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『蝦蟇倉市事件1』 [☆☆]

・死人になんて、何もできやしねえんだ。訴えることも。復讐することも。改心させることも。

・きっと犯人は手袋をしていたんでしょう。まあ、いまどき素手で人を殺す馬鹿もいませんが。

・前歯が不自然に細いのは、工業用の溶剤を悪用した結果か。だとすると、頭の中も少しばかり溶けているに違いない。

・追慕の気持ちを赤の他人が共有しようとしていることに対して遺族が見せる反応は、大きく二つに分けられる。──快か、不快か。

・悩みを抱えて、その答えなんてどこにもないことにげんなりしながら、日々を生きている。

・人の相談事を垣間見るのは、贅沢な娯楽ですよ。

・相談屋のいいところはですね、基本的には、正解を導く必要はない、という点です。探偵や便利屋と違い、比較的、無責任なものです。ある和菓子屋さんが、大黒様の置物を取り戻したい、と相談に来ましたが、私にはそれが誰によって奪われたのか、言い当てることはできないんです。あくまでも、助言止まりです。かわりに福助でも置いたらどうですか、とかね、そういったものです。

・あなたもそこで謝っておく必要はあります。一方的に責任を回避するのではなく、自分の非と相手の非を半々くらいに表現し、相殺させてしまうんですよ。

・ある結果が出て、取りまとめる直前に、細かい追加条件を付け足せば、たいがい呑んでもらえるんですよ。

・人によっては携帯電話を奪われることは友人を失うことと同義で、苦痛のあまり悶絶する。

・仕事を間違いなく遂行する、というのはプロの基本です。時にはいい加減なプロもいますが、それは仕事というよりは、趣味のようなものですよ。

・交通事故の場合は、どんなに偉い人でも、いつ、加害者の側になるか分かりませんから、刑を重くするのにためらいがあるのかもしれません。

・素人はわからないの一言で済むからいいよな。

・考えてみれば、刑務所というのは思索には打ってつけの場所ではないかね? 娯楽に心奪われることもなく、静かで規則正しい生活を送りながら、あり余る時間を思索に費やすことができるのだから。

・このルールは、まず実戦ありきだ。ルールのためのルールじゃない。実戦を想定した動きのできない奴は油断していたということだ。

・アングルというのはプロレス用語で、展開を盛り上げるための「仕込み」のことだ。それを微妙に知らない振りをして自虐的に楽しむのもプロレスの醍醐味だったりする。奥が深い。



蝦蟇倉市事件1 (ミステリ・フロンティア)

蝦蟇倉市事件1 (ミステリ・フロンティア)

  • 作者: 道尾 秀介
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2010/01/27
  • メディア: 単行本



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