SSブログ

『東京・地震・たんぽぽ』 [☆☆]

・だだっぴろいこの公園の一番の目玉は、私にとっては空だった。マンションや電柱やらで狭くなっている東京の空が、ここに来ると一気に広くなる。

・あきらめて電話を切ると、異様な静けさだけが残った。エアコン、冷蔵庫、配水管――普段は気にもとめない、生活の中で自然に音を生んでいるものたちが、動いていないからだろう。

・他人に踏みにじられることが自分の仕事なんだ、と思った。きっと、恨みや怒りを消化できない人たちが、わたしたちに悪いものを押しつけているのだ。芸能人という職業は、生きた流し雛であるに違いない。

・僕の夢は奴らへの復習。その夢があるから、生きていられる。

・今まで、ぼろぼろぼろぼろ、ペットボトルに入れて売れそうなくらい泣いたけど、でも何故だか、その人の一筋の涙に比べたら、稚拙な涙だった気がした。

・あたしは優基に向かって泣いているんじゃなかった。恋人に死なれたかわいそうなあたしに向かって、えんえんと泣いていているのだった。





東京・地震・たんぽぽ

東京・地震・たんぽぽ

  • 作者: 豊島 ミホ
  • 出版社/メーカー: 集英社
  • 発売日: 2007/08/24
  • メディア: 単行本



タグ:豊島ミホ
nice!(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:

nice! 0

トラックバック 0