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『戦場カメラマンの仕事術』 [☆☆]

・信頼関係を構築するためには、小マメな連絡が武器になると思います。とにかくマメであるというのは強い。

・若きチェ・ゲバラはバイクに乗ってアルゼンチンから北上してメキシコへ行き、南米が抱える問題を自分の目で確かめたうえで、革命の道に入っていった。そこで見た貧困や格差、差別、労働、病気といった問題は変わらず存在している。いまだに変わらない。

・殿様取材で現地にダイレクトイン、宿泊はファイブスターホテルで、ダイレクトアウトというのは、声が聞こえない取材といえます。現場には行ってはいるけれど、その土地の深みがわからない。

・そこで学んだのは欧米のメディアが好む写真は、限りなく露出がアンダー(暗いトーン)のものだということです。日本では、色合いが華やかできれいな、記念撮影のような写真が好まれます。

・配信用に20枚、30枚を選ぶときに、その現場のワンカットだけでなく、それこそ関係ない空の写真が混ざっていたりする。ただその空も異様に濃い鰯雲であったり、中東ならではの得体の知れない雲海の写真であったりが挿入されている。

・極端に言うと、写真の専門学校出のカメラマンよりも、歴史や美学、自然科学や哲学をやったりした人間のほうが伸びるケースが多い。

・彼は、撮影の最後に必ず「そこでジャンプしてくれ」ってお願いし続けた。そうやって撮った写真っていうのは、1枚ではどうってことないけど、50人、100人の有名人が全員跳び上がっている姿が一堂に並べば、そこには性格も出るし、体力的な面も出るし、ものすごい情報が詰まったものができあがるわけです。

・ひとつひとつは別に何でもない努力ですよね。撮影がすめば「はい、終わりました。最後に1回跳び上がってください」って言って、それを撮ってきただけ。でも、そういう考え方や工夫というのが、これからのカメラマンには必要だよね。

・ライターというのはその場にいなくても聞いた話で記事が書けるんですよ。ところがカメラマンっていうのは、現場に行かないと写真は撮れないし、同じ場所でも3時間遅れてそこへ入ったんじゃチャンスを逃してしまうこともある。

・空海は僧侶というだけではなくて、探検家だったわけ。足摺岬とか室戸岬なんていう当時の人跡未踏の地にも歩いていって、石鎚山っていう山に登ったりしている。

・撮ったものは必ず誰かに見てもらいなさい。

・「人に見せなさい」というのは、「いい写真をそこに置いておいても何もならないよ」って言う意味で言ったんだと思うんです。それを見たら私のように思う人が絶対いて、何らかの仕事につながる。

・現場を見ずに評論家めいたことを言うのはいくらでもできる。イラクに行ったことがない人でも「イラク情勢は……」とそれなりの考えを言うことはできるよね。

・現場の情報だけでは足りない部分が出てくる。国際情勢というのは、問題が起こっている国だけではなくて隣国はどうなっているのかとか、どういう組織や機関が動いているのかとか、アメリカの思惑はどうなのか、中国やロシアは何をやっているのかとか、そういったところまでカバーしないとなかなかつかめない。

・ジャーナリストにはもうひとつ大原則があって、「僕たちはニュースを伝える側であって、自分がニュースになっちゃいかん」ということ。

・みんなと同じものを撮るというのは、いわば流行を追いかけることと同じだよね。「それは俺の写真じゃない」と彼らは考える。

・最近流行っているのが、スチールよりも動画を撮って、後で映画にして上映会と講演もやって日銭を稼ぐというスタイルだね。

・やはり、トラブルが起きたときに組織的責任を問われるとなると使いづらい。今なんて、田んぼにドローンが落ちただけでビッグニュースだからね。

・ユーチューブを見ていると、ドローンを使った派手な動画が結構ある。一見、英BBCなど大手メディアの映像のようだけど、よーくクレジットを見るとフリーの人の撮影ばかり。

・記者ならば、過去の人脈とか、例えば政治家と懇意にしていたら、現場に行かなくても政治家に電話でコメントをとって記事を書くということができるけど、カメラマンは現場へ出られなくなったら終わりだから。

・写真1枚が1000円なんてザラだから。原稿と写真で1ページ5000円とかで、絶句するくらい。



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