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『つながり 社会的ネットワークの驚くべき力』 [☆☆]

・社会的影響は知っている人のところで止まるわけではないのだ。私たちが友人に影響を与え、その友人が自分の友人に影響を与えるとすれば、私たちの行動は一度も会ったことのない人に影響する可能性がある。

・たいていの場合、道徳とは個人ではなく集団に備わっているものである。

・「友の友は友」とか「敵の敵は友」などとよく言われるが、これと同じように、敵の友は敵なのである。つまり、人間はつながっているということだ。

・アメリカでは、すべての殺人事件の75%に以前からの知り合いが、しかも往々にして親しい知り合いが関わっているのだ。自分の命を奪うのは誰かを知りたければ、周囲を見渡してみるといい。

・一般に、100人の歩兵中隊は、緊密に連携する10人のメンバーからなる10の分隊で構成される。こうすれば、各兵士は所属する分隊のメンバーを全員知ることができる。

・社会的ネットワークにおける影響の広がりは、いわば「三次の影響ルール」に従うことがわかっている。友人(一次)、友人の友人(二次)、さらに友人の友人の友人(三次)にまで影響を及ぼすケースが多い。

・私たちは三次以内の関係にある友人からは影響を受けるが、その先に連なる人びとからは影響を受けないのが普通である。

・人びとは、数秒から数週間の時間枠で、他人が示す感情の状態に「感化」されるのだ。人びとの感情や気分は、交流する相手の感情の状態に影響されるのである。

・表情が人間の気分に有益な影響を及ぼすことが挙げられる。たとえば、電話交換手は電話の相手から見えないにもかかわらず、話すときに笑顔をつくるよう教育される。

・感情が人から人へ広がり、多くの人に影響が及ぶ現象を、現在では集団心因性疾患(MPI)と呼んでいる。集団ヒステリーという詩的で古めかしい表現はあまり使われない。

・医師をはじめとする専門家は、当然ながら、病気の発生は精神的な理由によると発表するのを嫌がる。そうした診断を下せば、患者に恥をかかせたり怒りを買ったりする恐れがあるからだ。

・においによって呼び起こされる記憶は、言葉での説明によるものより強い感情を引き起こすことも明らかになっている。言葉は強力である。しかし、なじみ深いかすかな香りには、激しい感情とともに心を過去へ引き戻す力がある。

・第一に、ネットワーク内では不幸な人は不幸な人同士で、幸福な人は幸福な人同士で群れをつくっている。第二に、不幸な人はネットワークの周縁に位置するようだ。つまり、社会関係の連鎖の末端、ネットワークの外れに存在する傾向が高いのである。

・直接つながっている人(一次の隔たりにある人)が幸福だと、本人も約15%幸福になるらしい。しかも、幸福の広がりはそこで止まらない。二次の隔たりのある人(友人の友人)に対する幸福の効果は約10%、三次の隔たりのある人(友人の友人の友人)に対する効果は約6%あるのだ。四次の隔たりまでいくと効果は消滅する。

・ある人が幸福な友人を持つと、その人が幸福になる可能性は約9%増大する。不幸な友人を持った場合は、幸福になる可能性が約7%減少する。

・自分のネットワークを探って何が手に入るかは、どこを見て、何を求めているかによってある程度決まるのである。

・人びとは「ダメージ」を元通りにしなければならないが、そのためには親しくならざるをえないのである。

・人びとは自分の絶対的な立場よりも、世間での相対的な立場を気にする場合が多い。

・人間とはうらやむ存在である。他人が持っているものを欲しがり、他人が欲しがるものを欲しがる。

・人は、自分がいくら稼いでいるかとか、どれくらい消費しているかではなく、知り合いとくらべていくら稼ぎ、どれくらい消費しているかによって、自分の成功の度合いを判断するのである。

・私たちは小さな池の大きな魚になりたいのであり、それより大きな魚になれてもクジラがうようよいる大海を泳ぐのは嫌なのである。

・ジェイムズに一番の親友は誰かとたずねると、「ニコラス」という答えが返ってくる。ところが、つづいてニコラスに同じ質問をしてみると、ジェイムズ以外の名前が返ってくる。これは、ニコラスとジェイムズが友人だとしても、おそらくジェイムズはニコラスから、自分が与える以上の影響を受けているということなのだろう。

・誰かが食べたり走ったりしているのを見ると、自分自身がそうしている場合に活動するのと同じ脳の部分が活動するのだ。おかげで、将来同じ行動が現れやすくなる。

・人類学者は地域の習慣を表す言葉を持っている。「文化」という言葉だ。

・腰痛はある意味で文化結合症候群とみなされていいだろう。文化結合症候群とは、ある社会では病気として認識されているが他の社会ではそうでないため、特定の社会環境に住む人だけがかかる病気のことである。

・私たちはみな自分の頭で考えることができるのに、心が群衆から離れられず、ときにとんでもない事態に巻き込まれてしまう。

・社会的ネットワークのせいで事態がさらに悪化する恐れがあるのは、最初にパニックに陥った人が、他の多くの人に影響を及ぼす可能性があるからだ。群衆の知恵はあっというまに愚行に変わってしまうことがあるのだ。

