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『偽物語』 [☆☆]

・思い出がいっぱいというか、本当のところは思い出が失敗なのだが。

・何でもするつもりでいるが、しかし、ならば状況によってそれが最善であるなら「何もしないこと」もまた、「何でも」の中には含まれてしかるべきだろう。

・喧嘩がいけないんじゃない。正しい喧嘩の仕方を知らないことがいけないんだよ。

・「男女間の友情って信じる?」 「当たり前だ」 一昔前なら「同性間の友情さえ信じない」と返しただろう質問に、僕はすぐに答えた。

・人間、全ての他人に対して常に平等であることはできないのだ。誰かの味方をすることは誰かの味方をしないということで、誰かの味方になるということは誰かの敵になるということなのである。

・正義の味方は、正義以外の味方を決してせず。そして正義以外の敵だ。

・勇気と最後につければ、大抵の言葉はポジティブに置換できますよ。

・手が汚れちゃった。ぱんぱん、と僕は手を払う。本当に汚れたのは心かもしれなかったが、心の汚れは払いようがないのだった。

・今はどうしようもない悩みごとに思えても、百年後には笑い話になってますよ。つまり生前散々悩んだ挙句、死後、笑い物にされるのです。

・自分のことなのに──それがまるで他人事であるかのように語った。ある意味、他人事なのだろう。わからない自分は、誰よりも他人だ。

・男の前で平気でそんな露出の高い格好になれるなんて、まだまだ子供なんだなあと思った。

・それは、SFは全部同じに見えるというのと同じ、狭量な意見だな。人間、知らないものは全て同じに見えるものだ。正しい評価を下すためには、知識と教養が必要なのだ。

・決して回りくどくはないのだが──それでもなんだか、わざと自分にしかわからないような言い方をしているかのようだった。

・風の谷のナウシカを映画で見るのが子供、漫画で読むのが大人。

・拉致監禁くらい理由がなくとも口実さえあれば、平気でしそうだけど。

・こそこそするのも大事なことだ。後ろめたく思っていることは、きちんと態度で示しておくべきだろう。

・お前はいつも正しい。だけどな、それは正しいだけだ。お前は、いつも強くない。強くない奴は負けるんだよ。

・正義の第一条件は正しいことじゃない。強いことだ。だから正義は必ず勝つんだ。

・偽物は偽物であることを自覚しなければならないように、本物は本物であることを自認しなければならない。

・儂らは互いに互いを許さん──それでよかろう。儂らは過去を水に流してはならんのじゃ。それでも、歩み寄ってはならん理由はなかろうよ。

・儂は食うだけじゃ。食材の名前などに興味はない──興味があるのは味だけじゃ。

・感染病。それが真実。そして──その真実は、怪異として理解された。間違いであれ、そう思われたことが──重要だ。怪異はそこから、あふれるように生じる。

・中立、一歩間違えばどっちつかず。むしろダブルスパイみたいな女だ。

・「中学生相手に──恥ずかしくないのか」 「別に。子供が相手だから騙しやすい、それだけのことだ」

・お前は善行を積むことで心を満たし、俺は悪行を積むことで貯金通帳を満たす。そこにどれほどの違いがある?

・喧嘩っていうのは和解してからが大変なんだから──その辺の心得違いはしないでね。

・目で訴えて足りないようでしたら法廷に訴えますよ!

・試合に負けて、勝負にも負けて──それでも、自分に負けなきゃ、負けじゃねー。それがあたしの武道なんだよ。

・映像や演出という点において、他媒体には敵いようがありませんからね。小説の主たる武器は、こうなると感情移入しか残っていません。小説であること、つまりヴィジュアルに訴えないことが、逆に感情移入を容易にさせるのです。

・だけどミステリーに感情移入しちゃまずいでしょう。誰を信じていいかわからないっていうのが売りなんですから。

・悪意をもってそうされたことを、どうせ結果は同じだからと、許せると思う?

・自己満足に甘んじる覚悟がないのなら──正義などと大仰な言葉を口にするな。不愉快だ。

・むしろ過大評価と言うべきか。自らが敵視する人間には大きくあって欲しいという願いは実に一般的でわからなくもないものだが、しかし人生はそれほど劇的ではない。

・俺はお前の敵ではない──ただの迷惑な隣人だ。

・制限時間のあるゲームだからこそ、ルールが単純なほど盛り上がる。

・如何に思考時間を短くするか──詰まるところ、頭のよさとはスピードだ。どんな名人の手順であろうと、時間をかければ誰でも同じことができる……だから大事なのは時間をかけないことなのだ。

