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『ドラゴン・ティアーズ 池袋ウエストゲートパーク9』 [☆☆]

・自分の値打ちを決めるのは、結局自分だよな。人に発見されるのをぼんやり待つ人間は、最後には誰かさんのいいカモになる。それがジャングルみたいになった二十一世紀の高度消費社会のニッポンだ。

・なぜ、資本主義の世界では肉食獣と草食獣にきれいに分かれてしまうのだろうか。残酷でバカらしい世のなか。

・この社会では誰だって、いつだまされるかわからない。政治家の公約を信じて投票する有権者を見るといい。

・おまえは自分がどう見られるとか、いい人間に見せようとか余計なことを意識していないか。相手のことより先に自分のことを考えていたら、うまくいくものもうまくいかないさ。おれは自分などどうでもいいし、女の連絡先もどうでもいい。ただ相手の反応に集中してるだけだ。

・たいしたことのない人物を一気に引きあげてスターに仕立て、つぎにみんなでつつきまわして潰してしまう。いつもながらてのひら返しのタレントバッシングだった。

・社会に口を開けた格差の谷はどんどん広くなり、谷の両岸ではおたがいの姿がまったく見えなくなってきた。そうなると格差なんて初めからないのと同じなのだ。なにせむこう岸の相手が存在しなくなり、自分の住む世界だけがすべてになるのだから。

・自立支援? この世のなかにはきれいに整えられた言葉があって、そいつはたいていの場合、より厳しいこと、汚れたことを隠すためにつかわれている。

・怖がっている? 誰をだろうか。人が恐れるのは、人しかない。

・ある者は暴力で黙るが、別な者は暴力に反抗する。

・情報も物もあふれている現代に、一番足りないものはなんだかしってるかい? こたえは「出会い」だ。

・街のどこにでもあふれていることが建前上は犯罪になる。それが文明というものだ。

・もしかしたら、ぴかぴかの高級品は合法的なぼったくりかもしれないし、びっくりするほどの安もの(だが、不思議にまったくチープに見えない!)は誰かの血と汗と涙によって実現された人外のバーゲンセールかもしれない。おしゃれでハイセンスな高度消費社会では、ものを買うことはすでに経済学から倫理学の領域に問題点をシフト済なのだ。

・この男も自分の仕事を信じているわけではないのだろう。ただやらなければならないから、やっている。まあ、誰にとっても仕事ってそんなもんだよな。

・とてつもない経済格差が、どんな情熱や夢を生みだすのか。ある国の最低賃金は、別な国ではプロスポーツ選手の年棒に等しい。

・親子代々伝染して、死ぬまでやつらを苦しめる。病原菌の名は、貧乏だ。

・ちょっとした病気で入院すれば、年収の二、三倍分の借金を背負うことだろう。人生は楽じゃないし、そこではほんのわずかな免疫の差が一生を左右する。

・誰にせよ自分の運命を受けとめたやつは強いよな。



ドラゴン・ティアーズ──龍涙

ドラゴン・ティアーズ──龍涙

  • 作者: 石田 衣良
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2009/08/07
  • メディア: 単行本



タグ:石田衣良
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