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『13歳のハローワーク』 [☆☆]

・楽ではないが止めようとは思わないし、それを奪われるのは困るというのが、その人にぴったりの仕事というのは、誰にでもあるのです。

・平均寿命は、おじいさんやおばあさんが長生きをするようになるからという理由だけではなく、赤ん坊や幼児の死亡率が下がって、初めて延びるんです。

・勉強していい学校へ行き、いい会社に入っても安心なんかできないのに、どうして教師や親がそういうことを言うのでしょう。それは、多くの教師や親が、どう生きればいいのかを知らないからです。勉強していい学校へ行き、いい会社に入るという生き方がすべてだったので、その他の生き方がわからないのです。

・自分に向いた仕事は決して辛いものではありませんし、そんな仕事も、それが自分に向いたものであれば案外面白いのです。

・あるモノを、原産地から、それを欲しがる人が大勢いるところへ運ぶと利益が生じる。

・シマウマは成長して歳を取るにしたがって、ひどく気が荒くなり、また人に噛みついたら決して離さないという性格を持っている。それがシマウマを家畜にできなかった理由だ。

・あるプロジェクトについて、その資金を誰が出していて、誰がそれを受け取っているのか、ということがわかると、そのプロジェクトの性格がだいたいわかる。

・いったん給料をもらってから税金を払うのではなく、最初から税を引かれて給料をもらうというやり方は、実は戦費のための税金を取りやすくしようと戦争中に始まったもので、その制度が今も残っているのだ。

・誰もが歌手になれるわけではない。自ら望んで歌手になる人よりも、周囲がそのすばらしい声に気づいて、歌手になることをすすめることが多い。

・ほとんどの邦楽家は弟子をとって教えることで生計を立てる。

・画家にとって、もっとも大切なことは、絵を描き続けることである。

・絵本は長く売れ続けることが多く、1年に1000冊ほどが出版されており、市場はしっかりある。

・問題は、できるかできないかではない。やるかやらないかだ。

・服役囚でも、入院患者でも、死刑囚でも、犯罪者でも、引きこもりでも、ホームレスでもできる仕事は作家しかない。

・作家の条件とはただ1つ、社会に対し、あるいは特定の誰かに対し、伝える必要と価値のある情報を持っているかどうかだ。

・今の日本には幼児から老人まで国民すべてが口ずさめるような歌がない。国民に共通した悲しみや喜びなくなったからだ。

・フリーランスのライターの数はかなり多い。参入するのが非常に簡単なのもこの職業の特徴。多くの仕事があり、しかも専門性やノウハウをあまり必要としない仕事が多いからで、その意味ではフリーターに似ているかもしれない。

・口喧嘩や言い争いでは誰にも負けなかった。論理で相手を負かすわけではなく、絶対に折れないので、相手が折れるしかないのだ。

・人間が文字を読む速度は1秒間に4文字程度といわれている。

・俳優は訓練がいるし、脚本家は哲学と文才が不可欠だし、カメラマン経験があってカメラを扱えなくてはならないし、プロデューサーには資金と人望と信頼が要るけど、監督は、何もできない人でもやれるんだよ。

・テレビでは、沈黙が、つまり、視聴者の想像力を起こしてしまうことがもっとも嫌われる。視聴者をどこまでもどこまでも受動的にするもの、それがテレビだからだ。

・現代の劇団員のなかには、単に無意味な苦労をしているだけなのに、それを充実感だと思い違いをしている若者も少なくない。

・人形の操り方には、人形の上から糸を用いて操るマリオネットと、人形の下から手を入れて操る「差し上げ使い」がある。

・自分がカメラマンに向いているかどうかを試す有効な方法が1つある。それは常にカメラを持っていても平気か、飽きないか、ということだ。カメラマンを目指そうとする人は、一日中カメラを首から下げて、しかもそれを1カ月ほど続けることができるか、試してみるのもいいかもしれない。

・アフォーダンスという認知心理学では、入力されたすべての信号・情報が脳の中枢で処理され、反応するための命令が中枢から出力されるという知覚モデルに疑問をなげかける。私たちは、外界・環境からの信号と「交渉」しながら、そのつど柔軟に対応しているというのだ。

・海外で学び、語学を習得して、その気になればいつでも海外で生きていけるという人が、結局は日本国内でも充実して有利に生きるのではないか、というようなコンセンサス・共通認識ができつつある。

・閉鎖的な場所で、同じような考え方・価値観の人間だけに囲まれて暮らしていると早く老ける。

・わたしたちはファッションで自己を主張したり、自分が属する集団を示したりする。つまり、ファッションはコミュニケーションの手段の1つになっている。

・社会が豊かになると、衣服は単に寒さをしのいだり、制服として機能するだけではなく、コミュニケーションの手段という性格を持つようになる。

・明治の鹿鳴館時代のドレスから60年代のミニスカートまで、日本の女性は欧米のファッションを真似してきた。だがルーズソックスは、それが機能的とか、美しいかは別にして、少なくとも欧米の真似ではなかった。

