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『12歳からの現代思想』 [☆☆]

・イマという時代を理解するためのツール──それが現代思想なのです。

・思想は、メガネのようなものです。そのメガネをつけてみると、今まで気づかなかったことが見えてきたり、まったく違った風景が現れたりするかもしれません。

・現代世界では、人間の個性を語ることは、もはや笑い話になっています。個性と見えるものは、流行物を身につけるか、他人からの受け売りの知識をひけらかすか、メディアの情報に振り回されるか、いずれかであるようです。

・行動する「主体」は、同時に秩序に服従する「臣民」でもあるわけです。こうした「主体=臣民」を作り上げるのが、監視という装置なのです。

・ナチスドイツのヒットラーが、安価な国民的ラジオを普及させたことは有名です。このラジオ放送によって、国民はヒットラーの演説を聴き、ナチスへの共感を高揚させていきました。「多数者」(国民)が「少数者」(ヒットラー)を見る(聞く)ことによって、少数派に管理されていくわけです。

・「多数者が少数者を見る」ことによって「多数者」が「少数者」に管理されることは、今でも続いています。

・ディープ・エコロジーには、人口を安定させるばかりではなく、人口を持続可能な最低限度にまで減少させるという目標があります。百年前にあった文化の多様性を有するには、せいぜい10億人ぐらいの人口がいいでしょう。

・環境を保護するのは、実際には「人間の生存」を守るために他なりません。人間の利益追求のためにこそ、環境は保護されるべきなのです。

・私たちが現実に配慮しているのは、「地球」ではなく「人間」です。

・人が生れ落ちるのは、一定の他人との関係の中です。そのため、この他人との関係を抜きにして、自分自身を理解することはできません。

・自由で自発的な行為の550ミリ秒前に脳は起動プロセスを示します。しかし、行為を実行しようとする意識を伴った意志のアウェアネスが現れるのは、その行為のたった150から200ミリ秒前なのです。したがって、その被験者が行為を実行しようとする自分の意志や伊戸に気づく400ミリ秒ほど前に、自発的なプロセスは無意識に起動するのです。

・今までの考えでは、「心の意志」から「脳の変化」が起こる、と予想されていました。ところが、実験によって明らかになったのは、「脳の変化」から「心の意志」が起こる、という逆転でした。

・「スマート・ドラッグ」と呼ばれる「頭のよくなる薬」によって、知的能力を増強することもあります。こうした薬は、もともとアルツハイマー病や注意欠損児の治療などに使われたのですが、それを一般の人が服用すると記憶力や注意力が向上するのです。

・「モダン」とは「大きな物語」を信じる時代だけれど、現在このような「大きな物語」が信用されなくなった。「大きな物語」が失墜した現代は、まさに「ポストモダン」である。

・「社会や世界はこうあるべきだ」というような「理想」が、かつては真剣に語られていたのです。しかし、いまどきこんな「理想話」を語るなら、「マジですか?」といって軽く受け流されるのがオチでしょう。そんな「理想話」を誰も信じてはいないのです。

・「ポストモダン」が「ニヒリズム」の一種であることは間違いありません。現代の私たちは、「神」だけでなく、「自由」も「平等」も「解放」も「進歩」も、そして「愛」さえも信じられなくなったのです。

・「大きな物語」が終わる──これがポストモダンですが、その中で最も主要な「物語」とは何でしょうか。それは、「人間」という物語ではないでしょうか。というのも、「近代」の諸学問の中心に位置していたのは、「人間」だったからです。





12歳からの現代思想 (ちくま新書)

12歳からの現代思想 (ちくま新書)

  • 作者: 岡本 裕一朗
  • 出版社/メーカー: 筑摩書房
  • 発売日: 2009/09
  • メディア: 新書



タグ:岡本裕一朗
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