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『人間はなぜ戦争をするのか 日本人のための戦争設計学・序説』 [☆☆]

・戦争を「道徳」のレベルで考えてはいけない。

・日本人は、戦争を「道徳」で考え、「個人の良心のレベル」で答えを出そうとする。これは、ほとんど宗教である。

・不幸にして日本の場合、戦争の歴史は真実を離れて単なる道徳の教科書になっている。「反省」と「謝罪」と「不戦の決意」が結論で、なぜそうなるかについてまで考えることは禁じられている。そんなことを考える人は、それだけでたちまち反省が足りないとされる。

・攻める側の意図が何であれ、相手国の支配者はいつも「侵略」だと言うに違いないが、しかし民衆の中には「解放」だと喜ぶ人が一部かまたは大部分存在するというのである。そこで、日頃からのシンパ作りの親善外交や内部攪乱の政治工作が大事になってくる。

・弱いほうを応援するというのは、意外に思われる読者もいるかもしれないが、これは、弱いほうについて戦争を長引かせるためである。強いほうにつけば、戦争はすぐに終わってしまう。そうすれば、強いほうはますます強くなって、今度は自分に向かってくるかもしれない。

・大学では高邁な国際関係論は教えても、国際関係の実態は教えていない。新聞も書かないし、テレビも言わない。政府も国民に説明していない。しかし、現実に国際紛争が起こってから知るのでは遅すぎる。

・国際関係において、相手の批判に対して自分の言い分を言わないことは、すなわち国益の損失である。まして謝ることは、自殺行為に等しい。

・日本人は、原爆と水爆の区別も知らないで核論議をしているのだから、北朝鮮から見ればこんなに脅かしやすい相手はいない。

・不眠不休で戦いつづけ、次から次へと理解不可能なことが起こる。腹は減るし眠いし、周りで人は死ぬ。理性的な判断ができる状態ではなかった。残るのは美学である。子供の時から教育された「軍人はかくあるべし」という美学である。

・不景気の直前まで経済は順風満帆で社会は何の問題もないように見えるのである。

・普通に考えれば階級が上の人は年長で、その分だけ頭が固いし、古い。それから、義理人情やしがらみや打算が増える。

・野党第一党だった社会党は、かつて「自衛隊にはお嫁に行きません」というポスターを貼ったが、それでも黙々と訓練をしてきた自衛隊は、世界最高の紳士である。侮辱されても黙っていられるのは、最高に知的である証明である。

・軍人は胸にたくさん勲章を飾っているが、その大部分は従軍記章といって単なる参加賞である。

・夜襲というのは本来、どんなに多くても100人くらいでやるものだ。それ以上でやると夜間だから兵士がサボってしまう。世界中、どこでも当然のことである。

・夜襲では、いくら活躍しても誰も分かってくれないから、まず英雄が出ない。それどころか落ちこぼれがたくさん出るというのが、世界の常識である。

・戦後、高級軍人の回顧録に「胸中を察してほしかった」というような記述がある。つまり、本当に総攻撃をすると思って指令を出していなかった。部隊の側も理解してくれるだろうと思っていたのに、突撃してしまったというのである。

・アメリカの戦記も、日本兵は最後になると全員そろってバンザイ突撃をして、機関銃の前にわれ遅れじと進んできてくれるから、残敵掃討の手間が省けてありがたいと書いている。

・降伏とは指揮官同士の話合いで決定する。指揮官の命を帯びた軍使が白旗を揚げて、条件交渉をして降参する。ハーグ陸戦規定はそうなっている。個人投降の規定はない。個人投降は殺してもいい。個人投降を必ずしも受け取る必要はない。

・軍務に励めという理由付けに、故郷や家門の名誉を思え、という文章が出てくる。それまでの教えでは国のため天皇のためだったが、それでは兵隊が動かなくなったので、地域社会や血縁社会の縛りを持ち出したのである。

・17世紀、18世紀のイギリス庶民のレジャーは、動物をいじめ殺すことだった。その原因は階級社会だと思う。自分より下がいないから、動物をいじめる。休日に集まって、広場に動物を一匹つないで、みんなでいじめ殺すのが最大のレジャーだった。

・インドを支配して、その富を得てから初めて、イギリスにジェントルマンという階級ができて、イギリス人は穏やかになった。自分がいちばん下だと思っている時は凶暴だった。

・イギリスはもっと悪いことをしているのに絶対に謝らない。絶対に謝らない国に対しては謝れと言う声がなくなってしまうのは不思議である。なぜ、日本にだけ謝れという「アジアの声」があるのかといえば、日本がその要求に応えるからだ。

・日本はもともと平和国家だから、戦争は特殊な状況として捉えられている。平和が長く続いたおかげで政治と戦争の連続性は道徳的に否定され、それがそのまま結論になって、それ以上は考えないという人ばかりになってしまった。

・戦争が終わって、「日本人は残虐だった」とずいぶん言われたが、それは戦争を設計しなかったからだ。戦争はやりたくないと思っているから、いざ始まると自暴自棄の戦い方をする。

・アメリカが第一次世界大戦に参戦したのは、財界がイギリスとフランスに、たくさんお金を貸していたからである。ドイツには貸していない。イギリスとフランスが負けると、アメリカの財界は貸していた金を取りはぐれることになる。その要望が、参戦を決めた本音の理由だ。

・アメリカは世界一の債務国で、一兆ドルの借金があるがアメリカに金を貸している国は、すべてアメリカの応援をする。

・日本に金を借りている国は、すべて日本の敵に回る。日本から借金をしている国は、日本が滅びてくれれば丸儲けだからだ。債権大国になったことを喜んでいる場合ではない、という戦争論からの認識が欠けている。

・もしも、大東亜戦争の前に日本がアメリカから派手に借金をしていれば、逆に保護してもらえたかもしれない。実際は、逆に預金していたので日本の財産は凍結され、敗戦後の講和条約では没収されてしまったのである。

・戦後教育を受けた人は、「日本は侵略した」と日教組の先生に叩きこまれている。そんな学校で優秀だとされた人がエリートになり、日本社会のヒエラルキーの上にいるから、日本人の多くが、戦争とは正義と邪悪が戦うものだと思っている。



人間はなぜ戦争をするのか―日本人のための戦争設計学・序説

人間はなぜ戦争をするのか―日本人のための戦争設計学・序説

  • 作者: 日下 公人
  • 出版社/メーカー: クレスト社
  • 発売日: 1996/06
  • メディア: 単行本



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