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『桜庭一樹読書日記 少年になり、本を買うのだ。』 [☆☆]

・パリの町で夜ごと、青チョークで描かれた円にガラクタがおかれるというイタズラが。しかし、ある夜からガラクタはノドを切られた女の死体に変わった。

・"た"行の棚で、檀ふみと団鬼六がとなりあっているのを、妙に淫靡に感じる。そしてつぎの瞬間、この感性は青すぎるぞ、中学生か、とひっそり反省する。

・ノーベル平和賞受賞者は往々にして殺人者だ。

・夢を追って旅立った少女は、ただの家出少女となってしまった。

・小娘というものは、やたら負けず嫌いな生き物なのである。

・色気がないからといってべつに命に別状はないのに。

・かくて私は、もはやこの少年には矯正の道がないのを知りました。このまま放置するならば、彼は生涯、社会の脅威となるだろう。そうなれば彼はもう生存に適しない少年です。

・いつの時代も、またどの国においても、優秀な「道具」は、抜きんでた機能と意匠の好バランスの上にのみ成立する。

・日本女性の乙女時代の絶頂期は1910年から30年間であり、李香蘭と原節子こそがカリスマ乙女であった。

・防御というものは最大の攻撃でもあって、積極的な防御をされた結果こちらは体勢を崩し、そこを攻められてさらに崩れる。

・わたしは普段、本や映画を選ぶときに、人が薦めるものをなるべく入れるようにしている。自分の選択だけだとどうしてもかたよって、その場所がせばまっていってしまう。

・この世に傑作は存在するが、知らずにその書棚の前をなんども、なんども、フンフン鼻歌を歌いながら通り過ぎてしまうのだ。いつもの書店の棚にも、それらはまだ埋もれているのかもしれない、と思うと、たまらない気持ちになる。

・うじ虫(Maggot)には「奇想」という意味もある。

・痛い目に遭ってからでは、遅すぎることもある。すべてを経験から学ぼうとしていては、生き延びられないだろう。

・家族や隣人には優しく思いやりのある青年が外では凶悪な殺人者になる…こういうケースは今までにも実際にありました。一見矛盾するようですがこのような犯罪者にとって家族や隣人は自己と一体化した「拡大された自己」に過ぎないんです。彼らはその世界から一歩外に出た途端非情な犯罪者に変身する。家族を愛することは自分を愛することと同じ事ですから優しいように見えるだけでそれは本当の優しさや思いやりじゃない。

・ひとつの真相ですべての謎が解ける。それが理想的なサスペンスなんです。

・あらゆる文化には、宦官が必要だ。ぼくたちがそれさ。東洋系アメリカ人は、アメリカの宦官だ。

・ホストクラブで会う人って、初対面じゃないですか。わざわざ出かけていって、お金を払って、初対面の人とあたりさわりのない話題をする苦労の意味が、正直、一欠片もわかりません。

・過疎化が進んでいて、対向車があまり見当たらないので、通るたびに「誰も、いない……。なんだか細菌戦争後の地球みたいだね……」と言ってしまう。

・短編だけどなんだか長編のプロローグみたいだ。まだ読みたい、この人の人生をもっと見たい、と思わせるけれどどの話もすぐ終わってしまう。

・おやじたちがくれたものといったら、つまらない使用人の身分。そんなものを押しつけておきながら、立派なことをした気でいる。おかげで俺たちは依然として奴隷のままだ。



桜庭一樹読書日記―少年になり、本を買うのだ。

桜庭一樹読書日記―少年になり、本を買うのだ。

  • 作者: 桜庭 一樹
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2007/08
  • メディア: 単行本



タグ:桜庭一樹
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