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『市場は物理法則で動く』 [☆☆]

・経済学者は何も問題はないと言い張っていた。それは、彼らの「金融気象」とも名づけるべき教科書には、穏やかな青空についての理論しか載っていないからである。

・物理学が扱うのは有形のものだけではない。むしろ物理学は、秩序や組成、変化、あるいは形状やその変形の自然なパターンについて、基本的な疑問に答えるのに適した科学だと言える。

・拍手というのは、社会現象としてはそれほど重要なものではない。しかしこのような、ある状態(静寂)から別の状態(拍手喝采)へと変化する集団的行動のパターンは、インターネットや住宅ブームのような何か新しいことが到来すると、他人の取った一つの行動を見て、全員がそれに殺到するという金融市場の状況と、大きな違いはないのである。

・現実世界で最も重要なのものは、バランスとは正反対にあるもの──不均衡を引き起こし、つむじ風や乱流を生み出す力──から生じている。

・平野部で発生する雷雨、海上で発達するハリケーン、地表での霧の形成といった現象のそれぞれに異なる理論が構築されている。市場や経済の科学もこれと同じように、一つの普遍的理論を追求するのではなく、多彩な関連モデルや理論を取りそろえることを目指すべきなのだ。

・オプションや、それと同類の特殊な金融商品のようなデリバティブ商品は、あらゆる種類の取引や交換を可能にするためのツールにすぎず、人間の想像力が唯一の限界なのである。

・実際のところ、私たちは情報を共有し、協力し合うことで、より良い答えを出していると考えるが、そうではない。反対に、答えを共有したせいで、全員の答えが狭い領域に収束してしまった。社会的影響がある場合、正解がグループが予想していた範囲から完全に外れていることも珍しくない。

・参加した学生は、グループとしてその精度を高められたと強い自信を持っていた。そこにあるのは、「集団の知恵」ではなく、「集団の根拠のない自信」だ。

・金融アナリストは、自分がインフレや会社の売上高などを予測する際には、自分の力で情報を評価していると言い張るかもしれない。しかし2004年の研究では、アナリストたちの予測が追従しているのは、主に他のアナリストの予測だということが明らかになっている。

・日本時間2011年3月11日金曜日午後2時46分。日本の沖合700キロメートルにある地殻の一部で、地球物理学者らが「メガスラスト地震」と呼ぶ現象が起こった。

・この東北地方太平洋沖地震では、合計で広島型原子爆弾6億発分に相当するエネルギーが放出された。

・正規分布曲線では、中心から8標準偏差に相当する(標準偏差の8倍の位置にある)事象ですら、その発生確率は宇宙の一生の間に1回程度しかない。

・成功していた戦略に人々が集中しすぎたことは過去に何度もあります。そして、多くの人々が同じ出口に殺到すると、大変なことになるのです。

・チェスボードの上には両者の駒が2個のキングだけになってしまったと考えよう。2つのキングにできるのは、ランダムで目的のないダンスだけだ。

・テクニカル分析は、株式市場が集合心理(「大衆心理」)の反映であることを理論面の支えとし、大衆心理の波がパニック、恐怖、悲観と自信、楽観、強欲との間を動くことを前提し、将来の価格動向を予測する。

・この経験則は「ヒューリスティック」と呼ばれている。直感的な判断をすれば、そこそこに良い結果をあっさりと短時間で出すことができ、何も決められずに損をするのを避けられる場合が多い。

・簡単な決断を迫られた場合には意識的に考えるのが一番だが、矛盾していて両立できない、異なる条件が多くある、複雑な決断の場面では、「第六感」に基づく決断の方が勝ることが明らかになっている。

・経済学者は、馬を研究したいと思っても、馬を見に行くことはしない。彼らは研究室に座ったままで、「私が馬だったらどうするか」と自問するだろう。

・取引にかかる時間は近いうちに数ナノ秒以下まで短縮するだろう。これは、コンピュータにつないだケーブルの長さが数メートル違うだけで取引の勝ち負けを左右するレベルだ。

・東京とロサンゼルスの証券取引所の間で生じる、株価のわずかな差から利益をあげようとするなら、アインシュタインの理論から考えれば、正確にその中間に位置する場所、つまり太平洋上のどこかに建設した海上プラットフォーム上でトレーディングをすべきだということになる。そこでは、両取引所からの価格シグナルを宇宙一早く受け取ることになるからだ。

・ここで一回当たりの取引量が非常に大きくなっている。すなわち、価格トレンドの転換点が近づくにつれて、人々はより大量に取引するようになる。人びとの行動が事実上、その後に起こる事象の早期警戒信号になっているのだ。

・「物理学」と翻訳されるphysicsという言葉は、理屈を極める学問として江戸時代末期には「究理学」ともよばれていた。



市場は物理法則で動く―経済学は物理学によってどう生まれ変わるのか?

市場は物理法則で動く―経済学は物理学によってどう生まれ変わるのか?

  • 作者: マーク・ブキャナン
  • 出版社/メーカー: 白揚社
  • 発売日: 2015/08/02
  • メディア: 単行本



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