・餌を漁るカモメのように、市場はある価格帯付近でしばらく足踏みし、それから新たな価格帯へと一気に動くのである。

・人間には、他人が将来買いたがるものに投資しているのだという自信が必要なこともある。つまり、市場は本質的に主観で動くのだ。

・他人の選択を世界を理解する効率的な手段とみなす傾向が私たちにはある。そのせいで、当初は本質的にランダムな差異にすぎなかったものが、社会的ネットワークを通じて拡大してしまうことがある。

・強い絆が集団内の人びとを結びつけるとすれば、弱い絆は集団同士を結びつけてより大きな共同体をつくりだす。

・社会的に離れている人たちは信頼しにくいかもしれないが、彼らが持っている情報やコネは本質的にずっと重要である可能性が高い。私たちは自分ではそれを手に入れられないからだ。

・メディチ家はそれまでつながりのなかった多くの集団を結びつけた。結果として、これがフィレンツェを寡頭支配していた旧勢力を最終的に打ち破ることにつながったのだ。

・ネットユーザーが公式の選挙広告をオンラインで視聴した時間は、何と1450万時間にものぼった。ちなみに、テレビの広告枠を同じ時間だけ買えば4700億ドルかかったはずである。

・実質的には、人間を捕って食べる動物はいないため、唯一の大きな脅威は他の人間である。もしも人間が他人を大して必要としないなら、他人を避ける方がよほど理にかなっている。

・世の中には自分のことしか考えない人もいる。だが、他人の幸せと利害を考慮する人の方が多数派である。

・「世界衝突論」なる理論も生み出した。それは「男性は私的人間関係(友人)を恋愛関係(恋人)から切り離すべきである。[恋人が自分の友人と友達なることによって]二つの世界が接触すると、どちらの世界も粉々に砕けてしまう」という理論である。

・神経科学者たちの発見によれば、人間は脳の大半を構成するデフォルト・ステイト・ネットワークを使って社会的相互間系を観察しており、現代政治における連携や対立について考えるため、この領域の利用法をさらに広げているようにさえ見えるという。

・神をネットワーク上の節点に見立てれば、大集団をなす人びとが結びつくことになる。人びとは他人との間にある社会的絆を感じるうえに、一人ひとりのあいだには二次の隔たりしかない。神とのつながりを感じる人は、他人とのつながりを感じるものだ。誰もが神を通じて「友人の友人」だからである。

・社会的に孤立した人びとは、周囲の世界を擬人化する傾向がある。実験によって孤独感を味わうよう仕向けられた人は、変性意識状態に陥り、「小道具、グレーハウンド、神」などを擬人化してそれとのつながりを感じるようになることがわかった。

・fMRIを使った研究から、宗教的感情に浸っているときや変性意識状態にあるときは、時空に関する自己認識をつかさどる大脳の部分が機能しないことがわかっている。そのせいで「万物は一体である」という感覚が生まれ、他人との位置関係を把握するための生来の厳格な枠組みが踏み越えられてしまうのかもしれない。要するに、脳がだまされて、社会的境界は存在しないとか、誰もが他の誰かとつながっているなどと信じ込んでしまうのだ。

・社会的観点から見れば、言語は集団の結束を保つ手段として発達してきたように思える。感情と同じように、言語は同じ種の他のメンバーに関する社会的情報を知り、操るカギである。この事実を顕著に示すのが、ほとんどの会話には知的な内容があまりないという点だ。

・言語のおかげで、人を分類し、個人ではなく類型としてかかわり合うことが容易になる。たとえば、すべての警察官を知らなくても、型通りのやり方で彼らと交流できる。次に、ある類型の人びとにどう接すればいいかを、他の人に教えられるようになる。このように、初めての相手と接する際、その人個人について予備知識がなくても、どう接すればいいかがわかるのだ。

・電話やファックスと同様に、オンラインの社会的ネットワークは、自分の他に大勢の人が利用するようにならなければ役に立たないのだ。

・「ウィキリティー」と名づけ、「ある程度の人たちがある考え方に賛同すれば、それが真実になってしまうという現実」と定義している。

・つながりを持つことには代償が伴う。多くの人とつながれば多くの人を見つけられるが、一方で、多くの人に見つけられることにもなる。そのすべてが善意の人とは限らないし、すべてのつながりが有益だとも限らない。

・サイトを通じ、妄想癖のある人びとは、心に安らぎと落ち着きをもたらす貴重な経験をする。つまり、他人に理解してもらえるという誰もが望む経験である。こうしたサイトでなら、自分の頭がおかしいのではないと安心させてくれる大勢の人に出会えるのだ。

・餌を与えなければ、遅かれ早かれ妄想は消えるか、自然に小さくなっていきます。重要なのは、妄想には強化の反復が必要だということです。このケースではインターネットがまさにその機会を提供しているのである。

・社会的ネットワークには一種の知性が見られ、それが個々のメンバーの知性を高めたり補ったりする。

・光や空気よりさらに見えにくい公共財もある。たとえば、市民としての義務だ。

・公共財はつくりだすのも維持するのも難しい。公共財を保護するインセンティブは誰にもないように思えることが多い。したがって公共財は、私利私欲で動く個人の行動の副産物として生じるのが普通だ。たとえば、海運会社や港湾当局がみずからの船舶の安全のために灯台を建設すると、結果的にすべての船舶の安全を守ることになる。



つながり 社会的ネットワークの驚くべき力

つながり 社会的ネットワークの驚くべき力

  • 作者: ニコラス・A・クリスタキス
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2010/07/22
  • メディア: 単行本



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