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『人間のトリセツ 人工知能への手紙』 [☆☆☆]

・学校は、知識をひけらかすところじゃない。知らないことに出会うエキサイティング・ワールドだ。

・自閉症の原因として、母体の血液栄養不足が指摘されている。

・自閉症は、神経系の認知が過敏な脳なのである。神経に触れる外部情報が多すぎて、情報がうまく取捨選択できない。だから、外界認知が適切に行われず、外界とうまく関われない。

・私は、微分・積分を習ったとき、「微分は、全体像からものの輪郭(表層のベクトル)を切り出す演算」「積分は、輪郭から全体像を見出す演算」だとすみやかに理解した。加速度から速度や移動距離を、即座に算出できる魔法の方程式だと。

・自閉症は、英語ではAutism(独自脳)である。ラテン語のAutosに由来する。自閉症でない脳は、Typical(典型脳)と呼ばれる。

・対話において人は、状況から判断できると思しきことを省略する。

・女性は、相手の会話文から、単語をいくつか切り出したら、あとは、自分が保持している認識パターンに当てはめて、いっきに解釈してしまう。幼児相手や、認知症の老人相手のような、不完全な対話にも難なく対応して、意思の疎通が図れる。

・微小な「イラッ」に対して、注意してやることのエネルギーコストが高すぎる。あるいは、「イラッ」が微小過ぎて、いちいち自覚さえしないかもしれない。しかし、それが重なると、「あいつ、なんかイラつく」「センスが悪い」「信頼性に欠ける」と思われてしまうのだ。

・ヒトの脳の感性の周期が56年だからだ。感性周期の場所によって、大衆全体の語感の好みと使用傾向が大きく違うのである。ことば使いが、明らかに違う。

・人間は、「あっちむいてほい」に弱い。理由は、ミラーニューロンが、相手の所作を「鏡に映すように」自分の神経系に移しとってしまうからだ。

・人工知能は、機械としての身の程を知るほうが、佇まいが美しく、愛しいのだということも。人間の真似をして、親しくおもねってくる人工知能なんか、醜悪で、見ていられない。

・女性は、明らかに共感で会話を回している。「わかる。わかる」が合言葉。男性は、これを使わない。

・女性は共感のために会話をする。共感が生む「心にしみる結論」があるからだ。男性は問題解決のために会話をする。会話が短くて済み、即行動に移れるからだ。

・たとえば、私たちに利き手がなかったら、つまり、脳が右半身と左半身とまったくイーブンに感覚認知していたら、身体の真ん中に飛んできた石を、ヒトは避けそこねてしまう。とっさに出す手が決まっているから、私たちはものを取り落とさずに扱えるのである。

・20世紀に人々が憧れた理想のエリート脳は、人工知能と変わらない。人工知能時代に、存在価値が薄れる人たちである。

・人類の感性演算方式、すなわち脳の感性モデルは、プロセス指向共感型と、ゴール指向問題解決型のたった2つ。誰もが、これら2つの感性モデルを脳に内在させている。そのバランスや使いどころによって、感性上の個性が顕われるのだ。

・イギリス車は家具に見え、イタリア車は動物に見える。イギリス人は馬車をモチーフに、イタリア人は馬をモチーフに自動車をデザインしたのではないだろうか。そして、欧米人たちは、日本車は家電かロボットに見えると言う。

・プロセス指向共感型の脳は、複雑な事象の組合せが得意で、それが好みでもある。形が複雑で、色数が多いと気持ちが上がる。

・ゴール指向問題解決型の脳は、簡潔な事象を好む。デザインなら、シャープで、色数が少なく、シンプルなもの。規則も法則も数字も大好きである。

・「見た目」が、知らない間に、その人を測るものさしに使われてしまうのである。

・成果を上げる者よりも、それを味わう者にこそ、真の価値があるということだ。素晴らしい音楽家は、確かに素晴らしいが、その音楽に涙を流せる脳こそが、この世の至宝なのだと思う。

・奇想天外な実験にきゃあきゃあ言ったり、星を見つめたりするだけでは、本当の「科学の心」は育たない。

・センスのない科目には「楽しい体験」の授業が、センスのある科目には、余分な情報を削ぎ落したクールな授業が、きっと有効なのだろう。

・先へ先へ教えてやる。失敗しないように、他人様に遅れないように。あわよくば人に秀でるように。その親心は痛いほどわかる。けれど、それが、子供の好奇心を削いでしまう可能性がある。

・人工知能の時代、「好奇心は控えめに抑制し、聞き分けがいい子にして、効率よく偏差値を上げる」方式では、人間は活躍できない。

・かつて動力が発明されたとき、重いものを運ぶ人や穴を掘る人が失業した。けれど、人類は、今も忙しい。

・新聞記事は、定型文の組合せで書かれている(「見たこともない表現」で書かれた経済記事なんて、株価が上がったのか下がったのかわかりゃしない)。



人間のトリセツ: 人工知能への手紙 (ちくま新書)

人間のトリセツ: 人工知能への手紙 (ちくま新書)

  • 作者: 黒川 伊保子
  • 出版社/メーカー: 筑摩書房
  • 発売日: 2019/12/05
  • メディア: 新書



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