『あなたのための物語』 [☆☆]
・人間の世界は、まわりの環境を意志に従わせるように、どんどん便利になる。だが、その便利さも、人間の意思決定ができない状態に陥れば穴が開く。
・できないことが溜まりすぎると、人間は考えることすらやめて、動物のようにただ息をつくようになる。
・無料であることより時間の方が大切だと悟った時、小説を読むのをやめた。
・どんな物語よりも刺激的な、現実の最前線。
・時代はどんなに便利になっても、貧しい家での暮らしは50年前とそう変わらなかった。
・科学が不治の病をほとんどなくしてしまったが、病院が人間の死に場所であることは変わらない。
・顧客となる一般ユーザーたちの、「かくありたい」という欲望をかなえることが、真に莫大な需要を生む。
・都市のランドマークは、経済的な理由から新しいものができてゆく。見た目を変える経済効果を期待して、ビルの外装も新しくなった。ただ都市の動脈である道路の位置は、百年前から変わらない。
・人間文化は、言語をはじめとした様々な記号によって支えられている。記号の使用に適した能力を持っているから、人間はそれを使いこなせる。
・資本主義の社会では、経済的需要以外で街の景観は変わらない。特に、すでにインフラがひととおり揃っている場所での入れ替わりは遅い。潰え去るべき古いものも、すべて誰かしらの資産だからだ。変化は時代ではなく所有者の事情が起こす。
・下から這い上がってくる者を蹴落としたい欲求は、現実に存在します。ビジネス向けの需要とは、そういう欲求に支えられているでしょう。
・ひとりになったのではなく自由になっただけだと思わねば、この状況に負けてしまいそうだった。
・家は貧乏なのに、百年前の人よりは便利に暮らしていると寝言のように唱える人だった。
・<お役に立てますか>、それが出発点だ。<彼>が機械であり道具である証明だ。
・横着な子だよ。一度で伝わらないなら、何回でも真心をこめればいいんじゃないか。
・結果として見えてきたのは、恐怖する人間が自分勝手になり、自己の保全を最上位に置くようになることでした。恐怖する人間からは外界が消失して、第一基準が自分自身になります。それは、自己愛の最も深い陶酔と極めて似通っていると思えるのです。
・人間の尊厳のボーダーラインをどこにとれば正しいかなんてわからないんだから、機能の高さを目指すべきよ。
・製品も、広義の生存競争を戦っている。ユーザーに使われ続けている間だけ生きているのだと考えれば、製品の淘汰は人間のそれより容赦がない。
・1万年前と同じように、人間はただの動物だ。肉体がよいコンディションにある間だけ、人間になれるのだ。生活がどこまで変わろうと、基盤は肉体であって、精神も意志も知性も「体調のよいときの添え物」だ。
・イメージは穴だらけなものであり、実現性の細部を詰めるまではただの夢だ。
・戦争は狂気だ。狂気の中でなら彼女ひとりの死くらい笑い話にできる気がした。
・人間は、情報化された外界を管理する特権的な主体ではない。むしろ情報の方が、動物であり肉体であるヒトに人間性を与えている。ヒトは学ぶことで人間になる動物だからだ。
・物語は「好きか嫌いか」で価値を振り分けられる情報だからです。「好き」だけしかないことは可能性としてあり得ないため、物語を作るものは、自然と「嫌い」という評価を受けることになります。
・人間はみずからを満足させる物語を要求します。人間は決まった役割を与えられていないため、動機をもり立てるために物語を利用するのです。
・人間を、おのおのの動機に動かされて外界を摂取する情報集積体だと思うと、愉快だった。
・なぜ祈りの言葉が短く簡潔なのかもう知っていた。死の苦痛の中で、長い祈りなど唱えられないからだ。
・どこをスタートラインにとっても、いつからスタートしても、豊かに生きられる可能性はある。ただし、その可能性を選ぶには何かを捨てねばならない。
・ひとつひとつのできごとに、つながりはないわ。続いて起こっているから物語性を感じるだけよ。
・まるでディズニーだった。そして暗黒世界とは、ディズニー映画のしゃべる豚や馬が自然に人間に仕える残酷であり、ごちそうを食べられない楽しげに踊る皿やフォークの管理社会だ。
・喪失の前に人は無力だ。失われたのがかけがえのないものなら、無力感はさらに際立つ。
・人間が社会から剥がれることは簡単だ。入院患者が簡単に社会の中で存在感を失うように、接触が失われればつながりは弱化する。
・死ぬまでに何がしたいかは考えてきた。幸運にもある程度達成できた。だが、実際にどう死ぬかを考えてはこなかった。
・自分を甘やかして、その先に何があるっていうの。死ぬまでの時間を有効に使えなかったら、結局、最後に後悔することになるのはあなたよ。
・欲しがっているのは何千年も前と同じ古いものなのに、宣伝や報道で消費を誘導してコストを下げてでも提供するなんて、資源の無駄よ。大量生産の長所を出すにしても、無駄が多すぎるわ。
・文化にただ乗りして、権利までよこせって言っても、社会の合意はまず得られないわ。