・頼まれもしないのに自発的に校庭や公園の掃除をするとか、服装が乱れている子に注意するとか、そういうのはちょっと違う。そういうのは単に、おせっかい、目立ちたがり、ほめられたいと思っているだけ、という場合が多い。

・子供は、幼児のころは別にして、いつもいつも一緒にいて遊んでくれるというより、「魅力のある」教師や親を望むものである。魅力があるということは、人生を充実させ、楽しんでいるということに尽きる。

・BMWやメルセデスやジャガーの優秀な営業マンというのは、金持ちの機嫌を取るのが上手なわけではなく、それらの高級車に乗るときの喜びと充実感を正確に説明できる人らしい。それに対して国産大衆車の優秀な営業マンは、それぞれの車の特性に詳しく、「お得ですよ」という効率性を示すのが上手な人なのだそうだ。

・愛国心というのは、伝統的な何かに盲信的に従うことでもないし、政府や権力に対して無批判になることでもなく、まして外国に対して根拠のない優越感を持つことでもない。自分たちの伝統に価値を見いだし、その価値をわかりやすく子供たちや外国に伝えて、その静かな誇りを持つ、そういうことではないかと思う。

・規律のある生活を続け、肉体と精神に負荷をかけて鍛え、自分が目に見えて変わっていくのを実感するのはきっと気分がいいのだと思う。

・戦争や紛争で死んだり、辛い思いをしたりするのは、いつの時代も「裕福ではない家庭の子供」である兵士なのだ。

・自衛隊の階級:将(大将)、将補(中将)、一等佐(少将)、二等佐(大佐)、三等佐(中佐)、一等尉(少佐)、二等尉(大尉)、三等尉(中尉)、准尉(少尉)、曹長(准尉)、一等曹(上級曹長)、二等曹(曹長)、三等曹(軍曹)、一等士(上等兵)、二等士(一等兵)、三等士。

・防衛大学校・防衛医科大学校の学生は陸・海・空曹長からスタートする。

・テレビ局に映像レポートを売る場合は、1秒いくらで契約することが多い。

・無謀と勇気の違いを知っていて、極限状態にあっても冷静さを失わず、そして「死を恐れる人」だけがサバイバルできる。

・アメリカ軍は、外国籍の若者の入隊を認めている。

・カラオケが好きだからといって、歌手になれるわけではない。

・何を見つけるのか? それは、本当の自分自身、ではない。そんなわけのわからないものではない。生きていくための武器、つまり将来の仕事だ。

・ピカソやゴッホやルノワールが受験勉強をしたはずがないが、今の日本社会では受験勉強をしなければ画家にもなれないのだ。

・自分は絶対にサラリーマンには「向いていない」と確信することも才能に含まれるのだと思う。

・民間企業とNPOが委託業務の受注を巡って競争するわけだが、利益を上げなければならない企業に対して、非営利のNPOは充分な競争力をもっている。

・正社員が優遇されているのは基本的に衰退業種・企業であり、いずれは正社員という言葉も死語になっていくはずだ。

・もともとほとんどの日本文化は老人のものだった。懐石料理には固い肉のステーキなどない。エビはすりつぶしてお団子にして吸い物に入っているし、野菜は柔らかく煮てある。歯が悪くなっても、総入れ歯でも食べられるように調理してある。

・ITを使ってクリエイティブな仕事をしたい人や、それとメディア関係の人は、ITのユーザーとしてプロにならなければいけない。いろいろと新しく次々に出てくるコンピュータやインターネットのツールを使いこなせるようになるために勉強をする必要がある。

・農家の方はそれを見ながら、最初はすごく怒る。「この客は全然わかっていない」とかいって、客のせいにしちゃうんです。

・そもそも農薬を使っているのを悪いことと思っていない農家さんも結構いる。じゃあなぜ農薬を減らすのかというと、スーパーでいわれるから、農協にいわれるからという感じなんです。なかには自分の子供が食べるものはまったく別の土地で作ったり、自分の子供が農薬を使っている畑に入ると「危ないから入っちゃだめ」と怒ったりする人もいる。

・農薬を使う農家というのは、高い農業技術がないのです。

・今や、IT・インターネットビジネスにおいては、その革新性・独創性が何よりも重要で、他人が成功しているからと、他人と同じことを始めても、もう市場は反応しない。

・環境に配慮した製品というのは、「地球に優しい」のではなく、「人類の存続に都合がいい」ものなのである。

・ISO14001認証取得は簡単ではない。だからISO14001による環境マネージメントシステムは、ISO14001を取得していない企業との取引を規制することで、途上国からの輸入増加を抑えようとする先進国に有利なシステムだという批判もある。



13歳のハローワーク

13歳のハローワーク

  • 作者: 村上 龍
  • 出版社/メーカー: 幻冬舎
  • 発売日: 2003/12/02
  • メディア: 大型本



タグ:村上龍
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