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『大田舎・東京 都バスから見つけた日本』 [☆☆]

・どんな「未来」も、いつかは古びる。

・人間が人工的にデザインした街は、基本的に使い勝手が悪い。人間はデザイン通りになんて動かないからだ。

・どうせなら江戸っぽい車体にしたほうが、観光客は喜んだと思う。「江戸時代に自動車があったら、こうでしょ」みたいなデザイン。

・最近は「研究者になりたいなら、大学の先生になってはいけない」といわれるほど、大学教員の学事や雑務の負担が増えている。

・社会学者に言わせれば、東京は立派な「階級都市」だ。エリアによって学歴、所得、生活スタイルはまるで違う。

・バリアフリー先進国のイメージがある北欧も、インフラ自体のレベルは大したことがない。他者が自然と手助けをすることでバリアフリーが成立しているだけで、実際の乗り物や、街角には無数の物理的なバリアが存在している。翻って東京は、少なくともインフラのレベルから言えば、バリアフリーの進んだ街だ。

・六本木ヒルズも一つの街を目指して構想されたというが、それでいうなら昭和時代の団地はその元祖といってもいいだろう。

・「文化」にはしがらみがつきもの。「山の手」にも「下町」にも、歴史の分だけルールもある。たくさんのルールやしきたりにうるさい店など、その最たる例だ。リベラルでフラットなのは間違いなくモール空間だろうが、それは味気なさと紙一重。どっちがいいのかは難しい。

・築地は、明暦の大火で焼失してしまった浅草御堂を再建するために築かれた埋立地。一方の豊洲は関東大震災の瓦礫処理のために埋め立てられた場所。共に、震災がきっかけで生まれた土地なのだ。

・タワーマンションの住人同士の格差は大きくない。もっとも、大きくないからこそ、高層階と下層階の差がクローズアップされてしまうのだけど。人は、自分と比べられないくらいの大きな格差は気にも留めず、比べられる範囲での格差に敏感なのである。

・元祖埋め立て地帯は、「下町」と呼ばれ、すっかりと東京に馴染んでいる。お台場や東雲も、いつか月島のように格差とごった煮の街になる日が来るのだろうか。

・戦時中に弾薬庫とをして活躍していた横浜の青葉区の公園は「こどもの国」と呼ばれている。

・悲惨なのは、マンションだけではなく、街全体で新陳代謝が起こらず、高齢者ばかりの寂れた場所になってしまった場合だ。

・ドヤ街に求められた機能はネットカフェなどに拡散していった。ドヤ街が消えたからといって、東京から貧困が消えたわけではない。それは見えにくくなっただけだ。

・建物同士が密集したような街は、建築基準の観点からも、合理性から考えても、再び作ることが不可能だ。東京の「下町」には「もう今からは決して作れない街並み」が広がっている。

・東京に住んでいる人に「家の側に川が流れている」と言えば、大抵当たる。なぜならば、東京という街は川だらけだからだ。

・江戸川区の人口は約70万人。ヨーロッパの中都市よりもよっぽど多くの人が住んでいる。たとえば『フランダースの犬』で有名なベルギーのアントワープで人口50万人強。ムーミンで有名なフィンランドの首都ヘルシンキも人口60万人強。そう考えると。そろそろ江戸川発の世界的文学や文化が欲しいところだ。

・チェーン店が目立つのはそれしか知らないから。

・「日本中どこも同じような店が並ぶ」と言っている人は、自分が「同じような店」しか知らないから。

・建設当時の姿に復元された東京駅だが、何だかディズニーランドのように見える。まあ、昔の建築はほとんど欧米にインスパイアされているわけで、間違った印象でもないのだろう。

・シャッター商店の持ち主は裕福な人が多いのだろう。本当にお金に困っていたら、不動産を遊ばせておくなんてことはできないからだ。

・神社仏閣と電車は深い関係にある。「初詣に詰めかける多数の参拝者」といった光景は、電車という大量輸送手段の普及前まではあり得なかったからだ。

・バスは渋滞にはまる。昔の人が、空飛ぶ車を夢見てしまった気持ちもわかる。でも実際に全ての車が飛んだら同じく空は渋滞するわけで、何の解決策にもならないだろう。

・フォークやロックの聖地と言われ、高円寺、吉祥寺、国分寺は「三寺」と呼ばれていた。しかし今は、一度トレンドが訪れた街特有の古さがある。たとえば江戸川区は、戦後一度も若者文化の中心になったことはないので、「田舎」っぽさは感じても、「古さ」を意識することはない。

・八潮パークタウンにはすでに30年の歴史がある。人間の一生を基準にすれば十分に長い時間だが、千年以上の歴史がある街がざらにある中で、それはノイズのような期間だ。

・20世紀後半にコンテナが普及したことによって、物流コストが劇的に下がった。そのままトラックにも列車にも船にも載せられるコンテナ世紀の発明だったといっても過言ではない。

・政策は、議論が始まった時には正しいとされていても、時代が変わると陳腐化しているじゃないですか。豊洲市場もそうです。

・中央卸売市場っていう概念自体が、本当は時代遅れですよね。わざわざ一か所に集めてそこで買わなくても、個人が漁協や漁師さんと直接取引できる時代じゃないですか。

・血気盛んなビジネスマンたちは、東京をもっと可能性のある場所と捉えている。東京は都内総生産が100兆円に迫る世界有数の大都市であり、治安の良さと優秀な人材が魅力の素晴らしい街である、と。

・「田舎」の特徴として以下のような項目が挙げられていた。「多様性を許容しない同質的な社会」「流行に乗っているつもりでついていけてない」「人が少ない」「夜が早い」「動作が遅い」「男尊女卑がひどい」「都会に対する憧れが捨てられない一方で、変なコンプレックスを持っている」 だが、よく考えてみると、この「田舎」の特徴は、どれも悲しいくらい東京に当てはまってしまう。

・東京都いう街は新しい業種や産業に厳しい。新しいものはとりあえず拒否する。実験精神ゼロ。反対するための理由作りだけは天才的にうまい。その根性は「田舎者」そのものだ。

・東京の人口密度の低さは、「見た目」の田舎っぽさにも一役買っている。中心に都市機能が集中していないため、街の印象が散漫としてしまうのだ。

・日本の地方よりは都会なのかも知れないが、それは世界基準で考えた時に、東京が「大田舎」で地方は「ド田舎」という話である。

・GLAYの「ホワイトロード」にも「故郷は場所ではなくてあなたでした」という歌詞が登場する。僕たちは「場所」に生きているようで、実際はその場所に住む「友人」や「仲間」と生きているのだ。



大田舎・東京 都バスから見つけた日本

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  • 作者: 古市 憲寿
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2017/06/22
  • メディア: 単行本



大田舎・東京 都バスから見つけた日本 (文春e-book)

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