・将棋だけではない、人生もまた有限だ。如何に思考時間を短くするか──換言すれば、如何に素早く考えるかが重要だ。

・己の考えに没頭している奴は、考えなしの奴と同じくらい騙しやすい。適度に思考し──適度に行動しろ。それが──今回の件からお前達が得るべき教訓だ。

・昔の私に何を言っても構わない、でも、今の私を侮辱しないで。

・人間なんて相手によって態度を変える生き物ですから、相手によって評価が変わるのは至極当然極まりない話です。


偽物語(上) (講談社BOX)

偽物語(上) (講談社BOX)

  • 作者: 西尾 維新
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2008/09/02
  • メディア: 単行本





・手のひらはあっさり返されるし、約束はさっぱり反故にされる。貸しはちっとも返してもらえないし、弱者はまったく保護されない。それがルールだ。世の中のルール。

・悪にも事情があり。悪にも家族がいる。そんな現実に突き当たったとき、それでもなお、迷わず正義を貫ける人間などそうはいない──いたとしても、それは最早正義とは言えないだろう。

・仮に、人が正義でいられるとするなら、それは瞬間瞬間の動画ならぬ静止画、記念写真においてのみなのである。

・結局のところ、人間は何を知っているかじゃなくて、何ができるか、何をするか、だろ?

・十年後より、まずは今日だろ。今日を生き抜けない奴に、どうして明日がやってくるんだ。

・古典文学を読めない子供とライトノベルを読めない親とを比べてみれば、意外とそこには差がなかったりする。

・人間文化的に見れば、殴る蹴るというのも確かに一種のコミュニケーションツールらしい。だけどそれは、互いの暴力が拮抗している場合の話だろう。一方的な暴力はコミュニケーションとして用を成すまい。

・知らなかったでは済まされない。知らなかったでおしまいだった。

・バレる嘘はつかぬが鉄則だ。

・人生という道程は、最初の半分は生きていくものであり、残りの半分は死んでいく道なのだ。

・双子のようにそっくりさんというわけではない。だから相性がいいのは、凹凸が組み合わさっているときだけの話である。

・私の正義は偽物だよ。私は正義を名乗るには、周りの意見に左右されやす過ぎるもん。

・そんな子供の浅知恵など、大人の悪知恵に敵うわけもなく。

・その偶然をしたたかに利用しない手はないだろう。

・本来は、胸に抱いている感情とまったく違う、別種の感情を顔に出している状態を指して──それをポーカーフェイスと言うのだそうだ。

・無表情だけじゃあ相手を騙すことはできないだろう。

・言葉選びと言葉遊びは似て非なるものだ。

・己の価値に気付かない呪いと己の無価値に気付かない呪い、選ぶとしたらどちらなのか。

・偶然とは、大抵の場合、何らかの悪意の産物。

・人に道を訊かれやすい奴っちゅうんは、存在的にメンターやゆうんやで。他人を導くオーラがあるっちゅうことや。

・はぐらかしや、取ってつけたような言い回しは、専門家のお家芸みたいなものだ。

・よくわからないというより──わけがわからないというのが真相のようだ。

・偽物は、本物と区別がつかないからこそ──偽物なのだから。本物さながらであることだけが。偽物であることの存在証明。

・自らの邪心と戦っていたのだ──邪心っつーか、あいつのレベルになると邪神と言っても正解になりそうな気がする。

・不運というか、薄幸なのだ。苦労や努力の割にはなぜか報われない奴というか。

・美学も正当性も持たずに悪党でいることに、大抵の人間は耐えられない。だから自分なりの正しさを打ちたてちまう。

・あいつは自らの理を説きはしても、その正当性を、決して主張はしなかった──そう。決して悪びれることなく、彼は悪を自任していた。

・何も得ないよ。時間を少し、失うだけさ。

・家族なんだから、嘘もつきます。騙します。迷惑もかけます、面倒もかけます。借りを作ることもあるでしょう、恩を返せないこともあるでしょう。でも、それでいいと思ってます。それが家族なんだと、僕は思う。

・性善説が理想論やとするなら、性悪説は現実論や。人間の本質は欲望である、人間は欲望に支配されとるっちゅう、身も蓋もない荀子の思想やね──人は生まれながらに悪性を持つ、言うねんな。ゆえに人が善行をなすならば、それは本性ではなく偽りによるしかない──そう喝破した。偽りであり、偽物であり──偽善によるしかないと。

・偽──つまりは人為や。

・偽物のほうが圧倒的に価値があるってな。そこに本物になろうという意志があるだけ、偽物のほうが本物より本物だ。

・本物あってこその偽物であるのは勿論のこと、偽物が登場するくらいでないと、それは本物とは言えないような気もします。


偽物語(下) (講談社BOX)

偽物語(下) (講談社BOX)

  • 作者: 西尾 維新
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2009/06/11
  • メディア: 単行本



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