SSブログ

『新版 動的平衡 生命はなぜそこに宿るのか』 [☆☆]

・基礎研究とはありていに言えば「自然はこうなっています」という記述にすぎない。

・暗所忌避の記憶を担う物質は、アンガー博士によってスコトフォビン(スコト=暗黒、フォビア=恐怖)と命名された。

・人間の記憶とは、脳のどこかにビデオテープのようなものが古い順に並んでいるのではなく、「想起した瞬間に作り出されている何ものか」なのである。

・消化管の内部は、一般的には「体内」と言われているが、生物学的には体内ではない。つまり体外である。それはチクワの穴のようなもの、つまり身体の中心を突き抜けてる中空の管である。

・単純化すれば、人間の身体はチクワのような中空の管にすぎず、その他の穴はチクワの表面にあいた穴や窪みでしかないことになる。

・その成り立ちをよく考えてみると、子宮もまったく同様に、それが身体の外部であるとわかる。

・人間は考える管である。

・もし、コラーゲン配合の化粧品で肌がツルツルになるなら、それはコラーゲンの働きによるものではなく、単に肌の皴をヒアルロン酸や尿素、グリセリンなどの保湿剤で埋めたということである。

・電気-化学物質-電気という一見、面倒な方法を脳が採用している理由は謎だが、一つの説明は化学物質のやり取りを間に挟み込むことによって、さまざまな調節、ブレーキやアクセルをかけやすくしている、ということが考えられる。

・電気信号は一度発生してしまうと、それを緩めたり速めたりすることは難しいが、化学物質によるやり取りなら、それを弱めたり強めたりすることは比較的たやすい。別の物質、つまり阻害物質や促進物質を用意すればよいからである。

・アミノ酸は20種あるが、ヒトにおいてはそのうち9種が必須アミノ酸、11種が非・必須アミノ酸である。

・必須アミノ酸とは、動物が自分の体内では製造できないもの、非・必須アミノ酸は体内で製造できるものである。

・生命現象を含む自然界の仕組みの多くは、比例関係-線形性を保っていない。非線形性をとっている。

・自然界のインプットとアウトプットの関係は多くの場合、Sの字を左右に引き伸ばしたような、シグモイド・カーブという非線形性をとるのである。

・シグモイド・カーブにおいて、インプットとアウトプットの関係は、鈍-敏-鈍という変化をするのである。

・アメリカで大量に生産されている遺伝子組み換え作物の大部分は家畜の飼料になっている。その飼料で育てられた家畜の肉を、私たちは食べているのである。

・卵子と精子が出会って合体するとき、精子からはそのDNAだけが卵子の中に入る。精子のミトコンドリアは卵子に入り込まない。だから新たにできた受精卵の内部のミトコンドリアはすべて卵子由来、つまり母親のものである。

・動的平衡の流れを作り出すためには、作る以上に壊すことが必要である。それゆえ細胞は一心不乱に物質を分解している。

・常に、酸化、変性、老廃物が発生する。これを絶え間なく排除しなければ、新しい秩序を作り出すことができない。そのために絶えず、自らを分解しつつ、同時に再構築するという危ういバランスと流れが必要なのだ。

・何かが始まるとき、そこに具体的な形の輪郭はない。形はあらかじめ与えられるのではなく、他律的にだんだんと進み、それは常に動きながら、危うい平衡の上に成り立つ。

・動的平衡とは、合成と分解、酸化と還元、切断と結合など相矛盾する逆反応が絶えず繰り返されることによって、秩序が維持され、更新されている状況を指す生物学用語。

・動的平衡とは、「生命が変わらないために変わり続けている」ことでもある。



新版 動的平衡: 生命はなぜそこに宿るのか (小学館新書)

新版 動的平衡: 生命はなぜそこに宿るのか (小学館新書)

  • 作者: 伸一, 福岡
  • 出版社/メーカー: 小学館
  • 発売日: 2017/05/31
  • メディア: 単行本



タグ:福岡伸一
nice!(0) 
共通テーマ:

nice! 0