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『自爆する若者たち 人口学が警告する驚愕の未来』 [☆☆☆]

・「ユース・バルジ」を強いて訳せば「過剰なまでに多い若者世代」とでもなるだろうか。

・高度経済成長の原動力となったパワーの源は何だったか。端的に言うなら、「居場所探し」であろう。相続権を持たない次男坊、三男坊らは、自らの居場所を自らの力で見つけなくてはならなかったのだ。

・暴力を引き起こすのは貧困でもなければ、宗教や民族・種族間の反目でもない。人口爆発によって生じる若者たちの、つまりユーズ・バルジ世代の「ポスト寄越せ」運動、それに国家が対処しきれなくなったとき、テロとなり、ジェノサイドとなり、内戦となって現れるのだ。

・先進国が必要とするのは優秀な人材であって、生き延びるために働き口を求めて押し寄せる「難民」ではない。

・ユース・バルジを育ててきた国は、それにより強大な軍備人口を擁している。そこでは40~44歳の男性1000人につき、3000人以上の0~4歳の男の子が生まれ育っている。一方、0~4歳の少年が同800人以下の場合は「軍備人口の降伏状態」にあるとされ、800から1400人ならば「軍備人口の中立状態」にある。

・第三世界の第2子から第4子までの子供はそこそこ栄養もよく教育も受けている。が、国外への移住がかなわない場合、彼らは故国の不安定要因となる。野心に見合うだけの社会的地位が用意されないからだ。そのような国は100以上に上る。

・戦略家から見れば、「女子」は当人の軍事的な働きよりも、やがて何人もの戦士の産みの親となりうるという意味で脅威であり、男の戦士1人が1組の母子を相手に戦っておいたほうが戦闘上有利であるとの計算があるのである。

・戦略家はまた、第一世界の男子がいずれも唯一の息子かまったくの一人っ子であり、そのため生き延びられるだろうかとの不安が先に立って軍事的動員に応じきれていない面があるとして、その点では低開発国のほうが有利であると見る。

・第三世界の国々は、次男ないし四男のような、故国で必要とされる場をどこにも持たない若者からなる大軍団を戦火のなかに送り出すことができ、それは彼らの眼には英雄になるまたとないチャンスと映る。

・貧困や飢えからテロリストが生まれるのではない。パンはせがめばもらえる。殺人を犯すのはステータスと権力に目がくらんでのことだ。

・2050年以降、西側諸国だけでなく世界の大部分の国は、高齢者の面倒を見る若い労働者をどう調達するかの問題をかかえることになる。

・歴史を上手に掴まえれば失敗することはほとんどない。「ようやく」出番のまわってきた復讐に役立つような事柄をそこから引いてくれば、大部数が見こめる。かつて1万人にしか関わりのなかったことが、今は10億人を憎しみで満たすことができる。

・労働者階級に大いに指導力を発揮する前衛部隊にはなっても、決してその階級の一員にはなるまいと心に決めていた。

・タリバンによって強引に推し進められた、女性に対する専門教育および労働の禁止にしても、女性を将来の勝利に貢献させるための産む機械に仕立てることが戦士にとって優先事項だからなのだが、周囲からの糾弾の声が問題にしているのは、あくまでアンチフェミニズムの行き過ぎというものだ。

・その国自体はユース・バルジを抱えていないのだが、戦闘状態にある少数民族とか国外の敵がちょうどユーズ・バルジになっている場合である。

・時折、お手上げ状態だったものが、ふと、うまく整理のつくことがある。目の前のとは別の、同じく解決できないと見なされている同時期の謎を、併せて考察の対象にしてみるときだ。とりわけしがいのあるのが、各々の専門家が互いにその問題や研究成果を交換しないときである。

・経済活動のベースとなるのは、資本でも市場でもない。所有権である。

・所有権に基礎を置く社会は、数で勝る民族を凌駕することも可能だろう。なぜなら、所有権は金を生み出すために抵当権を設定したり、金を借りるために信用貸しで担保に入れたりできるからである。

・所有権のない社会は金を、つまり利子の負担がかかる負債をもたず、だからこそいつまでも取り立てていうほどの成長がないのである。

・国の純然たる占有権原――王室の宝玉、王宮、オペラハウス、塵芥処理施設、学校などを始めとするあらゆる国家の占有物――がたくさんあればあるほど、担保に入れられるものは減り、そのために金を生み出す機会も減ることになる。

・金は利息を付けることで生み出されるものなので、債務者による需要を発生させる

・宗教がさらなる暴力を引き起こす可能性をもつようになるには、それ以前に、何ものかのために人を殺すのをいとわなかったり自分が死んでもいいと思ったりする人間がまず存在し、その上で、ほかにこれといった選択肢がなかったからという状況がなくてはならないだろう。

・韓国の強力な経済と、改良を重ねていく北朝鮮の大量殺戮兵器、その双方を備えた7000万の統一国家の可能性を夢見ることが抗いがたいものであることは明らかだ。そして、そうなった暁には朝鮮はもはやアメリカを必要としない。核に関しては中国と肩を並べ、昔からのにっくき隣国日本を抜き去って、はるか先を行く。

・ヨーロッパはアメリカより50万多い200万の軍隊を有しているが、実際に動員可能なのはそのうちのほんの「一部」だ。師団が遠方に速やかに移動するために必要な大型輸送機は、アメリカの250機に対しヨーロッパは11機である。

・イスラエルとの和平が実現したり、あるいはイスラエルの殲滅が現実のものとなったりしたら、己のポストを求めて戦う若いパレスチナ人は、互いに抹殺しあうだけになってしまうかもしれない。

・世界の金の約70パーセントが依然として土地所有権で担保保証されて生み出され、その一方で発展途上国は自国の土地のせいぜい10パーセントぐらいしかそういう所有権として使えてないのであれば、困窮はもとより収入における極端な違いが出るのは当然である。

・外から大量に来てほしいと世界に向けて発信しておきながら、国境で聞かれる生の声は「おまえらじゃない!」というものだ。

・これまでにジェノサイドに適用できる国際刑法は数多く生まれているものの、その執行後はジェノサイドで得をした者も再び人権に護られることとなる。



自爆する若者たち―人口学が警告する驚愕の未来 (新潮選書)

自爆する若者たち―人口学が警告する驚愕の未来 (新潮選書)

  • 作者: グナル ハインゾーン
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2008/12
  • メディア: 単行本



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