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『生物から生命へ 共進化で読みとく』 [☆☆]

・我々ヒトは、共進化プロセスがフルに作用した結果として生み出された「社会的知能」をもつユニークな存在である。

・タコとヒトの系統をそれぞれ遡って合流した共通先祖たちには眼の構造はないのだ。つまり、それぞれの眼は、進化上の別の出来事として、独立に発明されたということである。

・熱を下げたい気持ちを抑えて、何もしないで数日間、熱にうなされていたほうが、結果的に風邪が早く治る場合もある。これこそが体が本来持っている防御反応である。高熱は免疫系を活性化し、ウイルスの増殖スピードを遅らせるというご利益があるからだ。

・清潔な都市では、感染の機会が少ない。したがって、宿主を長生きさせる戦略を取らざるを得なくなるだろう。つまり、毒性を弱める方向に進化すると考えられる。逆に、不潔な都市では、一つの宿主の中で長生きしなくても、感染できるチャンスは十分あるので、宿主の寿命を延ばすよりも、他の病原体との競争に勝つために毒性を強める方向に選択圧が働くだろうと考えられる。

・実際、1991年に南米でコレラが流行されたときに観察されたのは、この予測をはっきりと裏付ける現象であったという。不潔な水源を持つチリでは、コレラ菌は次第に穏やかになっていったが、比較的不衛生であったエクアドルでは、毒性を強め、より危険なものへと進化した。

・協力個体と裏切り個体に加えて、孤立個体というゲームに参加しないタイプの個体を混ぜて実験を行ったものだが、そこにおいても、「……協力個体の増加→不参加個体の減少→裏入り個体の増加→不参加固体の増加→協力個体の増加……」というサイクルが観察されている。

・生物が環境に働きかけて、環境を変える。変化したその環境が逆に生物の進化に影響を与える。

・模倣はヒトに文化をもたらすという点で、とても意義のあることと言える。実際、我々がごく普通に毎日行っている行動のかなりの割合は、我々の先祖たちが試行錯誤的に試みてきたことの中でうまくいったことを真似しているものだと言えそうだ。

・大人になってミルクを多めに飲めないのは、日本人だけでなく、世界でも多数派である。それどころか、哺乳類の生物全般に共通ことらしい。

・アート作品自体、あるいはアーティストの表現意図が、受け手側によっていかに受け止められるかということは、受け手の中で起こる創発的な現象と言ってよいだろう。

・それは、ある具体的な現象に関して、パラメータの数を減らして抽象度を上げていくといった結果としての抽象ではなく、0からその世界を構築するのである。





生物から生命へ: 共進化で読みとく (ちくま新書)

生物から生命へ: 共進化で読みとく (ちくま新書)

  • 作者: 有田 隆也
  • 出版社/メーカー: 筑摩書房
  • 発売日: 2012/04/04
  • メディア: 新書



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