・できないことが溜まりすぎると、人間は考えることすらやめて、動物のようにただ息をつくようになる。
・無料であることより時間の方が大切だと悟った時、小説を読むのをやめた。
・どんな物語よりも刺激的な、現実の最前線。
・時代はどんなに便利になっても、貧しい家での暮らしは50年前とそう変わらなかった。
・科学が不治の病をほとんどなくしてしまったが、病院が人間の死に場所であることは変わらない。
・顧客となる一般ユーザーたちの、「かくありたい」という欲望をかなえることが、真に莫大な需要を生む。
・都市のランドマークは、経済的な理由から新しいものができてゆく。見た目を変える経済効果を期待して、ビルの外装も新しくなった。ただ都市の動脈である道路の位置は、百年前から変わらない。
・人間文化は、言語をはじめとした様々な記号によって支えられている。記号の使用に適した能力を持っているから、人間はそれを使いこなせる。
・資本主義の社会では、経済的需要以外で街の景観は変わらない。特に、すでにインフラがひととおり揃っている場所での入れ替わりは遅い。潰え去るべき古いものも、すべて誰かしらの資産だからだ。変化は時代ではなく所有者の事情が起こす。
・下から這い上がってくる者を蹴落としたい欲求は、現実に存在します。ビジネス向けの需要とは、そういう欲求に支えられているでしょう。
・ひとりになったのではなく自由になっただけだと思わねば、この状況に負けてしまいそうだった。
・家は貧乏なのに、百年前の人よりは便利に暮らしていると寝言のように唱える人だった。
・<お役に立てますか>、それが出発点だ。<彼>が機械であり道具である証明だ。
・横着な子だよ。一度で伝わらないなら、何回でも真心をこめればいいんじゃないか。
・結果として見えてきたのは、恐怖する人間が自分勝手になり、自己の保全を最上位に置くようになることでした。恐怖する人間からは外界が消失して、第一基準が自分自身になります。それは、自己愛の最も深い陶酔と極めて似通っていると思えるのです。
・人間の尊厳のボーダーラインをどこにとれば正しいかなんてわからないんだから、機能の高さを目指すべきよ。
・製品も、広義の生存競争を戦っている。ユーザーに使われ続けている間だけ生きているのだと考えれば、製品の淘汰は人間のそれより容赦がない。
・1万年前と同じように、人間はただの動物だ。肉体がよいコンディションにある間だけ、人間になれるのだ。生活がどこまで変わろうと、基盤は肉体であって、精神も意志も知性も「体調のよいときの添え物」だ。
・イメージは穴だらけなものであり、実現性の細部を詰めるまではただの夢だ。
・戦争は狂気だ。狂気の中でなら彼女ひとりの死くらい笑い話にできる気がした。
・人間は、情報化された外界を管理する特権的な主体ではない。むしろ情報の方が、動物であり肉体であるヒトに人間性を与えている。ヒトは学ぶことで人間になる動物だからだ。
・物語は「好きか嫌いか」で価値を振り分けられる情報だからです。「好き」だけしかないことは可能性としてあり得ないため、物語を作るものは、自然と「嫌い」という評価を受けることになります。
・人間はみずからを満足させる物語を要求します。人間は決まった役割を与えられていないため、動機をもり立てるために物語を利用するのです。
・人間を、おのおのの動機に動かされて外界を摂取する情報集積体だと思うと、愉快だった。
・なぜ祈りの言葉が短く簡潔なのかもう知っていた。死の苦痛の中で、長い祈りなど唱えられないからだ。
・どこをスタートラインにとっても、いつからスタートしても、豊かに生きられる可能性はある。ただし、その可能性を選ぶには何かを捨てねばならない。
・ひとつひとつのできごとに、つながりはないわ。続いて起こっているから物語性を感じるだけよ。
・まるでディズニーだった。そして暗黒世界とは、ディズニー映画のしゃべる豚や馬が自然に人間に仕える残酷であり、ごちそうを食べられない楽しげに踊る皿やフォークの管理社会だ。
・喪失の前に人は無力だ。失われたのがかけがえのないものなら、無力感はさらに際立つ。
・人間が社会から剥がれることは簡単だ。入院患者が簡単に社会の中で存在感を失うように、接触が失われればつながりは弱化する。
・死ぬまでに何がしたいかは考えてきた。幸運にもある程度達成できた。だが、実際にどう死ぬかを考えてはこなかった。
・自分を甘やかして、その先に何があるっていうの。死ぬまでの時間を有効に使えなかったら、結局、最後に後悔することになるのはあなたよ。
・欲しがっているのは何千年も前と同じ古いものなのに、宣伝や報道で消費を誘導してコストを下げてでも提供するなんて、資源の無駄よ。大量生産の長所を出すにしても、無駄が多すぎるわ。
・文化にただ乗りして、権利までよこせって言っても、社会の合意はまず得られないわ。
あなたのための物語 (ハヤカワSFシリーズ・Jコレクション)
- 作者: 長谷 敏司
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2009/08
- メディア: 単行本
タグ:長谷敏司