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『冷暗所保管 テレビ消灯時間4』 [☆☆]

・おどける人というのは大量に存在していて、テレビはそれを一生懸命に排除していたのかもしれない。

・今も昔も、思い出話においては「出来た」よりも「出来なかった」、「良かった」よりも「悪かった」、「成功」よりも「失敗」が花形だ。「昔ワルかった」申告者が、実在したワルよりも圧倒的に多いのもそのせいだろう。

・この2人が同級生だったとしても友達になっていないと思う。どんな出来事についても、立ち位置が違っていたと思う。

・その仕事に熱意があろうが無かろうが結果に表れない限りは+にも-にもならないわけだ。

・特にバラエティやCMに対する依存が高い人は、仕事の結果だけで評価されることを回避し、自分自身を消費させる事を望んでいるわけである。趣味は○○であると公言し、交友関係を喧伝し、自分は実はこんな人間であると語り、それによって派生するイメージやらなんやらを商品にする。

・「汚れ役信仰」(汚れ役に挑戦→本格女優というマヌケ)もどうかと思うし、テレビドラマサイズの中で「汚れ」つったってなあ、とも思う。

・「実録」とか「真相」とか言っても、全面的に協力してもらっているという取材の形態である限り本当に批判することはできないわけで、中にたとえ批判めいた部分があったとしてもそれは着地点の「結局はプロモーション」の効果を増幅させるだけだ。あんこに入れる塩みたいに。

・無免許だったけど、それは違法だけど、でも「悪人」じゃない、と言いたいがために、どんどん「まぬけ」になっていくのだ。「悪人とまぬけ」のどっちを取るかってことでもある。

・本人たちは「悪人を逃れた」という自覚はあっても、その分「まぬけ」になっているという自覚はない。

・でもこれに関する追跡情報はもう結構。正しい答えを得ることが、人生にとって何の意味ももたらさないこともある。

・制作する側の思惑(それが表現できているかは別問題)と、それを思惑通りにどんぴしゃで受け止める視聴者の、とても幸福な送受関係がぐるぐると回っていることに驚く。この番組HPの掲示板という新メディアは、この先何かに影響を及ぼすと思う。

・コージー富田は、そういう世間というか視聴者に自分が凝視したタモリを見せている。電子顕微鏡の視界をスクリーンに映し出して、研究発表をしているような感じか。意外に興味深い生体に、客も膝をのり出している状態。みんなどんどんタモリのいろんなことに「気づいて」いくのだ。

・一度ならば大目に見よう。誰にでも過ちはある。その失敗を肝に銘じることで、同じ失敗を二度とくり返さないでくれればいい。しかし、失敗はくり返されるものなのである。

・パクリというのはクリエイティビティの放棄を嘲笑するための指摘だと思っていたが、これは知的所有権に金を払うか払わないかという問題の方が大きいのだとはじめて気がついた。能無しかどうかより、ケチかどうか、って事でもある訳だ。

・宝くじの当選金が低いのも、競馬は胴元バカ儲けも「国民のためを思って」である。人生を狂わせないように保護しているのだ。狂わしてみてくれ、と思うが。

・努力もせず「わかんない」で物事をすませるのは、自分としてもけしからんと思うが、でも今更勉強して映画通になってもさ。

・たとえどんなものでも、何か目標に向かって積み重ねられる努力は苦労は評価され報われるべき、という考えは「無駄な努力」の「無駄」の部分をあまりにもないがしろにしている。無駄は大事なのに。

・プロが考えて仕込んだヤラセなのにつまらない。これは、「ヤラセをした」という不道徳より「プロなのにつまらない」という無能を非難されるべきだと思う。

・このタイトルは、かなり絶妙と言える。ファンには「もうっ、絶対標準録画」と思わせるだろうし、善意の第三者には「感動モノの予感」を与え、私のような悪意の第三者にすら「揚げ足取り放題の予感」をエサにチャンネルを合わせさせたんだから。

・何でもない話をしても成立するケースと、何か付加価値でも入っていないことには成立しないケース。これはほとんどその喋り手自身の「価値」に左右される。自分物の評価が高ければ朝食の話でもいいが、喋り手に価値がなければその話自体に何かなければ成立しない。

・サイコロトークは待ち望まれていない喋り手、待ち望まれていないトークを救済するのである。「何が出るかな、何が出るかな……こいばなー!」と歌い叫べば、冨士眞奈美の恋の話を自分は果たして聞きたいのか聞きたくないのかなんて判断つかなくなろうというもの。そんな思考停止こそが、差別のない世界ではないか。




冷暗所保管―テレビ消灯時間〈4〉

冷暗所保管―テレビ消灯時間〈4〉

  • 作者: ナンシー関
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2000/10
  • メディア: 単行本



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