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『50 いまの経済をつくったモノ』 [☆☆]

・庶民の生産できるものが増えれば、権力者が搾取できるものも、その分増える。余分な食料ができると、支配する者と支配される者、使う者と使われる者が生まれ、狩猟採集社会では見られない富の格差が生まれる。

・ラッダイトたちは機械に仕事を奪われることを恐れていたわけではない。低コストで熟練度の低い労働者に機械が力を与えて、自分たちの仕事を奪うのではないかと恐れていた。

・世界最高の歌声を家で聴けるなら、わざわざお金を払って、それなりでしかない歌を聴きに行くだろうか。少しだけ劣るアーティストは、安定した暮らしを送れなくどころか、食べるのにも困るようになった。資質のわずかな差で、報酬にきわめて大きな格差が生まれるようになったのだ。

・アーティストたちはアルバムを売る手段としてコンサートチケットを使うのをやめて、コンサートチケットを売る手段としてアルバムを使うようになっている。

・上位1%のアーティストのコンサート収入は、下位95%のアーティストの収入を合計した額の5倍を超える。

・最富裕国では、移民やってくると既存の国民の6人に5人は暮らし向きがよくなるという。今、メキシコ人の集団がアメリカに渡ってきて、アメリカ人よりも安い賃金で果物を収穫する仕事を進んで受け入れるとしよう。すると、全員が果物をほんの少しだけ安く買えるようになるが、そのせいで仕事を失うアメリカ人もいる。メリットは広く薄く行き渡りすぎて誰も気に留めないが、失業した人は、自分はこんなに不幸だと声を大にして訴える。

・世界のロボット人口は急激に増えている。ロボットの「出生率」は5年ごとにほぼ2倍になる計算だ。

・「考えること」ではロボットが人間に勝つが、「棚からものを取り出すこと」では人間がロボットに勝つのなら、ロボットの頭脳を使って人間の体をコントロールすればいい。

・ピルが解禁されたのは1999年になってからだった。同じ避妊薬を使えるようになるまでに、日本の女性はアメリカの女性よりも39年も長く待たなければならなかったのだ。それなのに、勃起不全治療薬のバイアグラがアメリカで認可されたときは、ほんの数か月後に日本でも認められている。日本は男女間格差が先進国で一番大きい国として広く知られている。

・レジャーカーは、それに乗っている人の趣味や洗練度を雄弁に語ります。古びたレジャーカーに乗っているというのは、老いた馬に乗っているのと同じで、財力がないか、誇りがないことを触れ回っているのです。

・カラー印刷をするには、同じ紙に、シアン、マゼンタ、イエロー、ブラックのインクで4回刷らなければいけない。その間に湿度が変わると、紙がわずかながら伸び縮みしてしまう。1ミリメートルずれただけで、とても見られたものではなくなる。

・その昔、劇場は夏に閉鎖されることが多かった。息苦しいほど暑い日に劇を観たいという人はいない。

・人の生産性は18~22度でピークになる。

・買い物はずっと、社会的表示と深く結びついていた。上流階級にとっては、そこは見るだけでなく、見られる場所でもあった。

・グローバリゼーションを可能にした最大の要因は、たぶん自由貿易協定ではなく、ある単純な発明だろう。幅8フィート(2438ミリ)、高さ8.5フィート(2591ミリ)、長さ40フィート(1万2192ミリ)の波板鋼板製の箱。そう、輸送用コンテナだ。

・コンテナ革命の恩恵は、すべての港に届いているわけではない。貧しい国の多くの港は、今も1950年代のニューヨークさながらだ。サハラ以南のアフリカは特に、インフラが貧弱なせいで、世界経済からほとんど切り離されている。

・頭のイカれた独裁者が君臨し、冷酷な外国資本に支配されている貧しい国をさす言葉がある。「バナナ共和国」だ。

・バセット主教があなたから5ポンド借りていることを示すタリーを持っているとしよう。すると、バセット主教が借金を踏み倒す心配がないかぎり、そのタリー自体が5ポンドに近い価値を持つようになる。タリースティックは一種のお金になった。そう、貨幣とは債務なのである。

・組み立て作業を顧客にアウトソースすることが、フラットバックを安くする唯一の方法だったのなら、確かにそうかもしれない。しかし、それ以上にコスト削減効果が大きいのは、そう、輸送だ。

・デザインを見直し、そのおかげで梱包のサイズが半分になり、ソファを工場から倉庫に、倉庫から店舗に運ぶために必要なトラックの数が半分になった。そうして価格を15%弱下げることができた。

