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『骨から見る生物の進化[普及版]』 [☆☆]

・科学は論争によって進歩し、仮説と確認された事実のあいだを行ったり来たりする。この最後の点について、専門家でない多くの人々は誤解しており、理論と教条主義、知識と信仰を混同しがちである。

・進化と進歩の混同は、遺憾なことに現代メディアにもまだ見られる。

・イスラム諸国では、進化論を教えることが禁じられている。

・近年、多くの創造説論者は「神の計画(インテリジェント・デザイン)」という形で、再び議論を展開しようとしている。いくらか巧妙に立ち回るようになった彼らは、進化という考えを否定するのではなく、進化は「大いなる知性」によってあらかじめ定められた計画にしたがったものだと説くのである。

・ひとつの頭と4本の肢という形はありふれているように見えるが、動物の世界ではかなりまれな組み合わせである。というのも、ヒトデからウニまで、多くの動物はまったく頭を持たないからだ。肢に関しては、地球上の種の大半を占める昆虫の肢は6本である。

・四肢動物すべて合わせても2万6000種。算定方法によって異なるが、これは現生動物の0.1~1%にしかならない。

・五指性の四肢は、手足のもとになったひれに比べれば派生的性質だが、およそ3億5000万年前に現れているのだから、それよりはるかのちに現れた1本ないし2本指の四肢と比べるなら、原始的な性質といえる。

・進化は必ずしも改善である必要はなく、単なる変化にすぎない。

・足の親指の対向性が失われたのは、二足歩行を獲得するのにともない、のちに現れた派生的性質である。ヒトの最も進化した指とは、すばらしくも古風な対向する手の親指ではなく、不器用だが変化して間のない足の親指なのである。

・地中海の島々で発見された、額に大きな穴のあいた奇妙な頭蓋骨が、ひとつ目の巨人キュクロプスの神話のもとになったのであろう。比較解剖学の発展とともに、神話的な説明は放棄せざるをえなくなった。キュクロプスの頭蓋骨はついに、ゾウの頭骨であることが同定された。中央の「眼窩」は実のところ、長い鼻がついていた位置に相当する開口部であった。

・魚を除いて、小さい種のおもな危険は体が乾燥することである。

・セレベス島特産のイノシシ、バビルーサの死亡率は、奇妙なことにときおり上昇する。自分の牙に頭を貫かれて死ぬ個体が出てくるのである。

・答えの見つからない問題は、問題の立て方が間違っているのかもしれない。

・進化は無から新しいものを引き出すわけではない。進化はすでにあるものを土台にして活動し、古いシステムを変更して新しい機能を持たせたり、いくつかのシステムを結びあわせてより複雑な別のシステムを作り上げたりする。

・自然淘汰はエンジニアではなく日曜大工のように行動する。日曜大工はなにを作るかまだ決めていなくても、手に入るものをすべて取り揃えようとする。紐の切れ端、木っ端、古いダンボールといった、材料になるかもしれない雑然とした品々である。

・動物の構造の由来を理解するには、形而上学的な「なぜ?」から日曜大工の「どうやって?」へと、頭を切り替えなければならない。

・肉食恐竜は鳥類が出現するはるか以前に、空洞のある骨を持っていた。この特徴は、巨大な動物の重さを軽減するのに役立つが、飛行にも完全に適応していた。それでも、最初から飛行のために選択されたわけではなかったのである。

・初期の鳥のような空飛ぶ肉食動物にとって、歯は滑りやすい獲物をつかむのに役立ったが、歯という器官は密度が高くて重いため、飛行するには邪魔だった。歯をなくすことは、体重をかなり節約できることを意味した。

・飛べない鳥に見られる翼の萎縮は、胚の段階で一部の骨の発生が停止するためであると思われる。これはネオテニーのひとつの形ともいえ、成鳥になっても非常に小さい翼しか持たない。

・ニワトリが属するキジ目では、胸骨と竜骨が胚発生のごく早い時期に現われる。したがって、ふたつの骨が萎縮すれば、動物全体の成長の深いレベルに乱れを生じさせると思われ、それは小さな翼を持つキジ目の鳥がいないことで裏づけられる。いっぽうハト目では、胸骨が遅い時期に形成される。そのため、胸骨の萎縮は「部分的な異常」によるものと考えられ、体全体はほぼ正常に成長する。

・初期のサルは草食であり、知的能力の発達は、そのためにどうしても必要なものではなかった。果実や木の葉を食べるだけなら、それを認識し、そのありかを覚えていられれば十分である。

・狩りは補足的な能力を必要とし、ときには獲物を捕らえるためにその反応を予測して行動しなければならない。

・社会生活は、きわめて複雑な、変化に富んだ環境を作り出す。日常生活でどんな行動をとるにしても、他の個体との序列を考慮し、互いの友好関係や敵対関係を理解していなければならない。

・人類の進化のスピードは急激に速まったが、それはこんにち、文化によるものであって、生物学によるものではない。われわれは自然淘汰から文化淘汰へと移行した。

・孤立した環境は、動物の急激な進化が起きやすいため、とくに注目すべき場所である。

・ゴキブリやサメは世界中の多種多様な環境に暮らしている。それなのにほとんど変わらなかったのは、その形態が万能であって、環境の変化に容易に適応できたからだろう。

・生きた化石は、しっかりと保護された超スペシャリストか、反対になんにでも適応できるジェネラリストなのだろう。

・イヌの吠え声や行動は、大人のオオカミというより若いオオカミのようである。その形態や行動からいって、大人のイヌは未成熟なままのオオカミなのである。

・トラやサイなど、長い進化を経て出来上がった種がすべて消滅してしまったら、この世には、ハエ、ゴキブリ、ネズミといった、どんな条件下でも繁栄できる、最も耐久性のある動物しか残らないのである。



骨から見る生物の進化【普及版】

骨から見る生物の進化【普及版】

  • 作者: J・ド・パナフィユー
  • 出版社/メーカー: 河出書房新社
  • 発売日: 2011/11/18
  • メディア: 大型本



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