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『日本は世界5位の農業大国 大嘘だらけの食料自給率』 [☆☆]

・国内の農業生産額はおよそ8兆円。これは世界5位、先進国に限れば米国に次ぐ2位である。

・他産業が発展し、人々が豊かになることで農業は継続的に発展できるのだ。食うや食わずの生活を送っている国民が大半を占める時代では、主食となるコメや一部の野菜以外は売れない。

・農家数減少の実態をより正確にいえば、変化する顧客の需要、高度化する品質要求に対応できた少数の農業経営者が生き残り、できなかった多数の農家が廃業、もしくはより魅力的な産業に移動したということである。

・自給率が示す数字と一般的な感覚がかけ離れているのは、農水省が意図的に自給率を低く見せて、国民に食に対する危機感を抱かせようとしているからである。

・窮乏する農家、飢える国民のイメージを演出し続けなければならないほど、農水省の果たすべき仕事がなくなってきている。

・民間による農業の経営、マーケットが成熟し、政府・官僚主導の指導農政が終わりを迎えている証である。

・政治家は政局に乗じて自給率向上を謳い、メディアはその実効性を何ら検証せず、「自給率向上!」のオウム返しである。

・カロリーベースの指標は生活実感に即していない。たとえばスーパーに並ぶ野菜を見てもらいたい。自給率が41パーセントだというのなら、半分以上が外国産ということになる。しかし、実際は大半が国産品だ。

・ほとんどの国民が、「自給率が上がる=国内生産量が増える」ものだと解釈しているのではないか。ところが実際は、国産が増えようが減ろうがほとんど関係ない。

・発展途上国は軒並み自給率が高いが、それは海外から食料を買うお金がないからだ。貧困にあえぎ。栄養失調に苦しむ国民が多いにもかかわらず、自給率だけは高い。

・なぜ農水省はこの数値を大々的に公表しないのか。それは明らかに、日本の生産額ベースの自給率がカロリーベースと比べて高いためだ。

・世界第二位の経済大国が20年以上も前から発表している自給率が、経済指標として本当に役立つのなら、GDPや景気動向指数のように各国が競い合って採用する。インチキだから通用していないだけ。

・国が上げようと思えば上げられる、というこの考え方自体が、統制・計画経済の発想丸出しである。国民に逐次発表し一喜一憂させるところなど、まるで戦時中の大本営発表ではないか。

・自由貿易の恩恵を受けて発展してきた日本はいまだ、コメに778パーセント、こんにゃくいもには1706パーセントなどと、非常識な超高関税を課している。

・コメには生産調整、いわゆる減反政策が行われている。「コメは自給率100パーセントなので、ほかの作物を作りましょう」という話だ。もしも、トヨタ自動車が国内需要を満たす台数の自動車を作ったら、生産を終了するだろうか。次のステップとして海外に向けて売っていく。農産物も100パーセントを超えたら終わりではなく、そこからもっと食べてもらおうという競争や工夫が生まれるのが自然である。その意欲をわざわざ税金を殺いでいるのだ。

・エンゲル係数は、およそ23パーセント。これは他の先進国に比べて頭一つ抜けて高い。この数字は、高関税に守られたコメと、政府の価格統制下にある小麦の値段が高いことが大きな要因である。

・価格が高騰したとはいえ、輸入トウモロコシは1キログラム約30円。対する国産の飼料米は、コストだけで6倍超の200円弱もし、その差額が補助金で埋められる。

・「やはり国産の牛肉は美味しい」などと舌鼓を打ちながら我々が食べている肉は、大半が輸入飼料をエサにしている。

・補助金なしでは成り立たない事業にいくら出しても、それは「死に金」以外の何ものでもない。

・「国産小麦はパスタさえろくに作れない代物。外国産の半値でも買いたくない」というのが、小麦を扱う業者の共通認識である。

・2007年の国産小麦の単収は、1ヘクタール当たり3.2トン。これは英国の6トンに遠く及ばないのみならず、サウジアラビアよりも1.2トン少なく、ジンバブエの半分しかない。

・日本で小麦を生産する際の平均的なコストは、1ヘクタールで約60万円だが、できた小麦は6万円にしかならない。民主党は、この差額分、約54万円の赤字を丸々補償するというのである。

・現在の補助金や所得補償制度では、「もらわないと損」の心理で、必要のない人にまで多額の補助金が支給されていく。

・なぜ、農水省は耕作放棄地を問題にするのか。それは農水省の仕事を増やし、存在意義を世間に示すためである。

・2000年から2008年までの国際小麦価格と日本における外国産小麦価格を比較すると、日本の価格は国際価格より2、3倍も割高だ。つまり、日本では一貫して「国際的な穀物価格高騰」とは別次元の高価格が維持されていることになる。

・国際社会に通用する食料安保の考え方は、「国民が健康な生活を送るための最低限の栄養を備えているか」「貧困層が買える価格で供給できているか」「不慮の災害時でも食料を安全に供給できるか」の三点である。「将来食料が足りなくなるかもしれない。どうしよう」という漠然とした不安を前提に議論している先進国は、日本だけだ。

・昔は生きていくために、コメやイモ類などカロリーの高いものを大量に消費していたが、現在はイチゴやキウイフルーツをデザートとして、楽しむようになった。しかし、果物や野菜は総じてカロリーが低いため、どれだけ国産が増えてもなかなか自給率向上にはつながらない。

・10アール当たり、トマトが約200万~300万円、イチゴが400万~500万円、バラが600万~700万円。コメの10万円と比較すれば、面積当たりの付加価値の高さが分かるだろう。

・売り上げ100万円以下(利益ではない)の農家が120万戸も存在するが、彼らは国内生産額にわずか5パーセントしか貢献していない。

・問題は、大多数の趣味的農家や兼業農家が日本農業を代表しているかのような、偽情報を配信する政府やメディアの姿勢にある。

・日本人の農家が地元タイで作ったという「Made by Japanese」(日本人産)が評価されている。

・輸入依存の「依存」という言葉も、供給者論理で情緒的な意味合いが強い。輸入国が一方的に輸出国に「依存」しているようにとらえられがちだが、裏を返せば輸出国は輸入国からの収入に大きく「依存」していることとなる。

・日本のような食品加工技術が発達した先進国では、原料を国際価格で輸入できれば、加工産業が競争力を持てる。

・国際的な品質評価に対して日本のお菓子の輸出が少ないのは、それらの原料が国際価格で買えないからである。

・そもそもバイオ燃料用は、長年低価格に悩んできた穀物業界の新たな市場として、生産者や関連産業が値段を上げるために開発した新商品だ。



日本は世界5位の農業大国 大嘘だらけの食料自給率 (講談社プラスアルファ新書)

日本は世界5位の農業大国 大嘘だらけの食料自給率 (講談社プラスアルファ新書)

  • 作者: 浅川 芳裕
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2010/02/19
  • メディア: 新書



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