・イケアは、マグの高さを変えれば、ルーマニアにあるサプライヤーの窯のスペースをあと少しだけ効率よく使えるようになることに気づき、デザインを変更した。その結果、ルーマニアの窯から店舗の棚に輸送するコストが2分の1になった。

・現代経済のイノベーションとは、最先端の新しいテクノロジーを生み出すことばかりではなく、退屈に感じるまでに効率的なシステムを生み出すことでもある。

・コンサルタントは契約延長を勝ち取るために新しい問題を次々と見つけてくる。蛭のように、一度食らいついたら二度と離さない。これは「上陸・拡張(ランド・アンド・エクスパンド)」戦略と呼ばれるやり方だ。

・アメリカにおけるアマゾンの「ワンクリック」特許は、ボタンを1回クリックするだけでインターネット上の商品を買えるようにするという、斬新さの欠片もないアイデアを保護するものだ。

・人口50万人の都市には馬が10万頭いたはずで、その1頭1頭が毎日15キログラムの糞と4リットルの尿を通りに撒き散らしていた。安価で信頼性が高い小型エンジンで馬を置き換えられるなら、これほどありがたいことはなかった。

・ラジオ放送が始まって時報が流れるようになる前には、ロンドンに住むベルヴィル一家が、1世紀にわたって時間を売る商売をしていた。毎朝グリニッジで標準時に腕時計を合わせ、ロンドンにいる客にその時計を見せて、わずかな料金を取るのである。

・年間1億6000万トンのアンモニアを生産できる環境をつくるために、ハーバー=ブッシュ方は世界のエネルギー総量の1%以上を消費しており、そうして作られたアンモニアの大半が肥料を作るのに使われる。

・古い世代にとっては、「プラスチック」は大きな可能性を秘めた現代的な素材だったが、若者にとっては、まがいものの安っぽい代用品でしかなかった。

・国家と市場は美しいダンスを踊り続けている、国家は、ときに一歩前に出て、ときに一歩後ろに下がり、ときに全員のつま先をぎゅっと踏みつける。

・アメリカで有鉛ガソリンが禁止された時期は州によって違う。そこでレイズは、大気汚染規制の導入時期とその後の犯罪データを比較した。そして犯罪率の低下の半分以上(56%)は、車が無鉛ガソリンに切り替わったことによるものだと結論づけた。

・ショートメッセージで支払いができるモバイルマネーの登場で、発展途上国の経済のあり方が変わっている。

・既存の典型的な銀行システムは非常に非効率で、人口の大半占める低所得者層と取引して利益を上げるのは難しい。

・現金での取引は汚職を助長するだけでなく、脱税するにも都合がいい。所得を追跡できるようになると課税もされる。モバイルマネーがもたらすもう一つの大きな約束がそれである。経済のグレーゾーンがなくなって、課税ベースが拡大する。

・法的に認められた所有権があるかどうかで、私の家が資産であるか、「資本」であるかが決まる。資産とは、私が所有しているものであり、資本とは、金融システムが認識している資産である。

・不動産登記の手続きが簡素で迅速な国ほど、腐敗とグレーマーケット活動が少なく、信用と民間投資が多い傾向が世界的に認められる。

・スクリーンをスワイプするより、紙の本や新聞をめくるときのあの感じがいいという人は今も多いが、デジタル流通コストが大幅に下がっており、安い方の選択肢が選ばれるようになっている。

・バフェットは妻に宛てて書いた手紙の中で、自分が死んだ後にはどう投資すればいいか伝えている。内容はこうだ。考えられるかぎり一番つまらない投資先を選べ。
非常に低コストのS&P500種インデックス・ファンド」にほぼ全額投資するように。

・中国は2008年以降の3年間で、アメリカが20世紀を通じて使った量を上回るコンクリートを流し込んでいる。そのコンクリートが厳格な基準を守ってつくられているとは、誰も考えていない。

・今から100年間には、世界の平均寿命はわずか35歳だった。私が生まれた時は、60歳だった。それが最近では、70歳を超えている。

・世界で極度の貧困状態にある人々の割合は、200年前には約95%だったが、50年前には約60%になり、今では約10%に下がっている。



50(フィフティ) いまの経済をつくったモノ

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  • 作者: ティム・ハーフォード
  • 出版社/メーカー: 日本経済新聞出版社
  • 発売日: 2018/09/20
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