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『本質を見通す100の講義』 [☆☆]

・本というのは、窓から射し込む光のようなものであって、それで貴方の部屋が明るくなることもあれば、誇りや汚れを際立たせることもある。

・そもそも、資本主義社会を牽引したエネルギィは、金を儲けたいという欲望であって、それは、自分と貧乏人の格差を広げたい、という「夢」なのだ。

・資本主義における格差は、仕事をしないで得られる利益が存在するためである。ここが「資本」の意味だ。

・結局のところ、つながりたがっている多くは、つながることで金が儲かるからにすぎない。それを、綺麗な言葉で飾って、「絆」「親睦」などと呼んでいるのである。

・民主主義というのは、みんなが自由になる、ということではない。みんなでリスクを分担する、という意味だ。誰もが少しずつ不満を持って、少しずつ危険を抱え込むこと、それを許容することが、民主主義の精神である。

・コミケに集まる人間は五十万人以上いるのだ。コミケよりも人を集められるデモがあったら、多少は考慮に値するだろう。

・この頃はネットが本に代わろうとしている。しかし、本のように一冊に纏められているわけではないので、「世界」を感じることが難しい。

・ワイドショーなどには、たいてい専門家という人物が登場する。たいていの場合、わざわざ専門家を呼ばなければならない情報なのか、という基礎的なレベルで終わってしまう。そんなことなら「詳しくはウェブで」で済ませた方がよほど有益だ。

・だんだん笑わない人が増えてくる。でも、全体を眺めている人は、まだ笑てくれる人がいる、と観察するのだ。つまり、大勢を相手にする人ほど判断は必ず遅れる。鈍いセンスに引きずられるからだ。

・大人になり知識が増えると、知らないことを嫌うようになる。「嫌奇心」という言葉はないと思うが、とにかくそういう状態に多くの人がなる。

・人間の会話のほとんどは、相手の本意を尋ねるのではなく、私に対してどれくらい安全なのかを測っているだけなのだ。

・世の中の人は、集合論も意識していないし、軽い気持ちで、一部から「全体」を判断する。「韓国なんか大嫌い」とか、「政治家っていうのは腐っているな」とか。

・なにしろ、自分が言うまえに、ママが「楽しいね」なんて言ってくれるから、それがその子の「楽しさ」になっていく。周囲に誰もいないと、自分は何が楽しいかもわからない。

・自分の悪い点、醜い点は、自分が一番知っている。それに比べて、他者の悪い点、醜い点は表に出てこない。結果として、そのまま比較すると、自分の方が低く見える。

・運動会の選手宣誓で必ずあったのが、「健全な精神は健全な肉体に宿る」という言葉だ。これは長く名言として世に君臨していたのだが、あるときから使えなくなった。もちろん、ハンディを抱えた人たちの気持ちを考えてのことだろう。

・お互いに相手に負けられないとなると、引き分け以外に、両者が納得できる状態はない。

・「意外な結果があるって聞いたけど、なにもなくて肩すかしだった」という読者がいるが、その「肩すかし」こそが、意外な結末ではないのか。

・僕が語尾の長音を書かないのは、綴りがerかorで仮名が3文字以上のものだけだし、発音するときも伸ばさないからである。

・熟語の部分平仮名は、本当に馬鹿っぽい。

・人間に求められる能力とは、つまりセンサだ。企業という機械が作動するときに、人間はそのセンサという部品になって働いている。その感知能力が必要とされているのだ。

・人間のセンサが感知しなければならないのは、未来の見通しだろう、あるいは、人の気持ちといったものだと思われる。

・これからは「社会の一センサとして働く」と表現してはどうか。

・この「無駄な仕事」というものは、どうしようもないもののように観察される。わかっている人は多いけれど、改める方法がない。否、ないわけではないが、もの凄い抵抗に遭う。「俺の仕事を取るのか?」「真面目に働く者を見殺しにする気か?」と問い詰められることになる。

・問題を解かせないためには、問題が解けたと勘違いさせることが有効なのである。人は、「問題が解けた」と思った瞬間もう考えなくなるのだ。





本質を見通す100の講義

本質を見通す100の講義

  • 作者: 森 博嗣
  • 出版社/メーカー: 大和書房
  • 発売日: 2015/07/18
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)



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