人」がいなかったとしたら、もっと寂しい。

・無償の愛こそが「贈与」で、見返りを求めるのが「交換」だ。わたしは他人からもらっていた贈与を、勝手に交換にメタモルフォーゼさせていたということか。

・誰にも、わかられたくない。わかられたら、わたしの歩んできた過去が、ありふれた陳腐なものに成り下がってしまう。気がする。

・人間は希望がないから死ぬんじゃない。死にたくないから希望をつくるんだ。大好きな人たちがいない世界を、それでも生きるだけの価値といえる希望を。

・残念ながら、差別は姿かたちをジワジワ変えて、いまもわたしのすぐそばにいる。世の雑踏に紛れるほどの変身を遂げた差別のことを、わたしは「思い込み」と呼んでいる。

・彼らには「障害者だから、できないだろう」という思い込みがある。仕方がない。彼らの近くに、障害者がたまたまいなかっただけだ。自分で見聞きしたもの以外は、誰かに見聞きに頼って判断するしかないから。

・世の中には、食べようともしないのに、パインバーグを許せない人がいる。

・問題なのは。「わたしはパインバーグを食べようとは思わないし、パインバーグをうまそうに食べている連中の気がしれないわ!きっと頭がおかしいのよ!焼き払え!」っておそいかかってくるやつがいること。

・「書いてないことをポジティブに憶測してほめてくれる人」と「書いてないことをネガティブに憶測して怒ってくる人」がわりといて、自分の書いた140文字に落ち込んだ。



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