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『なぜシロクマは南極にいないのか』 [☆☆]

・ハワイ原産の陸生脊椎動物はいない。両生類も爬虫類もあらず、哺乳類も数種のコウモリしかいない。現在ハワイで見られる数種類の脊椎動物やアリや蚊は、近年人間が持ち込んだ個体の子孫なのである。

・クモたちが住めるところならどこにでも姿を現すという並外れた優秀さを誇っているのは、飛べるからだ。彼らは滑らかな絹の糸に乗って滑空し、いわば空のプランクトンのように漂うことができる。

・その頃、大陸とは永遠に不動のものであるという見方が定着していたが、当時の専門家がどんなに確信していても、根拠も確固とした説得力も持たないたくさんの憶測の寄せ集めにすぎなかった。

・科学においてなにか結論を出すうえで、慎重さはもっとも大切だ。奇想天外な新説が提唱されたり、信じられないような発見をしたと主張する者が現れたりしたら、厳しく検証し、実際の経験に基づいた確認がとれてからでなければ受け入れてはならない。しかし議論の余地のないデータから必然的に導き出された答えは、それが既存の概念に反するものでも受け入れるのが慎重ということだ。

・すでに地位や名声を確立している学者たちは、自らが考え、本や論文に書いてきた説に権威づけをするために、その説に反する大胆な考えに敵対的になることがある。

・インテリジェント・デザイン説の支持者はぴったりの適応が偶然に起こるわけがないというが、それは生物学的側面にばかり注目しすぎていて、環境からの圧力について十分に考えていないからだ。つまり潅木を見て剪定ばさみを見ていない。

・自然淘汰とは、常に不変の疲れを知らない剪定師なのだ。生物の種がみなその環境に完璧に適応しているように見えるのはこのためであり、そしてこうした説明を知らなかったり、快く思っていなかったりする人々が、動物たちはみな賢明な見えざる存在によって特定の場所に生存するためにデザインされたと考えるのもこのためだ。

・どこかで野生の爬虫類、たとえばガーターヘビなどを見かけて、いったいなにを考えているのだろうと思うことがあったら、正解はおそらく「暑いな」か「寒いな」のどちらかだろう。そしてなにか野生の哺乳類、たとえばアライグマやウサギなどを見かけて、なにを考えているのだろうと思ったら、答えはだいたい「腹が減った」だ。

・大陸レベルで氷ほど効率よくすべてを破壊し、無差別にすべてを殺してしまうものは、わかっている限り他にない。

・氷河が地球の生命を守っているとか、生物多様性を絶えず見守る番人だとかいう誤解をさせないように注意すべきだ。そもそも氷河とは死に満ちたもので、我々が知る限りでは、もっとも長期にわたって生物多様性を抑え続け、すべての緑を殺してきた、着実で誰にも止められない殺戮者なのだ。

・コウテイペンギンは背骨のある生物の全歴史の中でも珍しいほどの、荒々しいサバイバルをしっかりと体現している。なにせ始新世に南極大陸に通年生息していた脊椎動物の中で、唯一生き残った生物なのだ。

・単孔類はまだ爬虫類のように卵を産む。それだけでなく、臀部に開いている穴が、繁殖にも排泄物の排泄にも、すべてに使われているのも爬虫類と同じだ。単孔類(モノトレム)とは「一つの穴」という意味のギリシャ語だ。

・ニューギニアの熱帯雨林に住む部族とその言語の多様性が生まれた原因が、つまり植物が生い茂りすぎている環境のせいで移動が非常に難しいということが、世界中の熱帯雨林の動植物に大いなる多様性がある原因と考えてもおかしくはないだろう。

・メキシコ湾にいるジンベイザメも西アフリカの近くにいるジンベイザメも、ニュージーランド沖にいるジンベイザメも、どこで見かけるものも遺伝的にはほとんど違いがない同じ種なのだ。ジンベイザメは地球上に本当になんの障壁も持たない数少ない生物の一つだ。

・現在、シャチの遺伝子拡散を阻んでいるものは、地質学的要素でも海洋学的な要素でもなく、文化的なものだ。信じられないことに、シャチは社会的伝統のようなものによって遺伝的な分化が進んでいる。

・シャチの生活様式や社会構造は食事から形作られている。定住のシャチは魚、とくにサケを好むので、獲物であるサケの移動のタイミングに合わせて移動する。それとは対照的に、放浪グループは魚に全く興味を示さず、哺乳類の血が大好きだ。水の中にいる肺がある生き物、つまり哺乳類ならなんでも食べたいのだ。

・政治的な考え方をする多くの学者が、我々の身体だけでなく知性も一緒に進化しているというウィルソンの指摘に対して、まるでヴィクトリア時代のように憤慨した。

・政治的になった分野に進もうとする研究者は、右翼の狂信的差別主義者と左翼の過激な平等主義者の間の狭い道を通り抜けなければならない。

・世界中のマラリアによる死者は、他のすべての疫病による死者と戦争による死者を合わせたよりも多い。

・正常な赤血球の遺伝子を二つ持つ子供はマラリアに感染する可能性があり、鎌状赤血球遺伝子を二つ持つ子供は鎌状赤血球貧血を発症する。両方の遺伝子を一つずつ持つ子供だけがどちらの病気からも守られる。

・無作為に選んだ二匹のチンパンジーには、無作為に選んだ二人の人間の二倍の遺伝的差異がある。我々人間は驚くほど単一な種なのだ。

・最初の羊飼いたちは従順なヒツジを作り出そうとしたわけではなく、囲いこみをはじめてからおそらくすぐに、けんかっ早くて興奮しやすいヒツジを先に殺したほうがいいと気づいたのだろう。

・不幸な真実は、ヨーロッパ人の技術的進歩、つまり銃と鉄が彼らの利他主義とはいえない衝動を実現する助けとなる道具になってしまったということだ。彼らはもっと貧しい社会よりも征服欲が強かったわけではない。ただ、そのための能力が高かっただけなのだ。

・ポリネシア人は台湾から海を渡ってきた古代の移住者で、太平洋最初の開拓者だ。

・海の民ポリネシア人たちは広大で荒々しい太平洋を、ヨーロッパ人がもっと狭い大西洋を渡るはるか以前に征服していたのだ。

・裏庭や町の公園や近くの森や湖には、生命の図書館といえるほどのコレクションがあるが、その読み方や楽しみ方を知る人はあまりに少ない。

・投げる(そしてキャッチする)能力はごく簡単に身につくので、我々はそれが才能だとすらあまり考えていない。しかし、そんなに離れたところからそれほど正確に物を放り投げられる動物がいたら、すばらしいと思うだろう。



なぜシロクマは南極にいないのか: 生命進化と大陸移動説をつなぐ

なぜシロクマは南極にいないのか: 生命進化と大陸移動説をつなぐ

  • 作者: デニス・マッカーシー
  • 出版社/メーカー: 化学同人
  • 発売日: 2011/08/22
  • メディア: 単行本



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