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『社会人の生き方』 [☆☆]

・雇用されなければ働くことができない社会では、社会の一員としての人間的資質というより、雇用されるにふさわしい学歴・資格・能力が必要になる。

・シティズンシップとはまさに社会人として必要な教養と行動力のことだ。

・自分が周りに貢献すると同時に、自分の力で周りを変えていくこともできるという相互関係がなければ、いつも外から管理され査定され、自己評価を強制され、がむしゃらに働き適応していくことに甘んじなければならない。

・彼女は一人でテレビを見て過ごす、受け身の生活では自分の判断に確信が持てなくなっているからだ。

・人は個人として不可侵の自分だけの世界を持つと同時に、他方では、人とつながる社会的な世界に生きる。この二つの世界を表裏一体のものとして持っていないと充足感のある人生を送ることができない。

・個人化社会とは、町には人間があふれているけれど、みな無関係の人ばかりで、頼れる人はいない社会のことだ。

・食事と同じように毎日知的栄養をとることは、その人のものの考えかたや判断力に大きな力をもたらす。

・人間一人の経験には限りがあるが、丹念に調べた事実に基づく記事や人びとの論説は、個人の思考を深く耕してくれる。

・老人ホームのケアをしている医師によると、老人が新聞を読んでいる間はボケないのだそうだ。新聞を読む気力さえなくなるとボケ始め、最後に残るのはただ受身的にテレビを見ることだという。

・昔は「知りませんでした」といえば許してもらえたことも、今は「知ろうとしなかったことが罪悪だ」と考えられるようになっている。

・人生の破綻は、無知と無縁から起こると分析されてもいる。

・皮肉なことに、社会とかかわりを持たない人ほど、社会改革を叫ぶ扇動的な政治家にあっけなく共鳴したりもする。社会的つながりを持っていない人は、潜在的な不安からヒーローに過剰な期待を抱くのかもしれない。小泉ブームや橋下ブームがそれである。

・規制緩和には、必ずと言っていいほど、これまで規制によって守られてきた弱者の人権が、自由とひきかえに犠牲にされる。

・あとのことはどうでもいいから目先の得を、という日本人の価値観は、貧富の差から出てくる価値観の相違であったかもしれない。

・社会的な人間関係をつくることは面倒なようでも、それこそが権力もお金もない私たちのただ一つの資産であり、力だと思う。

・仲間作りのキーワードは「○○で困っている」という言葉だと、教えてくれた人がいた。

・老人になって、社会から忘れられたさびしさを生きる人は、たまたま話し相手がいると、無限に話し続けたがる。

・どんなにいい法律や制度や施設があっても、それを活用する知識がなければ、そして支援を要請する勇気がなければ、そしてまた制度への橋渡しを助けてくれる人がいなければ、その人が現実の困難から救われることはない。

・施設や法律を自分の困難解決にどのように活用したらいいかがわからず、そのために福祉行政が機能せず、すべては自分が悪いのだと無力感の中で死んでいく……。人間関係を持たないことが人を殺す。

・面倒なことにかかわりたくない、無難に生きる大人たちがいる。そしてかかわりたくない口実に、プライバシーをあげる。

・プライバシーは確かに私生活の領域に公権力が介入しないための人権の砦といってもいい。

・「若者にとって社会とは、自分自身と気の置けない仲間たちが共有する空間がすべてであり、仲間以外はみな風景」というように、青少年たちは社会と向きあう関心さえ持っていないのではないか。

・選挙では、棄権するか歯切れのいいアイドルまがいのヒーローに投票し、かえって自分の首を絞める結果を招く。

・日本のように教育が就職のための実利を目的にしていると、生涯にわたって自分を育て、自分の資産となる教養の価値の重要さを自覚できず、何か無駄なことのように思ってしまうのではないか。

・日本人学生の答えには「わからない」という答えがとても多い。いつか大学で討議中に学生が「わかりません」と答えたときに、司会者が「なぜわからないのですか、その理由を言って下さい」と突っ込むと、当人は「ただ考えるのが面倒なだけ」と告白しました。

・民主主義を支える自由には社会に参加するという積極的な自由と、権力に侵されない領域を確保しようという消極的な自由がある。

・民主主義は鍛え上げていくものであり、民主主義の実現のためにはその手段として、討議と意思決定が重要である。この考えは、多数決で決まった決まりを守ることを民主主義のルールと教える日本とは本質的に違っている。

・誰からも自分の存在を無視されていて、話しかけても応答してもらえない場合、見捨てられた自分の存在感さえ感じられなくなり、この世にいるのかいないのか、わからなくなる。

・ネットでつながっていると信じる一筋のつながりも、他者に注目してもらいたい一心の蜘蛛の糸のようなもので、ネットの相手は実体のない影絵にすぎないこともある。

・学校に行くようになると、子供は親の言うことは聞かなくても、友達の言うことは本気で聞くものだ。仲間の存在はそれほどに大きいということだろう。

・自分の意思や希望や期待、繊細な感情の交流や、悲しみや不安、後悔の念などを理解してもらうためには、何よりも高いレベルの言葉と、文化を背景とするコミュニケーション能力が必要である。

・子供の育成環境に知的・文化的な格差がある場合、語彙には格差が認められるのに、この文法獲得能力には差異は認められていない。

・言語を習得すると、子供はほとんど同時にそれを通信手段として使う。子供はまた、コミュニケーションの道具として言葉を使っているだけでなく、習得した言葉によって考えたり感じたりもしている。目の前にないものを言葉によって知ったり、想像したりすることもできる。





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