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『王子さまを探す女、お姫さまを待つ男 「自分探し」の落とし穴』 [☆☆]

・ボーダーラインの特徴として、どうしても他人を必要とするということがあげられます。自分というものがしっかりしていませんから、ひとりになるとすぐに分解しそうになってしまうのです。孤独に耐え切れず、常に話し相手や愛情を向ける相手がいなければどうしようもありません。いつも対象を求め、誰かを欲しているのがボーダーラインなのです。

・「鏡よ鏡、鏡さん。世界で一番美しい人はだあれ?」と鏡に問いかけ、「あなたよ」という答えを聞いて安心するというおとぎ話と同じです。そのようにして自己確認するのがボーダーラインの特徴なのです。

・日本では、女性にたいしてしょっちゅう「きれいだよ」「かわいいよ」などと言うのは不自然なことです。ある意味では虚飾の世界と断言してもいいでしょう。

・ボーダーラインの人がそのままで社会的に成功するとすれば、それはほとんど芸術の領域でしかないような気がします。自分の核がないからこそ、そんな自分を簡単に捨てて何かひとつのことに賭けてしまえるのです。

・彼らは自分を卑小化し、強い不満感を抱いています。ところが、不満を持っているということは、逆に言えば彼らの自尊心が高いということを意味します。

・精神的な美しさなどというものは、自分ひとりで感じ取るものだよ。君たちのように、同意し合う連中だけが集まっていること自体弱すぎるということなんだ。

・下世話な世界の中にいて、その中でしっかりと聖なるものを持つことができるというのが、ほんとうの聖なるものと言えるのではないでしょうか。

・今多発している少年犯罪の当事者の多くは、自分は普通の世界では全然目立たない人間だ、自分に存在価値なんかないと感じてとても悩んでいます。その結果、裏の世界でもかまわないから目立ってやろう、そんな動機で犯罪を起こすのです。

・存在価値というものは、日本がまだこんなに豊かでなかったほんの少し前までは、わりと簡単に得られました。なぜならば、いつも「不足」があったからです。

・欲しいものがないという状態は、自分の心の中に空虚がたまっていくことを意味します。目標を見失うのですから当然です。

・誰も直接要求しなくても、本人はそれに従わざるを得ないという間接的な強要が存在するのです。

・事件が発生して少年が捕まったときに、少年の祖父が取材に応じて口にしたことが強烈でした。「うちの子は勉強がよくできるんです」「うちの子はものすごく頭がいいんです」「何千人中の何番でした」 そういう意味合いのことを連発していました。孫の殺人のことを聞かれているのに、そんなことを平気で言うこと自体異様な印象を受けましたが、この事件の問題点がそこに現れていると感じました。

・憎い父や祖父を直接殺せば、それだけで終わってしまいます。しかし、他人を殺せば、あの人は殺人者の子供を持った親であり、おじいちゃんだというレッテルが貼られ、一生消えずに残ります。彼はそれを狙って殺人を犯したのだと思います。

・下級生を殺害目的でバットで殴ったあと、殺人者の母になるのはかわいそうだからと母親まで殺してしまった事件がありました。本音は、彼は自分が下級生を殺したと思っていますから、そんなことを母親に知られたらどんなふうに言われるかと想像すると恐怖にかられ、思わず殺してしまったというのが真相でしょう。

・自分とは、「みずからの分け前」という意味です。つまり、全体があってその一部の分け前を「自分」といっているわけです。ですから、日本人には「全体」がまず先にあるのです。

・甘えとは一対一の世界ではなく、全体に寄り掛かっていたいということです。集団の中に自己を埋没させることです。みんながいる中でそのみんなに甘えたい、つまりみんなでいっしょの概念なのです。

・何かあったとき、矢は全体に飛んではくるが自分には直接飛んでこないから安心だという感じもあります。

・『源氏物語』などを読んでいても、主語がないことに気づかされます。やはり日本人は「みんなでいっしょ」の世界なのです。

・天照大神は、太陽を象徴する女神です。太陽が女神であるという国は、おそらく日本くらいしかないのではないでしょうか。これは、日本が徹底して母性社会だということを表しているのです。

・日本には、天照大神に対応するような男の神さまがいません。女神と同じような力を持つ夫がおらず、いるのは息子なのです。つまり、古代から日本は父親不在の国だったのかもしれません。

・他人を基準に生きていては、生き抜くことなどできません。この国際化社会の時代に、人によく思われたいとか、隣近所に何か言われるなどと言っていたら生きていけません。

・今の日本の若者は他人の価値観に振り回され、自分の考えというものが不足しています。

・江戸幕府が取った鎖国という政策も、変化が怖いから外国とは付き合いたくない、清潔さを保ちたいからよその国のものは持ち込みたくないという完全癖の発想です。

・完全主義の一番大きな問題は、遊び心がないということに尽きます。ということは、創造力がないということと同じです。本来人間は、あることに興味を持って遊んでいるうちに、なにものかを創造するという生き物なのです。

・日本人が好む謙譲の美徳というのもそろそろやめにしましょう。無理をして、わざと自分を卑下するというのは気分的にもいいものではありませんし、無意識に自己評価を落としていきます。

・偏差値なんて、今やなにも意味をなしません。偏差値が高くて社会で活躍している人は、逆に珍しいくらいです。

・いくら一生懸命努力して出世しても、楽しくなければ意味のない人生になってしまいます。

・なぜ人を殺してはいけないのかと言えば、私たちが生きるために生まれてきた生き物だからです。それを殺すということは、私たちが生まれてきた事実を否定することです。

・カール・マルクスは、人間は自分のエネルギーを労働というエネルギーに変えてその結果何かを作り出している。つまり作ったものは自分の一部であり、そのプロセスが自分そのものであると言っています。自己疎外から免れる道は労働であると言っているのです。

・「自分には何の意味もないんだ」と疎外の世界に陥ったときに、そこから免れる道は何かを作ること、すなわち労働することだ。

・この国際化の時代を迎えて東大などといっても、世界レベルではほとんどの人が知りません。中流国の中流大学です。そんなところに入ることで大騒ぎすること自体、こっけいです。

・少年犯罪では、供述の内容が公開されることもありません。情報の公開ということがなされないのです。犯罪を未然に防ぐために必要な、分析や議論をする材料の提供を拒否しているわけです。

・最高学府まで行ったなんて言ったって、おれのような病気になれば、そんなレッテルなど泥にまみれたチラシみたいなもんだ。何の役にも立たない。



王子さまを探す女、お姫さまを待つ男―「自分探し」の落とし穴

王子さまを探す女、お姫さまを待つ男―「自分探し」の落とし穴

  • 作者: 町沢 静夫
  • 出版社/メーカー: 佼成出版社
  • 発売日: 2001/02
  • メディア: 単行本



タグ:町沢静夫
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