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『悩む力』 [☆☆]

・自我というのは自尊心でもあり、エゴでもありますから、自分を主張したい、守りたい、あるいは否定されたくないという気持ちが強く起こります。しかし、他者の方にも同じように自我があって、やはり、主張したい、守りたい、あるいは否定されたくないのです。そう考えると、手も足もでなくなってしまいます。

・自我というものは他者との関係の中でしか成立しないからです。すなわち、人とのつながりの中でしか、「私」というものはありえないのです。

・「国家が成りあがっていく」ということは、その過程で「国家の中に無数の成りあがりを生み出す」ことを意味します。

・時代をゼロから創っていった世代には、「オレたちが頑張ったから、この国は発展したのだ」という満足感のようなものがあります。社会に多少の矛盾が生じても、当事者であるだけにさほど疑問を感じません。しかし、すでにできあがってしまっている時代の中で生まれた者には、そのような充実感はありません。むしろ、世の中の矛盾ばかり目につき、それを創った世代に対して不満を感じます。

・「物知り」「情報通」であることと、「知性」とは別物だと思います。「know」と「think」は違うのです。

・情報の引き出しでも、自らの血肉となっているような情報が入っている引き出しならよいのですが、服のポケットにたくさんの紙片を詰め込んでいるいるような知性。

・宗教というのは「個人が信じるもの」ではなく、「個人が所属している共同体が信じているもの」だったのです。

・人がいちばんつらいのは、「自分は見捨てれられている」「誰からも顧みられていない」という思いではないでしょうか。誰からも顧みられなければ、社会の中に存在していないのと同じことになってしまうのです。

・サービス業とは、難しく言うと「社会関係の再生産」にかかわる労働であり、要するに人間関係をメインとするコミュニケーション・ワークスです。「肉体労働」に対して「情動労働」と呼べるものです。

・サービス業の大きな特徴として、「どこまで」という制限がないことがあります。だから、中には、果てしなくのめりこんで、ときには消耗しつくして自殺する人もいるといいます。

・愛というのは、ある個人とある個人の間に展開される「絶えざるパフォーマンスの所産」の謂なのであって、どちらかが何かの働きかけをし、相手がそれに応えようとする限り、そのときそのときで愛は成立しているのだし。その意欲がある限り、愛は続いているのです。

・人は相当の苦悩にも耐える力を持っているが、意味の喪失には耐えられない。

・「人は一人では生きられない」とよく言います。自我を保持していくためには、やはり他者とのつながりが必要なのです。相互承認の中でしか、人は生きられません。相互承認によってしか、自我はありえないのです。

・若者は戦争で戦い、老人は政治を行う。

・同じように「恐くない」でも、子供のように「知らないから恐くない」ではなく、知ったうえでの、心構えのようなものを持ったうえでの「恐くない」であるべきだということです。

・政治も経済も知の世界もいっぱいいっぱいになっています。重箱の隅をつついても、小競り合いを続けても、閉塞感は打開されないでしょう。



悩む力 (集英社新書 444C)

悩む力 (集英社新書 444C)

  • 作者: 姜 尚中
  • 出版社/メーカー: 集英社
  • 発売日: 2008/05/16
  • メディア: 新書



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